円形闘技場とは? わかりやすく解説

アンフィテアトルム

(円形闘技場 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/16 09:13 UTC 版)

ローマコロッセオ

アンフィテアトルムラテン語:amphitheatrum、英語:amphitheatre)は、円形劇場(えんけいげきじょう)を意味するラテン語である。古代ローマにおいて剣闘士競技などの見世物が行われた施設のこと。中央のアリーナと呼ばれる空間を観客席が取り囲み、全体としては楕円形の構造を持つ。イタリアローマ市内に残るコロッセオが有名。

名称

「アンフィ」(amphi-)は「周りに」(もしくは「両側に」)、「テアトルム」(theatrum)は「劇場」であり、合わせて「周りに観客席のある劇場」を意味する。

ポンペイに現存する最古のアンフィテアトルムの石碑によれば「スペクタクラ(観覧用の建物)」という語が使われていたが[1]ウィトルウィウスにより初めてアンフィテアトロンという語が使用された[2]

日本語では円形劇場円形競技場と訳される場合があるが、円形闘技場とするのが正しい。

なぜなら、舞台に対して一方のみに半円形の観客席を持つ形式の劇場(いわゆるローマ劇場)や、陸上競技・体育競技やとりわけ戦車競技が主として行われたトラック状の競技場(ギリシア語でスタディオン、ラテン語でチルコ)としばしば混同されているが、専ら演劇のために用いられるローマ劇場や戦車競技で著名な競技場に対して、アンフィテアトルムは様々な見世物のための場であり、これらは形状だけでなく役割の上からも明確な区別をする必要がある[3]。古代ローマ領土の数多くの都市が、アンフィテアトルムとローマ劇場、それに競技場を備えていた。

遺跡

ポンペイの円形闘技場

現存する最古のアンフィテアトルムはポンペイのもので、紀元前80年頃に建設されている[1]。このころから3世紀まで古代ローマの各都市に建設されていった[4]

ローマ市内では紀元前29年建設のスタティリウス・タウルス円形劇場が最初のものであるが、これは64年ローマ大火のときに失われている。その後、史上最大の規模を誇るフラヴィウス円形闘技場(通称コロッセウム、コロッセオ[5])が建設され、80年に完成した[6]カストレンセ円形闘技場は3世紀頃、市壁の一部に転用され[7]アーケードは埋め立てられてしまっている[8][9]

帝政期にはイタリア半島内だけでアンフィテアトルムは163都市にあったといわれるが、2006年現在では108都市で遺跡が確認されている[10]

後世の利用

剣闘士競技は以下の理由により徐々に下火になり、その舞台であるアンフィテアトルムも過去の遺物となっていく[11]

しかしその後は本来の目的である闘技場としてではなく、他の様態に再利用されていくこととなった[12]

要塞
この利用形態は11世紀ごろまで。更地から城砦を建設するより有利。
基本的に市外に存在したアンフィテアトルムであるが、後に城壁の一部として取り込まれることもあった。
住居
現在でもこのような利用形態は残っている(後述の例参照)。
ただの住居ではなく塔状住居(casa-torre)という戦闘用を兼ねた形態も中世後期には一般的になった。
宗教施設
礼拝堂などが設置された。
公共施設
倉庫、監獄などに再利用された。
アレーナ・ディ・ヴェローナ(ここの場合はアンフィテアトルムの通称として『アレーナ』が用いられる)では現代でも野外オペラコンサートなどのイベントが行われている[13]

住居化の例は、現在広場になっているルッカアンフィテアトロ広場を参照。

主な遺跡

かつて古代ローマ領土であった広大な地域に200か所以上[要出典]もの遺跡が確認されている(帝政期、推定を含めてイタリア半島内だけで163か所があったと言われている[10])。ローマのコロッセオのように建築構造を良好に留めているものもあれば、楕円形の土地にその痕跡を偲ばせるだけのものもあり、その保存状態は様々である。スペインに良好な保存が多いのは、トロス(闘牛場)に転用されたからである[要出典]

以下の都市に、規模が大きく保存状態の良い遺跡が残っている。

ギャラリー

脚注

  1. ^ a b 黒田 2006, p. 18
  2. ^ 黒田 2006, p. 17
  3. ^ 黒田 1996, p. 202
  4. ^ 黒田 2006, p. 16
  5. ^ 黒田 2006, p. 39
  6. ^ 昭文社 2012, pp. 36–37
  7. ^ 黒田 2006, pp. 35–36
  8. ^ 黒田 2006, pp. 36–37
  9. ^ カストレンセ円形闘技場は、外部リンク節も参照。
  10. ^ a b 黒田 2006, p. 27
  11. ^ 黒田 1996, p. 203
  12. ^ 本節は特記が無い限りは(黒田 1996, pp. 197–203)による
  13. ^ 黒田 2006, pp. 93–94

参考文献

関連項目

外部リンク


円形闘技場(アレーナ・ディ・ヴェローナ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/18 03:37 UTC 版)

ヴェローナ市街」の記事における「円形闘技場(アレーナ・ディ・ヴェローナ)」の解説

アレーナ・ディ・ヴェローナArena di Verona)の名で知られる円形闘技場は、紀元前1世紀初めに作られたと考えられている。ローマコロッセオナポリ円形劇場次ぎイタリア国内3番目の大きさ誇り収容人数2万5000人。舞台や座席も残りイタリア国内で最も保存状態良いといわれている。 毎年6月から8月にかけてオペラ公演が行われている。この夏のオペラ・シーズンは、規模演奏水準ともヨーロッパで屈指の音楽祭であり、2012年夏第90回オペラ・フェスティヴァルでは「ドン・ジョヴァンニ」「アイーダ」「カルメン」「トゥーランドット」「ロメオとジュリエット」「トスカ」の6演目合計50回の公演予定されている。

※この「円形闘技場(アレーナ・ディ・ヴェローナ)」の解説は、「ヴェローナ市街」の解説の一部です。
「円形闘技場(アレーナ・ディ・ヴェローナ)」を含む「ヴェローナ市街」の記事については、「ヴェローナ市街」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「円形闘技場」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「円形闘技場」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

','','','','','','','','','','','','','','','','','',''];function getDictCodeItems(a){return dictCodeList[a]};

すべての辞書の索引

「円形闘技場」の関連用語








8
アリーナ デジタル大辞泉
92% |||||

9
エルジェムの円形闘技場 デジタル大辞泉
92% |||||

10
ティパサ デジタル大辞泉
92% |||||

円形闘技場のお隣キーワード
検索ランキング
';function getSideRankTable(){return sideRankTable};

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



円形闘技場のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのアンフィテアトルム (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのヴェローナ市街 (改訂履歴)、エル・ジェム (改訂履歴)、アルルのローマ遺跡とロマネスク様式建造物群 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS