伝統的な方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 08:54 UTC 版)
顔料は、粗製ゼラチン水溶液で練成して用いる(溶いて使う)。 岩絵具のなかで緑青は青一番から青三番くらいまで(番号は粒子の大きさ。番号が大きいほど細かい)、紺青、群青のようなその他これに類する粗さの、俗に砂絵具というほどのものは、ほとんど膠水だけで溶かし、深皿に絵具よりも多い膠水を入れ、羊毛のようなやわらかい筆で絵具をすくうようにして画面に塗る。きわめて粗い岩ものならば一粒一粒を画面にならべてゆく。乾くのを待って色調の出るまで何回でも重ね塗りをする。岩絵具は、2回目ははじいてうまくつかないことが多いが、そのような場合は溶いた絵具にハッカ油かゴマ油を一滴落とすという手法が存在するが、熟練の技術を要する。 岩絵具で群青の薄群、白群、緑青の白一番から白緑までの粉状のものは、皿の絵具に膠水をまぜて、中指で十分磨り、何回か水を少量加えて適当な粘稠度にして使う。どのような色であっても、一度に濃い色を塗るとまだらになって、画面を汚すから、うすめて二度三度と塗り重ねるようにする。土絵具その他は、この方法で溶いて使用する。 胡粉(ごふん)は、溶き方が不用意であると、塗ってから剥落したり、鮮やかな色沢を出すことなどできなかったりする。水飛が十分に細密な胡粉であれば、最上か一番胡粉で丁寧な錬磨をすれば心配ない。たくさん使う時は、乳鉢で胡粉をよくすり、まずごく少量の膠液を加えよくすり、また膠液を入れてすり、と、これを三、四回くりかえせば、胡粉と膠液がよく融和し粘りが出てもう乳棒が動かないほどになる。これに水をすこしずつ加え、適当な濃さにする。またこれを別の皿に少し移し、水を加え溶きゆるめ、淡く塗る。また胡粉は、団子にして保存し、使用時に溶かしてつかう方法もある。膠液は、膠4gにたいして水30ccくらいで煮沸し、よく溶けるのを待ち、用布で濾す。水絵具は、膠液をいれず皿ですり、指ですって水を滴下してうすめてつかう。 藍(あい)は、膠液を数滴、皿に注ぎ、これを磨り、火でかわかし、水に滴して指で溶く。洋紅は、膠液少量を皿にいれ洋紅を磨り、水をくわえる。代赭は、膠液を皿にそそぎ、磨り、火であぶってかわかし、水をすこしずつ加えて指で溶く。藤黄は、水を数滴皿にそそげば鮮黄色になるが、使用時に膠液をくわえればなおよい。 臙脂(えんじ)は、綿にひたしてあるから、綿を使用分切り取り、皿に入れ、熱湯を少し加え、あぶら分の無い杉箸などで強く搾れば、濃赤色の液汁が出る。これを用紙か用布で濾し、滓を取り去り、湯煎にしかわかして使う。湯煎前に酒を一滴たらすと色が乾燥せず、潤いを保つという。湯煎にした皿の絵具を使うのは、筆に水をふくませ、必要分だけを皿で溶き、この場合、膠を少量加えることもある。臙脂は、浸透性が強く、塗り方は難しく、熟練した技術を要する。臙脂は胡粉(膠液で正式に溶いたものがよい)をごく少量加えれば、色沢を失わない。
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