その作法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/16 03:08 UTC 版)
直訴はある程度作法化されており、例えば駕籠訴では以下のようになっていた。 訴人は紋付き羽織と袴で正装し、訴状は「上」と上書きした紙に包み、先を二つ割にした青竹の棒の先に挟んで持つ。始めに行列前方より訴状を捧げて訴人が行列に接近しようとする、すると供侍がこれを制止する、訴人は制止されても諦めず再度接近しようとする、供侍はまたこれを制止する、それでも訴人は諦めずにみたび接近しようとする。そこで初めて供侍は『再々にわたるので仕方なく』として訴状を受け取り、供頭に訴人の身柄を拘束するように指示を行う。この時訴人の身柄が拘束されるのは訴状の内容や訴人の身許などの事実関係を確認する事情聴取のためであり、訴人を処罰するためのものではない。事情聴取が終わり身許が確認され訴状の内容に虚偽など問題がなければ訴人は解放される。この時農民であれば領主が身許引き受け人として引き取ることになる。勿論受け取った領主側で更に事情聴取が行われるがいきなり問答無用で処罰などということはなかった。処罰などをした場合は農民を引き渡した側の体面を潰すことになるからである。訴状を受け付けた側には積極的に介入し能動的に事件解決にあたるというまでの義務はなかったが、関係方面に照会を行い必要と認めれば善処方を要請する程度のことは行われた、これにより事件が明るみにでることになり関係者は適切な対応をする必要に迫られることになった。また事件がもみ消されるのを防ぐために複数の方面に対し直訴を行うという訴訟戦術もしばしば採用されていた。
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