4527

 私は、ウクライナの穀物輸出ルートの問題をずっと追ってきたわけだが、戦時下の状況に関しては、断片的なデータが飛び交うばかりであり、網羅的なデータにはなかなかお目にかかれなかった。

 そうした中で、今般見付けたのは、ウクライナの経済戦略センターというところが定期的にとりまとめているらしいグラフである。こちらのフェイスブックページに、2024年6月までのルート別穀物・採油作物輸出量の最新版が出ていたので、凡例に日本語をかぶせ、上掲のとおりご紹介することにする。

 いやホント、個人的にここまで全体像が良く分かる資料というのは、初めて見た。要するに、元々ウクライナの穀物輸出は圧倒的に黒海港湾(大オデーサ港およびミコライウ港)からが多かった。それが、ロシアの侵攻開始でストップし、従来はマイナーな存在であったドナウ川港湾にシフトしたものの、それにも限界があった。また、鉄道およびトラックという陸路で周辺の中東欧諸国にウクライナ産食品が溢れ、軋轢を生むことにもなった。その状況を見かね、国連およびトルコの仲介により黒海穀物イニシアティブが成立、2022年8月から黒海港湾経由輸出が復活したものの、その合意も2023年7月にロシアが握り潰し、黒海港湾輸出は再び暗礁に乗り上げる。しかし、その頃にはウクライナのドローン攻撃でロシア海軍による脅威が後退し、ウクライナは独自の黒海輸送路を開設、ウクライナはロシアの協力を得ずとも大オデーサ港から食料を輸出できるようになって(鉄鋼・鉄鉱石の海路輸出も復活)、現在に至るというわけである。まあ、その構図自体は知られていたが、それをここまで具体的に図示した資料は貴重である(欲を言えば各項目のデータラベルを付けてくれれば…)。


ブログランキングに参加しています
1日1回クリックをお願いします
にほんブログ村 海外生活ブログ ロシア情報へ