実感はなくても消費は増える、という話
テレビ朝日系の「報道ステーション」とテレビ東京系の「ワールドビジネスサテライト」を続けて聞いていたら、同じテーマを取り上げていて、その扱いの違い方が面白かったので手短にメモ。
報ステのほうは、企業業績好調で景気はいいのに庶民に実感はない、といういつもの話。してその理由はというと、企業が給与を増やさず株主配当を増やしているから、と。企業は買収を恐れて株主対策に奔走、手っ取り早い増配へ向かうと。要するに庶民の金を金持ちや企業や外国人が吸い取っているみたいな階級闘争史観もろ出しの話。
一方、WBSのほうは、消費堅調の背景に企業の配当増加があるのではないか、と指摘している。消費の中でも高額品の売れ行きがいいことに着目して、配当金収入みたいなのは高額消費に向かいやすい、との仮説。配当がけっこう個人のほうに行っている、というわけだな。
どっちにせよデータの裏づけが欲しいところだが、個人的にはやはり後者のほうが説得力あるように思う。
確かに個人株主比率は2005年度末で19.1%しかないわけだが、投信経由の人だって少なくないだろうし、そもそも株主数でいったら10年連続で過去最高を更新して3,807万人だそうだから、けっこうな数になる。もちろん、ワーキングプアの問題も含め、株など縁がないという人が少なくないのもわかるが、株主が資産家で庶民の労働者と対立しているみたいな単純化した発想はいくらなんでも現実離れしている。今の時代の格差は、「金持ち」と「貧乏人」の差というより、「庶民」の間での差という要素のほうが強いように思うわけで、そのあたりを覆い隠すかのような言説はむしろ罪深いのではないかなぁ。
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Comments
証券優遇税制で関連の朝日の記事でこんな指摘があります。ご参考まで(キャッシュしかありません):
http://72.14.235.104/search?q=cache:iSXkM3ZtB9cJ:news.goo.ne.jp/article/asahi/life/K2007041601950.html+%E6%9C%9D%E6%97%A5%E3%80%80%E5%84%AA%E9%81%87%E3%80%80%E9%85%8D%E5%BD%93%E3%80%80&hl=ja&ct=clnk&cd=2&gl=jp
Posted by: データ | May 20, 2007 02:49 PM
内容を忘れました。すみません:
Posted by: データ | May 20, 2007 02:51 PM
内容を忘れました。すみません:
この恩恵は少数の富裕層に集中し、05年に個人が株式売却などで稼いだ所得として確定申告した額の65%を、人数で4%にすぎない総所得5000万円超の人で占めていた。
Posted by: データ | May 20, 2007 02:52 PM
データさん、コメントありがとうございます。
このあたりに詳しいわけではないので確たることはいえませんが、少なくとも、配当金収入のある人のうち、確定申告が必要な人の割合というのはそれほど高くないのではないかと思います。
給与所得者だと20万円でしたっけ?それ以下の金額をもらったら何に使いますか?前の年より数万円くらい増えていたら?これは、配当金収入のかなりの部分が少数の大株主のところに行っていることとは別の話かと思います。
Posted by: 山口 浩 | May 21, 2007 12:05 AM