アマゾンの「Echo Show 21」と「Echo Show 15(第2世代)」は、テレビのようなスマートディスプレイ

アマゾンは新製品の「Echo Show 21」(日本未発売)と「Echo Show 15(第2世代)」をこのほど発表した。壁にかけて使うことを想定した薄型の設計が特徴で、スピーカーの増強により音質が向上している。どちらもスマートディスプレイと小型テレビの中間に位置する製品だ。
Echo Show 15 and 21 digital smart devices with thumbnails of apps and previous of streaming content. Decorative...
Photograph: Amazon; Getty Images

アマゾンの新製品ほどホリデーシーズンを象徴するものはない。今年、アマゾンは製品ラインナップを次々と拡充した。例えば、Echo Spotを復活させてスマートスピーカー分野を強化し、(ディスプレイに問題が多少あったものの)Kindleシリーズも全面的に新しくしたのである。そして今回、Echo Showシリーズが大きく刷新された。21インチという大型デバイスが新たにラインナップに加わったのである。

Echo Show 21(400ドル、約61,000円。日本未発売)は、アマゾンの豊富なAmazon Echoシリーズに加わった最新モデルであり、21インチのディスプレイを搭載している。Echo Show 15の大型版だ。15インチディスプレイを持つ新モデルEcho Show 15(第2世代)(300ドル、日本では47,980円)も11月21日に発表された。

スマートディスプレイに詳しくない人のために説明すると、これらの製品はディスプレイが付いたスマートスピーカーだと考えるといい。そしてこのディスプレイはスマートホームデバイスの表示、音楽やテレビ番組の再生、内蔵カメラを使ったビデオ通話などに対応している。ふたつの新型デバイスは、初代のEcho Show 15と比べて音質が向上している。低音が強化され、部屋に合わせて音響を調整する技術が搭載されたのだ。これらの大型のデバイスがスマートディスプレイと小型テレビの中間に位置する製品であることを考えると、賢い判断である。どちらのデバイスにも「Alexa対応音声認識リモコン」が同梱されており、テレビのようにも使えるのだ。

だが、アマゾンが巨大なEcho Showのデバイスを発表したことは少し意外であった。というのも、Echoシリーズの次世代モデルを発表したり、時計付きで人気の高いスマートスピーカー「Echo Dot」を再販したりと、より簡単に売り上げを伸ばせる方法がほかにあったはずだからだ。Alexa部門が数年前に大規模な赤字を出したことを考えると、なおさらである。

一方のグーグルやアップルは新しい分野のデバイスを発売するのではなく、既存のデバイスをスマートディスプレイに変える方向で事業を進めている。とはいえ、アップルはApple TVシリーズの一環として壁掛けタイプのディスプレイを開発しているという噂もあり、新しい大型のEcho Showの登場はまったく予想外というわけではないかもしれない。テレビのようなスマートディスプレイに興味がある人のために、アマゾンの新型デバイスで最も印象的な改良点を紹介しよう。

Photograph: Amazon

ストリーミングに最適

「よりよい音質」と「大きな画面」を求める顧客の声が多くあったことがEcho Show 21と第2世代のEcho Show 15を開発した背景にあると、アマゾンは説明している。このふたつの要望はどちらの新製品にも反映されている。Echo Show 21には21インチの画面が備わったことに加え、Echo Show 15の新モデルのスピーカーは初代モデルのものと比べて1インチ大きくなったのだ。Echo Show 21とEcho Show 15(第2世代)のどちらにも、0.6インチのツイーター2基と2インチのウーファーが2基搭載されている。

それでもこれらのモデルのスピーカーの構成は、より大きな土台をもつほかのEcho Showシリーズのデバイスに及ばない。例えば、評価の高いEcho Show(150ドル、日本では22,980円)は、2インチのステレオスピーカー2基に加え、パッシブバスラジエーターを搭載している。また、丸みを帯びた土台をもつEcho Show 10(250ドル、日本では29,980円)は、1インチのツイーター2基と3インチのウーファーを備えている。これに対し、Echo Show 21とEcho Show 15(第2世代)は薄型のデザインゆえにスピーカーの構成が制限されている。どちらも家族用カレンダーやテレビ番組の視聴機能を備えたデジタルフォトフレームのような外観を意識して設計されているからだ。

その代わりに、Echo Show 21とEcho Show 15(第2世代)は小型テレビのように壁にとり付けて使用することを想定した大きな画面を備えている。アマゾンがリモコンを同梱したのはそのためだ。Alexaへの質問やスマートホームデバイスの操作だけでなく、テレビとしても使えるようにつくられているのである。

どのEcho Showシリーズのデバイスもこうした機能を提供しているが、このような大型の画面でなければ動画の視聴には向かない。Echo Show 15の初代モデルにおけるテレビ関連機能の使用体験はさほど印象的ではなかった。この用途には本物のテレビやストリーミング用のデバイスのほうが適している。とはいえ、これらの新デバイスでそうした体験が改善されているかどうかを近いうちに確かめる予定である。

また、上部にはカメラが搭載されており、マイクも内蔵されているので、どちらの製品もビデオ通話に使ったり、室内のセキュリティカメラとして利用したりすることができる。アマゾンによると、Echo Show 21とEcho Show 15(第2世代)はEcho Show 15の初代モデルと比較して視野が広く、ズーム機能が65%向上している。また、ノイズ低減技術が追加され、通話の音質も向上した。カメラを使わないときは、物理的なカバーでカメラを覆うことも可能だ。

Photograph: Amazon

大型ディスプレイの利点

初代のEcho Show 15の最大の特徴はウィジェットだった。いまではどのEcho Showシリーズのデバイスでも利用できるが、最初に導入されたのがEcho Show 15であり、いまでもこの端末での使い勝手が群を抜いている。Echo Showシリーズの小型デバイスと比べるとはるかに画面に余裕があるので、ウィジェットを自分好みに調整し、存分に活用できる。また、Echo Show 15の画面の表示内容は固定されているので、選びたいウィジェットがカルーセル形式で回ってくるのを待つ必要もない。

ウィジェットを追加することでスマートホームデバイスを簡単に操作することができる。Echo Show 21 とEcho Show 15(第2世代)にはMatter、Thread、Zigbeeのデバイスに対応したスマートホームのハブ機能が搭載されている。スマートホームデバイスの操作はアマゾン製品の得意分野だ。Alexaのアプリを使うことでスマートスピーカーとMatter対応のスマートプラグや電球などを簡単に連携させられるのである。

また、これらの製品はデジタルフォトフレームとしても機能し、簡単な指示でフォトフレームモードを有効にできる。アマゾンは表示できるアート作品の選択肢をいくつか用意しているが、自分の写真をアップロードすることも可能だ。

フォトフレームの体験自体はそこそこである。写真はフレームの向きに合ったもののみをアップロードすることをおすすめする。そうしないと写真の周りに写真そのものよりも大きな余白が出来てしまうからだ。画面が大きいほど写真は見やすくなるが、その分余白も大きくなり目立ってしまう。

実のところ、Echo Show 21とEcho Show 15(第2世代)で最も気に入っているのは、これらの製品で使える別売りのアクセサリーだ。アマゾンはスマートディスプレイに取り付けて、スタイリッシュな見た目にできるフレームを提供することを発表している。ほかのスマートディスプレイにこのような選択肢はほぼない。同様の機能を採用している製品は今秋発売されたデジタルフォトフレーム1種類のみだ。この珍しい機能にはとてもわくわくさせられる。

フレームは白色とライトブラウンの2色展開で、Echo Show 15(第2世代)用は35ドル、Echo Show 21用は40ドルで販売される見通しだ。また、壁にとり付けたくない場合は100ドルの専用スタンドを購入して使うこともできる(日本では、Echo Show 15用の角度調整機能付きスタンドが12,980円)。

(Originally published on wired.com, translated by Nozomi Okuma, edited by Mamiko Nakano)

※『WIRED』によるアマゾンの関連記事はこちら。


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