木星の衛星「エウロパ」の海は、生命を生み出しうる:研究結果

その衛星は、地球最初の生物が生まれた海と似た環境を備えているようだ。米航空宇宙局(NASA)の研究が、このことを明らかにしている。
木星の衛星「エウロパ」の海は、生命を生み出しうる:研究結果
1990年代後期に撮影された木星の月、エウロパ。PHOTOGRAPH COURTESY OF NASA/JPL-CALTECH/SETI INSTITUTE

多くの天文学者たちは、60以上もある木星の衛星の1つ「エウロパ」に、大きな秘密が隠されていると考えている。この衛星の表面を覆う氷の下にある「水中の世界」に、地球外生命体にとって「好都合な条件」が存在するのかもしれないというのだ。

先日、この仮説は米航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所のある研究(PDF)によって、新たな確証を得ることになった。この研究では、エウロパの環境条件が、酸素と水素の生成に適合していて、地球の条件と似ていることを示している。

地球の海との共通点

この衛星の氷の内部に何が隠されているのか、確実な証拠はまだ存在しない。そこで、NASAの研究者たちは地球の海との共通項となる「化学的特徴」を調査することを決めた。

研究を率いたNASAの惑星学者スティーヴ・ヴァンスはこう説明する。「わたしたちが行っているのは、地球の生態系内におけるエネルギーや栄養素の動きを研究するために開発された手法を応用して、異星の海を分析しようというものです。特に、水素と酸素のバランスをみることで『海の化学的性質が似ている』とする重要な理由を見いだせたなら、生命体がそこに住んでいる根拠となるでしょう」

彼らは、この海の塩水と海底の岩石の間の相互作用から、発生しうる水素の量を計算した。蛇紋石化作用と呼ばれるプロセスにおけるものだが、これは酸化物と関係している一連の化学反応で、さまざまな鉱物のくずだけでなく液体水素も生み出す。

このプロセスによるエウロパの海の化学的組成の変化を理解すべく、研究者たちは衛星の海底で起きた変化をシミュレーションした。

それによると、この衛星が形成されて何百万年もの間を経るなかで、海底にヒビが入ることで新しい岩の層が水の蛇紋石化作用に晒され続けた。計算によるとエウロパの海底のひびは約25kmの深さまで広がっているはずで、地球上で観察される5~6kmよりもずっと深い。

NASAは10年のうちに木星を目指す

水素の存在が確定されたなら、生命に適した化学組成に必要なのは、あとは酸素やその他の酸化物だ。

エウロパの場合、木星から届く放射線が水の分子を分裂させて、酸素を生み出しうる。その酸素が氷の下にある水に吸収されれば、地球の海中の組成に類似したものとなる。

ジェット推進研究所の研究者ケヴィン・ハンドは、次のように説明する。「まだ解明しなければならないのは、生命体と、その発生に必要な生物学的プロセスが存在するかどうかです。そして、このことを発見するために、NASAはエウロパを探索することを決めました」

実際、NASAのミッションはすでに開発段階が進んでいる。この宇宙機関は、今後10年以内に木星の衛星の方向に探査衛星を打ち上げるはずだ。

TEXT BY SIMONE VALESINI

TRANSLATION BY TAKESHI OTOSHI