Medium:Twitterの共同創業者によるアンチTwitter

Twitterの共同創業者、エヴァン・ウィリアムズが1年前につくった「Medium」は、ネット上の情報を、140字のつぶやきではなくもっと質の高いものにすることを目指している。

ツイートがジャンクなフライドポテトだとすれば、「価値のあるストーリーを書く」ために昨年設立されたスタートアップ「Medium」は、健康的なサラダになぞらえることができるだろう。この料理の比喩は、Mediumの創業者であるエヴァン・ウィリアムズがインターネット上の情報をどのような方向に押し進めようとしているかをうまく表現している。それは、長くて論理的で、利用をシンプルにするために可能なかぎり簡素なかたちで掲載されるコンテンツだ。要するに、Twitterの衝動的なつぶやきとは正反対の性質をもっている。

特に興味深いのは、ウィリアムズ自身が10年前にTwitterの共同創業者だったことだ。そしていま、ネブラスカ出身の40歳の起業家はMediumによって、「何か違うことをしようとしている人のための代替選択肢を提供する」ために働いている。

簡単な挑戦ではない。しかしウィリアムズは、変化の瞬間の到来を確信している。「わたしたちは、興味深いストーリーやアイデアを発表するのがより簡単になり、それらを読んだり共有したりすることのできるネットワークを組織しようとしています」と、彼は語る。現在Mediumにはプログラマー、記者など40人の従業員がいて、サンフランシスコにひとつ、ニューヨークにもう1つの計2つのオフィスがある。

Mediumはすぐに、非常に革新的な企業であることを証明した。大半のブログと違って、記事のそれぞれの段落にもコメントをつけることができる。そして開発チームは、Google Docsのようなインターフェイスを通して、複数人での執筆を可能にするシステムの開発を行っている。

Mediumのトップページでは、ストーリーは著者ごとにグループ化するのではなく、「わたしに起きたこと」のような主に叙述的なスタイルの文章や、「よりよい人間」のような自分自身を高めるためのアイデアなど、テーマごとにまとめられている。

現時点では、誰もがMediumにコンテンツを発表できるわけではない。すでに執筆資格をもつ誰かから招待を受けるか、寄稿者の輪が広がるのを待つ必要がある。いずれにせよ、執筆することのできる幸運な人々は十分に熱狂している。「わたしにとっては大きなチャンスです」と、例えば戦場ジャーナリストのデイヴィッド・アックスは、『Bloomberg Businessweek』に語っている。「Mediumは信頼のおける、利用が簡単なプラットフォームです。シンプルさを優先してスタイルの選択を思い切って限定しています」。

ウィリアムズは、いかなる代価を払ってもコンテンツの質を大事にしたいと主張している。そのことが読者を失うことになってもだ。「ビジネスを成立させるために、ニュースサイトは読者を驚かせることでPVを稼ごうとしていて、編集の質については気にしていません。テクノロジーについて論じているブログの状況は悲惨です。彼らはあまり面白くない事柄を誇張することによって、表層的で無価値な文化をつくり出しています」。

ウィリアムズが、反対の方向に漕ぎ出そうとしているのはまさにこうした理由からだ。「現在、非常に上質なコンテンツも以前と比べて多量にあるからです」とも語る。

このサーヴィスは善意によるものだ。しかし、ビジネスの視点も無視できない。質の高いコンテンツを保証するためには、何らかのかたちで書き手に報酬を用意しなければならないことを彼はよく知っている。

Mediumは、何としてもサイトにバナー広告を入れることを避けたいと考えており、読者に有料アクセスを導入することや、特定の記事のグループに広告主をつけることを視野に入れたアプローチを研究している。ただ、この種のアプローチを試みるのは彼が最初ではない。

アンチTwitterは、Twitterの成功を繰り返すことができるだろうか?

TEXT BY SANDRO IANNACCONE

TRANSLATION BY TAKESHI OTOSHI