ゾウもわたしたちと同じように話す

科学誌『Science』に掲載されたある研究の結果は、この動物によって発せられる可聴下音波は、わたしたちが話したり歌ったりするのと同じ方法で生み出されていることを示唆している。
ゾウもわたしたちと同じように話す

“Project 365 Day 82: Call Of The Wild [Explored!]” BY Greg McMullin (CC:BY-NC-ND)

すべての動物は話す。ゾウも同じだ。ただし、しばしばわたしたちには聞こえないけれど。これは、彼らが人間の耳には感知できない音を生じさせているためで、これによって彼らは非常に離れた距離でもコミュニケーションを取っている。

しかし、この人間には聞こえない咆哮はどのようにして生み出されるのだろうか? 科学誌『Science』で発表されたある研究では、ウィーン大学認知生物学科の研究者たちが、ゾウのうなり声は、まさにわたしたちが話すときにと同じように、空気が声帯を振動させることによって生み出されていることを証明した。

ゾウが人間の聴力の限界より低い低周波音を発していることは以前から知られている。いままで明らかでなかったのは、この音がどのように生み出されているかだ。

謎を解くために、オーストリアの研究者たちは、ベルリンの動物園で自然死したアフリカゾウのサンプルから得られた喉頭を利用した。高速ヴィデオ撮影の技術を用いて、彼らは研究室でこの動物から発せられる音の放出を再現し、その周波数を測定した。

「哺乳類は、喉頭にある声帯を震わせて音を生み出します」と、研究の責任者、テクムゼー・フィッチは説明している。

この効果を得るには2つの方法がある。1つは、ネコが喉をゴロゴロ鳴らすときのように、喉頭の筋肉を能動的を収縮させることによるAMC(Active Muscular Contraction/能動的筋収縮)。

もう1つはMEAD(Myoelastic Aerodynamic/筋弾性-空気力学的)メカニズムと呼ばれるものによってで、人間が話したり歌ったりするときにはこれが用いられている。この場合、声帯の振動は、肺から発せられる空気の通過によって引き起こされる。

フィッチは続ける。「わたしたちの実験では、ゾウの喉頭を身体の残りの部分から切り離して利用しました。このため、AMCにおいて起こるような、脳から発せられる神経刺激を通して喉頭の筋肉の収縮を引き起こすことは不可能でした。したがって、わたしたちがゾウのうなり声を再現できたということは、声帯を通過する空気がこれを振動させて可聴下音波を生み出していることを示しています」。

この結果の裏付けとして、実験でこのように生み出された音の周波数は、ほかの研究者たちによって報告されている値とも、自然の中で観測されているものとも一致していて、5〜60Hzまで変化し、平均は約16.4Hzだった。

音をつくり出すためにMEADメカニズムを用いるのは、非常に柔軟性のある行為で、これは哺乳類によって広く用いられている。

例えば、コウモリは非常に鋭い高音を生じさせることができ、周波数は110,000Hzに達する。スペクトルの反対側では、トラは40〜100Hzの間に含まれる低い周波数の音を生み出す。さらに、人間の声は幅広い音程の周波数をもっており、200Hzから3000Hzまで変化する。ゾウは、このメカニズムのもつ多機能性のさらなる例なのだ。

TEXT BY MARIA ANTONIETTA CERONE

TRANSLATION BY TAKESHI OTOSHI