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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2014年07月23日

イザヤ・ベンダサン(山本七平)『日本人と中国人』―「南京を総攻撃するも中国に土下座するも同じ」、他


日本人と中国人―なぜ、あの国とまともに付き合えないのか (Non select)日本人と中国人―なぜ、あの国とまともに付き合えないのか (Non select)
イザヤ・ベンダサン 山本 七平

祥伝社 2005-01

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 イザヤ・ベンダサンとは山本七平の筆名である。本書が出版された当時は、著者が誰かをめぐって様々な憶測が飛び交ったそうだが、現在ではイザヤ・ベンダサン=山本七平で決着がついている。『山本七平の日本の歴史(上)』には、次のような文章が見られる。
 『諸君!』をぱらぱらと開いていたら、奇妙な広告が目についた。なぜ目についたかと言うと、その広告文の中に私の名前が出てきたからである。『殺す側の論理』という本で、その中に「天皇制擁護に汲々とする右翼文化人の代表ベンダサンとの公開討論」という言葉が出てきた。ハハァこれは面白い。もっとも「公開討論」は何かの誤りであろうが。(※太字は筆者)
山本七平の日本の歴史〈上〉 (B選書)山本七平の日本の歴史〈上〉 (B選書)
山本 七平

ビジネス社 2005-02

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 イザヤ・ベンダサンも山本七平も、天皇制を後醍醐天皇までの「前期天皇制」と、北朝以降の「後期天皇制」に分け、「後期天皇制」は武家が自らのために作ったもの、すなわち幕府(武家)を征夷大将軍に任命させるために、天皇を形式的官位授与権を持つ「山城の一小領主」(北朝)に封じ込めて、幕府を合法政権とするためのものと捉えている点で共通している。また、そのような天皇制の区分を最も意識していた人物として、新井白石の名前を挙げる点でも同じだ。何よりも、両者は論理の展開の仕方や文章のリズムが非常に似通っている。

 (1)「なぜ、あの国とまともに付き合えないのか」という副題がついていたため、てっきり日中のぎくしゃくした関係の原因を中国に求めた本だと思っていた。しかし、日中関係の障害は、実は日本自身の中にある、というのが著者の主張である。「問題の原因を外部環境に求めず、自らに求めよ」という、自己啓発本によくありそうな言説を一応支持していながら、いざ中国の話になると無意識のうちにその言説を破棄していた自分を責めた。

 中国は古来より「文化的支配」と「政治的支配」という二重の支配力を持っていた。そして、冊封体制という独特の国家関係により、文化的には強い影響力を及ぼすが、政治的な支配は行わず、中国皇帝が国王の称号を与える間接支配にとどまっていた。この「文化的に君臨すれども政治的に統治せず」という原則は、日本国内にも持ち込まれた。すなわち、日本の頂点に立つ天皇の役割をあくまでも文化的な統制に限定し、政治的な権力は幕府が握るという図式である。

 しかし、著者が言う「勤王思想の革命」によって、この構造に変化が現れる。天皇に文化的支配力と政治的支配力の両方を集中させ、天皇を絶対化する動きである。あたかも中国皇帝が絶対的な権力を持っているかのように考え(前述の通り、実態は異なるのだが)、同じ構造を天皇にもあてはめるのである。こうした立場の人々を著者は「明朝的日本人」と呼ぶ。その代表は豊臣秀吉や西郷隆盛などである。これに対し、2つの権力の分化を主張する従来の人々は「清朝的日本人」と呼ばれる。新井白石がこれに該当する。

 明朝的日本人は、中国を絶対視し、その理念を体系化する。そして、その理念でもって日本の歴史を再構築する。たとえそれが日本のそれまでの歴史を全否定することになっても構わない。そもそも、歴史とは歴史が書かれた人の事実関係ではなく、歴史を書いた人の事実関係である。新しい歴史を書き終えると、彼らは今度は中国を観察する。ところが、自分たちに理念を教えてくれたはずの中国は、実はその理念から外れていることに気づかされる。

 ここに、「外なる中国」と「内なる中国」という2つの中国が登場する。「内なる中国」とは、彼らが心の中に理想化した中国であり、皇帝が絶対的な権力を持っている国である。これに対して「外なる中国」とは、現実の中国を指す。2つの中国に挟まれた彼らは、次のどちらかの方法をとる。

 1つは、「内なる中国」を「外なる中国」に強制するという道である。彼らは「日本こそ真の中国である」と中国に訴求する。それが軍事的な行動を伴うと、日中戦争になり、南京総攻撃になる。これに対してもう1つの道は、「外なる中国」を「内なる中国」と一体化させて絶対化し、「外なる中国」の前に土下座するというものである。田中角栄が台湾との日華平和条約を一方的に破棄し、日中共同声明にサインしたのは、第2の道に従った結果である。だから、著者に言わせれば「南京を総攻撃するも中国に土下座するも同じ」なのである。

 「外なる中国」と「内なる中国」の板挟みにあった時、そのどちらか一方しか選択できないことに、日中関係の悲劇があるように思われる。「外なる中国」と「内なる中国」の対立は、言い換えれば現実主義と理想主義の対立である。日本は諸外国から様々な理念や体系を輸入し、それを自分たちの風土や社会に合うように改良することで生き延びてきた。いわば、理想主義と現実主義のバランスをとることにたけているわけだ。それが、日中関係となると二者択一の極端な考え方しか取れなくなるのは、一体どういうわけなのだろうか?

 (2)以前の記事「茂木誠『経済は世界史から学べ!』―経済を通じて歴史を見た時の7つの発見」で、荻原重秀や田沼意次の経済経済政策が高く評価されていることを述べたが、本書によれば、政治的な評価は新井白石や松平定信の方に軍配が上がるようだ。
 確かに彼(=田沼意次)にも欠点があった。いわばハートの問題であり、それは少なくとも為政者として、その時代の要請する政治道徳の規準―たとえそれがいかなる基準であれ―無視すべきでないこと、当時の基準すなわち儒教の「修身斉家治国平天下」は無視すべきでないことを、全く忘れていたことである。もっとも忘れていたのは彼だけでないが―。従って失脚と共に、当時の知識人はもとより庶民・町人からも、あらゆる非難罵倒がとんできた。
 日本では政治と経済の分離がしばしば起こる。正確に言えば、経済至上主義が政治を不在にさせる。江戸時代には、「唐人」と呼ばれる中国人が常に長崎に来て貿易を行っていたが、明から清への政権交代の影響もあり中国とは国交がなかった。戦後の日本は、経済成長を追求して先進国の仲間入りをしたものの、軍事は日米安保条約によってアメリカに丸投げしてしまった。また、領土問題や歴史問題を抱える中国・韓国・ロシアとの関係においては、そのような問題を一旦棚上げにして、経済面での協力を深化するという路線がつい最近までは基本となっていた。

 新井白石と荻原重秀、松平定信と田沼意次の評価が分かれるように、政経分離の世界では、政治的な成功と経済的な成功は相容れないようだ。だが、以前の記事「山本七平『比較文化論の試み』―「言語→歴史→宗教→道徳→政治→社会→経済」という構図について」で述べた通り、政治は社会を通じて経済を規定している。政経分離は本来の姿ではない。明治の実業家・渋沢栄一が「論語と算盤は両立する」と述べたように、政治と経済は両立させる必要がある。そして、政治面の成功を経済面の成功に優先させなければならない。

 その優先順位が入れ替わっているところに、日本の社会的未熟さ、日本人の人間的未熟さがあるように思える。ここで、政治的な成功をどのように定義するのかが問題になるが、政治的な成功をどのように「測定するのか?」という定量的な問題にすぐに転換してしまう時点で、経済至上主義的な考え方に毒されている。自民党はよく「価値外交」という言葉を持ち出す。その価値の定義の仕方が数的方法に限定されるうちは、おそらく政治的な成功を収められないだろう。

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