ということで・・・
今日は今までのまとめをどーんと掲載。
今まで読んでた人も復習。
読んでない人は一気に読んでね。
明日は続きを載せるよ(#^.^#)
おまけ物語。
「太郎の大冒険」昔々ある所におじいさんと・・・じゃなくて、とある所に夢と魔法の王国がありました。
その王国の名は「D王国」。
別に伏字ではありません。
れっきとした国名です。
「D王国」には強くたくましく時には優しく国民に接する立派な王と、聖母マリア様のような綺麗で優雅で優しい王妃がいました。
王さまの名前はDキング。
王妃様の名前はDクイーン。
ごく普通の二人はごく普通の恋をしてごく普通の結婚をしました。
でも、ただ一つ違っていたのは・・・
違う違う番組が違うよ。
えーい、もとい。
王様と王妃様の間にはお子様が居なく、王様に慕う国民たちも早くお子様が出来る事を待ち望んでおりました。
しかし、とある晩に王妃様は夢を見ました。
王妃は夢の中で城の庭にある女神像の前で一心にお祈りをしています。
すると女神像はまばゆく限りの光に包まれ、王妃に話しかけてきたのでした。
「王妃よ、何を一心に祈ってるのです?」
「これは女神様。私には子供がいません。愛するDキングとの間に子供が出来ません。」
「子供が欲しいのですね。」
「そうです女神様。」
「よろしい、子供を授けましょう。」
「まぁ、なんて嬉しいことでしょう。」
「ただし・・・」
「えっ、ただし?」
「ただし、私の像の前のお供え物は甘いものにしておくれ。」
「えっ?」
そこで王妃は目覚めました。
すると、王妃のおなかの中には新しい命が宿っているではないですか。
それから王妃は女神像にお供えを欠かすことはありませんでした。
今日はチョコレート、明日はケーキ、明後日は・・・
そして、十月十日後に可愛い玉のような赤ちゃんが誕生しました。
この赤ちゃんは男の子で「太郎」と名付けられました。
王様と王妃様は、国民に王子の太郎をお披露目することになりました。
そのお披露目パーティーは7日間も続き、それは豪華で華麗なパーティーでした。
太郎は貴族・国民の皆から愛される程それはそれは可愛い王子様です。
そのような沢山の愛に包まれ、すくすくと大きくなりました。
それから10年。
少年になった太郎王子様はプーの助とお城の庭で遊んでいました。
プーの助とは貴族の子息で、小さい時から太郎とは年齢が近いので遊び相手としてお城に登城していました。
今では遊び相手というより兄弟のような間柄で、片時も2人は側を離れません。
そんなある日、プーの助が城下町から面白い話を仕入れてきたのでした。
「太郎、今日城下町ではずれの森の話を聞いてきたよ。」
「あの眠れる森?」
「そう。あの森。」
「ふーん。で、どんな話?」
「なにか、あの森に怪物が住み着いたみたいだって。」
「本当に?どんな怪物?」
さぁ大変です。
太郎王子が興味を持ってしまいましたよ。
では、この森にいる怪物というのはどのような話しなのか少し時間を遡ってみましょう。
城下町。
プーの助がお城に行く前に街中を歩いていると、町人が話す声を聞きました。
「あの森にいったか?」
「いいや。最近行ってないな。」
「行かなくてよかったな。なにか噂だと怪物が住み着いたらいしいぞ。」
「へー、どんな怪物だ?」
「それがよー、色は青くて口は耳まで裂けていて耳はロバみたいに尖ってるってよ。」
「それは恐ろしいな。で、背は大きいのか?」
「いや、背は大きくないらしいが青い光を出して人を殺すらしいぞ。」
「くわばらくわばら。しばらく森には行けないな。」
こんな話を聞いてしまったプーの助は、太郎にさっそく話さなくてはと意気揚々と城に向かいました。
全てを聞いてしまった太郎王子様。
もう既にウズウズしたいます。
「じゃ、行こうか。」
太郎はプーの助に宣言しました。
「え、行くって?」
「僕たちで怪物退治をしにさ。」
「でも、子供だけで危ないよ。」
「僕は誰だ?」
「誰って、王子様。」
「そうだろ。どんな物語でも王子様は無敵なんだよ。」
「じゃぁ、計画を立てようか。」
「本当に2人だけ?」
「大人に言ったら止められちゃうよ。」
「そうだけど・・・」
よからなぬ計画を立てようと、2人でこそこそ話をしてると、遠くから太郎を探す声が聞こえます。
それは太郎の身の回りの世話をしている侍女達でした。
「王子様、太郎王子様!!」
「太郎王子様どこですか?」
太郎とプーの助は不味いという顔をして隠れようとしました。
しかし、木の陰に隠れる寸前に侍女に見つかってしまいまいました。
「王子様、こんな所にお見えになったのですか。」
「なに?」
「王様がお呼びですよ。」
「父上が。」
「自室でお待ちでございます。」
「うーん・・・嫌だな・・・。」
「何か言われました?」
「えっ、なにも。」
仕方なくという感じで太郎は王様のもとに向かいました。
お城のな中でも一番大きな自室を持つ王様の所までゆうに30分はかかります。
やっと着くと、王様の横には王妃様もお出でになりました。
「太郎や、近くにおいで。」
「はい、父上。」
流石に太郎も王様の前ではおとなしいようです。
「太郎よくお聞きよ。」
「はい。」
「実は隣の国の王様一家が我が国におみえになるだ。」
隣の国はD王国とは昔は同じ一族でした。
今でも、隣国同士仲良くやっているのです。
「大人たちは難しい話もある。だからお前に花子というお姫様の相手をして欲しいのだ。」
「花子姫?」
「知らなかったのか?」
「えっ、いやー名前だけは知ってます。」
「そうか。では頼んだぞ。」
「はい。」
太郎はまた庭に戻ると、プーの助の所に駆け寄りました。
王様からの話をプーの助にに話します。
「プーの助、花子ってお姫様知ってる?」
「えっ、花子姫?」
「あーそうそう。」
「知ってるっていうか、直接はお会いした事が無いけど・・・かわいいらしいよ。」
「そうなんだ・・・。」
「どうしたの?」
「父上から、姫様が来るから面倒を見ろって。」
「えーー!?いいな。」
「プーの助も一緒だよ。」
「えっ?そうなの?えへへへ。」
「なに喜んでるんだよ?」
そんなこんなで、数日が過ぎました。
そしてお城に隣国の一行が到着したのです。
大広間には、Dキング王様とDクイーン王妃様、太郎王子と主要貴族が集まって隣国の王様一行を迎えました。
挨拶が一通り済むと、王様が「子供たちは庭で遊んでおいで。」と言われました。
花子姫は太郎に頭を下げ、スカートを軽く持ち上げて挨拶をします。
「初めまして、太郎王子様。」
この時に太郎は、人生初めての恋をしました。
(か、かわいいなー)
太郎は一目惚れをしてみたいです。
生まれて初めての恋。
脳天から爪先まで雷が駆け抜けたような感じを太郎は、戸惑いながらボーとした頭の片隅で意識してました。
「あ、あー。初めまして。」
「太郎王子様?お顔が真っ赤ですがお熱でも?」
「いっ、いやなんでもないよ。」
「そうですか。あっ、私の名前もまだ申し上げてませんね。花子と申します。」
その微笑ましい光景を眺めていた大人たちは、
微笑みながら各々が二人が結婚したら両国の平和が続くのにと考えていました。
「早く遊びに行っておいで。」
Dキングは優しく二人に言いました。
「はい、お父様。」
太郎は応え、花子姫に「行こう。」と言って庭に向かいました。
庭ではそわそわしたプーの助が待っています。
「あっ、太郎!!こっちだよ。」
「あー、プーの助。ここにいたのか。」
「太郎、そちらは?」
「こちらが花子姫だ。」
「初めまして。花子です。」
「初めまして。プーの助です。」
二人が挨拶をしていると、遠くから息を切らした侍女が走ってきました。
「姫様、お待ちを・・・」
「あっ、プー子。」
その侍女を見たプーの助は太郎と同じ現象が体に起こりました。
「花子姫様、こちらにおいでだったんですね。」
「プー子、どこに行ってたのです?」
「ちょっと呼ばれて、お妃様の所に。」
「また、お母様が何か言ってました?」
「えぇ、姫様から目を離さないようにって。」
「そうですか。」
二人の会話を夢心地で見つめる太郎とプーの助。
「それより、太郎王子様。この城の近くに眠れる森という名前の森がありますか?」
「えっ、あ、ありますよ。」
「そうですか。そこに行きたいのですが・・・」
花子姫は太郎に懇願するように聞きます。
すると太郎は二つ返事で答えました。
「あぁ、いいよ。」
「姫様!!何をおっしゃってるんですか?」
「プー子、これは内緒の話だけど・・・」
花子姫とプー子は2人から離れながら内緒話をしています。
プー子は最初は驚いていましたが途中から、仕方がないという表情で聞いていました。
「太郎、何を話してるのかな?」
「うーん、わからない。」
二人が、太郎とプーの助の所に戻ってくると、
「私もお供しますから。」
「分かってますよ。」
という会話が、やっと聞こえてきました。
「王子様、お願します。皆には内緒で森に連れって行ってください。」
「いいけど、どうして?」
「それは・・・・」
花子姫からの申し出に、太郎はちょっと戸惑いました。
何故なら、自分たちも眠れる森へ行こうと考えていたからです。
「それは・・・後で必ず訳は申しますので、お・ね・が・い。」
もうダメです。
太郎は花子姫にメロメロですから。
「う、うん。でも夜にならないと抜け出せないよ。」
「はい。それでいいです。プー子も一緒だよ。」
横に控えている侍女のプー子も首を縦に振りました。
さぁ、残るはプーの助だけです。
「プーの助、どうする?」
「でも太郎。ばれたらどうする?」
「大丈夫。城から抜け出して、朝までに戻ればばれないよ。」
「うーん。わかった。行くよ。」
プーの助はプー子が行くなら僕もと思っていたんですが、
最後まで反対したというそぶりをして正義感ぶりをプー子に見せたかったのです。
「よし、そうと決まれば皆が寝た後に呼びに行くよ。」
「でも、どうやって抜け出すんですか?」
「大丈夫。僕に任せといて。」
太郎とプーの助はちょくちょくお城から抜け出していました。
今まで見つかった事は無かったのです。
二人は秘密の抜け穴をちょっとした切っ掛けでしていたからでした。
D王国に夜の帳がおりました。
「花子姫。起きてる?」
太郎は大人たちが眠りについた時間を見計らって、花子姫が寝てる部屋に行きました。
「太郎王子様。準備は整っております。」
花子姫の側にはプー子が控えています。
昼間とは違い、ドレスから動きやすい姿になった二人が太郎を待っていました。
「さぁー行こうか。」
「はい。」
夜遅く静まりかえったお城の中を、ゆっくりと進んでいきます。
所々に夜警の兵が居ましたが、なんとか見つからずに城の外へ。
真っ暗な庭の中を進んでいく三人。
やっとのことで、中庭の女神像の前まで来ました。
「太郎王子様、この女神に何かあるのですか?」
「この女神像の裏に古井戸があるんだ。」
「古井戸ですか?」
「そう。その井戸は水は無いんだけどその代りに抜け道があるんだ。」
「抜け道ですか?」
「ここに長く居ると見つかるから、取り合えず進もう。」
三人は太郎が井戸の近くに隠してある縄梯子で下りて行きました。
降りると人が立って歩けるほどの横穴が開いていました。
「王子様、この穴はどこに続いているのです?」
「太郎でいいよ。」
「はい。」
「この穴は城の外まで続いているんだ。」
太郎は近くに置いてある松明に火を付けて先頭で歩きだしました。
歩きながら穴の経緯を話し出します。
「この穴は昔の戦争の時に、城から逃げ出すためのものらしい。最近は平和なので使わないけどな。」
「そういえば、プーの助様はどうされたんですか?」
「穴の外で待っているよ。」
しばらく行きと、外の月明かりが見えてきました。
外に出るとプーの助が穴の横でそわそわしながら待っていました。
「太郎、遅かったな。」
「お前が早く来すぎじゃないか?」
「そんなことないよ。」
しゃべりながらも太郎の後ろにいるプー子を気にしている。
「どうした?なにか気になるのか?」
「うっ、うんん。」
「そう、じゃ行こうか。」
四人になった一行は眠れる森へと向かいました。
森の入口です。
夜も遅いとあって、森の中はまるで大きな口を開けたまものように感じます。
その中に一歩足を踏み入れようとしたときに、
「これ、子供たち。」
といきなり声をかけられました。
見るとマントを頭から被った老人にがすぐ近くに居ました。
「何処へ行くのじゃ。」
「えーと、森です。」
太郎が答えると、老人は一歩近づきさらに聞いてきました。
「こんな夜遅くに森へと?危ないから止めなさい。」
「あのぉー、私のペットを探しに行くのです。」
「ペット?」
「はい。ペットが逃げてしまいまして探しているんです。その・・・あの子はちょっと暴れん坊で私達以外の人に怪我をさせてもいけないので。」
花子姫が太郎の代わりに話しました。
太郎は納得しました。
そういうことなのかと、理由がわかったのです。
何故ここで花子姫が理由を話し出したかというと、それは数時間前に戻ります。
太郎が来るちょっと前です。
花子姫の寝室の中でプー子との会話。
「姫様、なぜ王子様たちに森に行くことをたのんだですか?」
「私達だけでは・・・」
「あの子を王子様に見られたら大変なことになりますわ。」
「大丈夫、王子様はそのような方ではありませんよ。」
「そうだと思いますが・・・。でも、あの事は話されてはなりませんよ。」
「わかっています。」
そんな会話があったのも知らずに、花子姫の後を引き継いで話しました。
「だから僕たちは森に行くのです。」
「そうか、なら私も一緒にいこうとしようか。」
「えっ、一緒に?」
「そうだ。子供たちでは危ないし、私も森に忘れ物をしたのでな。」
「どうする?プーの助?」
「そうですね。大人が居た方が心強いですから。」
「なら一緒に行こうか、子供たちよ。」
老人はそ知らぬ顔で前を進み始めました。
四人は顔を合わせました。
「どうする?太郎。」
「仕方が無いな。何かあったまけばいいだろ。」
森に入って無言に歩く5人。
聞こえてくるのは、不気味な鳥の鳴き声と風で揺れる木の葉の音だけです。
「ねぇ、花子姫。」
「しっ、私も花子だけでいいですよ。太郎。」
老人に聞こえぬように、小声で花子は言いました。
「うん。わかった。ところでさっきの話は・・・」
「ええ、そうです。私の国と太郎の国はこの森で繋がっていますよね。」
「そうだね。父上に聞いた時にこの森は両国の財産でもあるって言っていたな。」
「そうです。この森のおかげで両国は潤っているって私のお父様もいっておりました。」
「で、花子のペットがこの森まで逃げた。」
「そうです。私の住んでる家からこの森までは遠いので、太郎のお城に来た時に探そうと思いました。」
「そうか。でもこの森には怪物がいるって噂があるんだよ。大丈夫かな?」
そう太郎が言うと、花子の顔には困惑の色が出た。
「大丈夫と思いますわ。あの子強いので。」
「そう。」
その話を何気なく聞いていた老人は、ふっと笑いました。
「なぁー、花子とか言ったな。」
「はい。」
「そのペットは犬か猫か?」
「えぇーと、猫かな。」
「猫かな?」
「猫です。大きな猫です。」
「怪物の話はワシも聞いた。でも怪物に猫が勝てるものかな。」
「大丈夫です。強くてすばしっこいですから。」
「そうか。」
その会話を最後に5人は森の中を進んでいきました。
しばらく行くと、木のない開けた場所に着きました。
その広場のちょうど中心には、切り株が1つだけあります。
その切り株の上には、何かの皮で出来た袋が置いてありました。
「おお。あったあった。」
老人は嬉しそうに切り株に近づき、袋を取り上げました。
そして、袋から長い棒のようなものを取り出したのでした。
老人が袋から取り出した棒のようなものは、月の光を浴びて鈍く光っていました。
よく見るとそれは、刃の長いナイフです。
太郎達はそれを見て一歩後ずさりました。
「おぉ、これだよ。これが無くては仕事にならんのでな。」
「おじいさん、なんですかそれ?」
太郎は震える声で老人に聞きました。
すると、老人はナイフと袋を持ち一歩一歩太郎に近づきながら話します。
「このナイフはなぁ、ワシの仕事道具じゃ。」
「仕事道具?」
「そうじゃ。ワシは街で木工細工の仕事をしておるベアじゃ。」
「ベア?」
「ベアさんじゃ。目上には敬意をはらえ。」
「すみません。ベアさん。」
「お前らはワシがこのナイフで何かすると思っていたのかな?ワハハハ!!」
太郎達はベアにわからないようにほっと息を吐きました。
ベアは話を続けます。
「さらに知っておるぞ、お前らは太郎王子にプーの助、隣国の花子姫、侍女のプー子じゃな。」
「えっ、なんで知っているんですか?」
「年を取ると何でもお見通しじゃ。」
と言いながらベアは大笑いをしました。
「さぁ、花子姫のペットを探しに行こうか。」
ベアはそう言うと先頭に立って歩き始めました。
しばらく行くと何か物音が聞こえてきました。
更には、木々の間から松明の明かりが消え隠れするのが見えます。
ベアは立ち止まり、太郎達を手を伸ばし歩きを止めました。
指を1本たて口に持っていくと静かにするように合図しました。
全員はその場で止まり物音をたてません。
すると、物音は数人の男たちの声と草の上を激しく歩き回る音が聞こえてきた。
「ベアさん、誰か居るね。」
「ああ。」
ベアは短く答えながら、鋭い目で音のする方向を見つめています。
「静かに進むぞ。」
小さな声でみんなに言うと少しずつ前に進んでいきます。
少し開けた場所で5・6人の男たちがせわしなく動く姿が見てきました。
その男たちは何かを檻に入れる作業をしていました。
どうも生き物を捕まえて檻に入れようとしているのだが、なかなかその生き物は抵抗して檻の中には入ろうとしません。
そしてその生き物がちらっと見えました。
「次郎!!」
花子は思わず声を上げてしまいました。
檻になんとか生き物を入れ終わった男たちが一斉に振り返りました。
「誰だ!」
男たちは声のする方に走り出します。
「逃げるぞ。」
ベアが声をかけると、5人は今来た道を走りだしました。
しかし、ちょっと遅れたプー子が木の根に足を取られ転んでしまいました。
「プー子!!」
プーの助が助けようと戻ろうとしたら、近くにいたベアが手を取り助けに行くのを止めました。
「お前は走れ。ワシが助けに行く。」
そう言うと、向きを変えてプー子を助けに迎います。
しかし、もう遅くプー子はすぐ後ろまで来た男の一人に捕まってしまいました。
「遅かったか。」
その一言で皆は立ち止まってしまいました。
「待て。お前たちは誰だ。」
プー子を捕まえた男が聞きます。
その質問に太郎が答えようとした時にベアが止め、代わりに答えました。
「私たちはそこの町の者だ。」
「何故ここにいるんだ?」
「あなた達が捕まえた生き物を探しに来たのじゃ。」
「あの生き物の事を知っているのか?」
「この子のペットなんじゃ。返してくれんかのう。」
ベアは花子を振り返りながら答えた。
すると男は、
「それは出来ないな。」
男が答える後ろで他の男たちが整列をし始めました。
その横を一人の男が、プー子を捕まえている男に声をかけました。
「どうしたのだ。」
他の男たちとは違う服を着た男が近づいてきます。
その時になってやっと、太郎は男達が兵隊の制服を着ていることに気が付きました。
「隊長。見知らぬ者たちがいまして。」
「見知らぬ?馬鹿かお前は。」
「はいっ?」
「こいつらたちは太郎王子たちだぞ。」
「えっ。」
「それに・・・そこに居る老人は戦士、いや竜戦士のベアだな。」
太郎王子はそれを聞いて、ベアの事を思い出しました。
前にDキングに昔にとても強い戦士が居たことを。
昔、D王国と隣国R王国が連合でW国と戦争をしていました。
その戦争の勝利をもたらしたのが戦士ベアなのを、小さい頃に絵物語のようにDキングから聞いていました。
「よくワシの事を知っておったのぉ。」
「私の父はお前に殺されたからな。」
隊長と呼ばれた男は答えました。
「お前の父を?」
「そうだ。あの戦争の時に前の女王の側近だった父をお前が殺したんだ。私は小さかったがお前の顔をその時にこの瞼に焼き付けたのさ。」
「そうだったのか。」
「悪い事をしたな。しかし戦争というものはそういうものだ。」
「ここで会ったのは神の引き合わせに違いない。お前をこの場で殺す。」
「それはさせれんな。ところでお前の名前は何と言うのか?」
「私は、W国親衛隊隊長、ショウだ。」
ショウは腰の剣を抜きました。
「戦士ベア。剣を抜け。」
「お前はまだワシには敵わないな。止めておけ。」
「卑怯かも知れんが、私達には人質がいるのだ。どうしても私はお前を殺さなくてはいけないんだ。」
太郎はこの状況を見守るしか方法がなかった。
その時、太郎の腰に差してある短剣が青白く光りだしました。
しかし、今の時点では誰もそれに気がつきません。
「どうあってもワシを殺すというのだな。」
「そうだ。さぁ、剣を抜け。」
その時、ベアは杖を逆手に持つと引き抜きます。
すると、杖の中から剣が現われました。
そのままショウに向かって突進していきます。
老人とは思えない瞬発力を発揮しながら、柄の部分でショウのみぞおちをしたたかに突きました。
「うっ・・・。」
ショウはその場でうずくまると、ベアは方向を変えてプー子を捕まえている男に向かいます。
そしてその男も剣での柄で叩きのめしました。
しかし他の兵士の反応は早かったのです。
ショウがうずくまるのを見ると、素早く太郎の元に走り寄り今度は花子を捕まえました。
太郎はすぐに花子を助けようと行動しましたが、すでに花子の首もとには短剣がありました。
「花子!!]
太郎の声は森の中に響きました。
兵士に捕えられた花子は身動き一つしません。
ただ黙って太郎を見つめています。
その瞳には薄らと潤んでいるのが見取れました。
「花子!!くそ。」
ベアはその一瞬の出来事に動きを止めてしまいました。
すると、周りの兵士たちがベアの身体を拘束します。
ベアも身動きはしません。
兵士たちのなすがままになっています。
「ベア、覚悟はできたかな?」
ショウはあごをさすりながらベアに近づいていきます。
「ここでは殺さないことにする。城に連れて帰り女王の御前で殺す。」
ベアは縄で縛りあげられました。
「奴らも捕まえて縛りあげろ。」
「はっ。」
兵士達は太郎達を捕まえようと、迫ってきました。
「太郎、逃げろ。」
ベアは太郎達に言います。
しかし、太郎は花子が気になり動けません。
「太郎、逃げよう。」
プーの助は太郎にに声をかけますが、動こうとはしません。
「花子をこのままにはできない。」
太郎は兵士達が迫っても、なんとかD花子を助け出そうと考えました。
しかし、いい案が浮かびません。
「太郎王子だけでも逃げてください。」
プー子も声をかけます。
しかし、もうすでに兵士達が周りを囲んでいます。
その時、太郎の短剣がよりいっそう輝きだして周りを光で包んでいきました。
「なんだ、その光は。」
ショウが声を出した時にはすでに、光が急速に全員を包みこみました。
「僕の剣が。」
太郎は自分の腰に差してある短剣を見つめます。
「剣を抜け、太郎!!」
ベアは大声で叫びました。
太郎が短剣を抜こうとした時、近くで唖然としていた兵士が我に戻り阻止しようと近づきます。
しかし兵士が阻止する前に短剣は抜かれました。
さやから短剣が抜かれると刃が眩しいぐらいに輝いています。
今まで広がり続けた光が、今度は刃に戻っていくように集まりだした。
そして光は長剣の刃のように固まりだし、最後により一層光り輝くと輝きが止みました。
「なんだその剣は。」
ショウがつぶやくように言いました。
太郎の剣は元の短剣の姿かたちもなく、赤く光り輝く刃をもつ長剣に生まれ変わりました。
「わかったぞ。うわさでしか聞いていなかったが、D王国に昔から伝わる勇者の剣だな。」
「えっ、勇者の剣?」
太郎が思わず聞き返します。
「持ってる本人が知らぬとは。王女様にいい土産になる。お前ら剣ごと捕まえろ。」
「はい。」
兵士達が太郎達との距離を、少しづつ縮めます。
「太郎。その剣で何とかしてよ!!」
プーの助が叫びます。
「何とかといっても・・・」
太郎は困り、仕方がなく近くの兵士に向けて剣を振ります。
だが、剣を振ってもまだ距離があり届きません。
しかしその時、剣の先から赤い光が出て兵士を突き倒しました。
「やった太郎!!」
プーの助が歓声を上げますが、本人は何が起こったかわかりませんでした。
太郎が兵士を倒したころ、お城ではDキングの下に報告が来てました。
Dキングはベットで休んでるところでした。
「王様、お休みの所申し訳ございません。只今報告が来ました。」
その声で寝ていたDキングはすぐに目を覚まします。
「そうか。」
「報告によりますと、国境にW国の軍隊が終結しております。」
「やはり来たな。」
「更には、眠れる森にて太郎王子様たちがW国の兵士たちと戦っております。」
「なに、太郎が。」
Dキングは驚きの声を上げました。
「はい、ただ戦士ベアが一緒との事です。」
「ベアが一緒だと。」
Dキングはすぐにベットから起き上がり着替え始めます。
隣の間で控えていた侍女たちが駆けつけ着替えを手伝います。
「すぐに皆を集めよ。」
「はい。」
「R国の国王も来ていただくよう伝えろ。」
「はい。」
Dキングは着替えながら1つの事を心配しえます。
太郎があの事を気が付かなければいいがと。
お城で皆が集まっている頃、森の中では戦いは続いておりました。
振った剣で兵士が倒れ唖然とする太郎。
その場は時間が止まったように全員が動きません。
「太郎、残りを倒すのじゃ。」
ベアが叫ぶ声に我に帰った太郎。
気がつくと周りの兵士もじわじわと距離を縮めてきます。
「よし、やぁー。」
掛け声とともに剣を横に振り回します。
すると、また1人の兵士がなぎ倒されました。
「太郎、がんばれ。」
プーの助が声をかけます。
それに応えるように太郎は残りの兵士に向き合います。
しかし、ショウが太郎に叫びます。
「まて、このお姫様がどうなってもいいのか?」
花子を捕まえた兵士は、ショウの側にいつの間にか移動していました。
首もとには短剣がまだ突き付けられています。
太郎は手の力が抜けるのが分かりました。
垂れ下った手に握られている剣の光が、少しづつ弱まっていきます。
「このお姫様の命が惜しければ、剣を捨てよ。」
ショウは太郎に再度叫びました。
「太郎、言うことを聞くなよ。」
ベアが言います。
しかし太郎はすでに戦う気力が無くなっていました。
「僕には出来ないよ。」
そう呟いた太郎の手から剣が音を立てて地面に落ちました。
太郎が身動きできずにいる場所を離れた所から見つめてる影が二つあった。
その影はどうしようか迷ってるようでもあった。
「なぁ、梅子・・・。どうする?」
「うーん・・・。次郎はどうしたらいいと思う?」
「どうしよう・・・。」
この二人はDキング直属の家臣で、隠密行動を生業とする者の弟子たちである。
師匠からの厳命でこの場所を観察していた。
しかしこの状況になった途端に、何かしないといけないんじゃないかと気を揉んでそわそわしだした。
「やっぱり助けるべき?」
「じゃ、次郎が助けに行ってよ。私は師匠のところに行くから。」
「そ、それは・・・無理・・・。」
「無理って・・・。」
「梅子が助けて、僕が逃げ・・・いや、知らせに行くよ。」
「あっ、いま逃げるって行ったよね。」
「そんな事は言ってないよ!!」
そんなどうでもいいやり取りをしてると後ろから声が。
「お前ら誰だ!!」
その声に・・・
「しまった・・・逃げるぞ梅子!!」
そして、懐から小さな丸い玉を取り出して地面に投げつけた。
その玉が地面で弾けて大量の煙が発生する。
その隙に二人は姿を消したが・・・
「あ、痛っ。」
次郎は声をかけてきた男とぶつかったのだ。
しかしそれが幸いか、男は吹っ飛ばされて気絶してしまった。
「次郎何してるの?早く行くよ。」
「ま、待ってよ。」
二人は闇の中に消えていった。
暗闇を走る二つの影。
風の様な・・・いや、結構遅い走りである。
その影に近寄る新しい影。
「おい!!」
二つの影は思わず止まって声に振り返った。
次郎が大きな声で「師匠!!」と叫んだ。
「馬鹿か。声が大きいわ。」
「すみません。」
「やーい、怒られた。」
梅子が次郎を馬鹿にしたとたんに、二人の頭を師匠と呼ばれた男は叩いた。
「なぜ、お前たちはここにいるんだ。」
「えーと・・・」
「次郎が・・・」
また二人は叩かれ、師匠が言った・・・
「わしは太郎王子をそばから見守れって言ったはずだが。」
次郎と梅子は顔を見合わせてから師匠に顔を向け話しだした。
「僕たちは王子のそばにちゃんといました。」
「しかし王子達はW国のやつらに捕まってしまったんで、私たちは連絡に走ったんです。」
「だから・・・」
ここで3度目の拳骨を食らった二人は頭を抱えてうずくまってします。
「W国か・・・。やはりな。」
そうつぶやいた師匠は来た方向に走りながら二人に命令を下した。
「王子の下にもどれ!!」
次郎と花子はまたお互いの顔をみて、
「戻るか・・・」
「戻らないとね。」
二人は来た道をまた戻っていき、暗闇に消えていった。
師匠は走りながら・・・
(わかっていたけど・・・、まずいことになったな。)
と考えながら、Dキングのもとに急いだ。
師匠に戻るように言われた二人。
慌ててきた道を戻ります。
来た道をとんぼ返りする二人。
二人ともあの場所に戻るかと思うと気が重かった。
「どうなってるかな、梅子。」
「うーん・・・どうもなってないんじゃないかな・・・」
暗い気持ちのまま走ってると・・・
いつの間にかちょっと離れた横を同じスピードで走る者に気がついた。
それは人間よりも大きな何者かで、二人ともが知らない気を放っている。
「梅子・・・」
「しっ、黙って。」
二人はそのまま走り続けた。
しかし、二人を襲う気配はない。
まるで同じ目的地に向かってるよな感じである。
「何者なんだ?」
「わからないけど・・・私たちを襲う気は無いみたいね。」
しばらくいくと二人が先刻までいた場所に戻ってきた。
後ろから襲って兵士はまだ伸びている。
その兵士を乗り越え、太郎たちが見える場所にたどり着いた。
横を同じスピードで走っていた謎の物体はそのスピードを緩めずにそのまま進んでいった。
そして飛んだ・・・
「あっ!!」
「えっ!!」
二人が声を上げたのと同時に、その物体は太郎王子とショウ隊長がにらみ合ってるその真ん中に着地をした。
その物体の姿は、着陸した衝撃の砂埃に隠れてまだ見えない。
しかし、徐々に大きな影が現れてきた。
つづく・・・