デジタル販売の強化により、超高収益体質を実現したカプコン。改革を主導した辻本春弘社長は、データ活用で同社の経営が変わったと明かす。
あらゆるデータを全部取っていった
――2010年代半ばから、オンライン上でゲームをダウンロードしてもらうデジタル販売を強化してきました。どのような問題意識があったのでしょうか。
1つのタイトルをいかに広く長く売るかということに興味を持って取り組み始めたのが、2017年に発売した「バイオハザード7 レジデント イービル」から。従来はリテーラーが1年くらい店頭に並べてくれていたが、デジタルなら自分たちで売れる状況になるわけで、「いったいいつまで売れるんかな」と。
それまでは店舗でパッケージを売ってもらうビジネスモデルで、お願いしているリテーラーの方々は、店の棚を回転させて効率を上げるために、新作を短期間で売っていく必要がある。ゲームが浮き沈みの大きいビジネスだと言われ続けた根底には、そうした(リテーラーに依存した)商慣習があった。
それがプレイステーション4の時代から、ハードの機能をフルで活用するためにインターネットに常時接続するようになるという話を聞いた。書籍や音楽などほかの産業がデジタルによって効率のよいビジネスに切り替わっていく中で、ゲーム業界でもやっと既存ビジネスが180度変わるということを感じ取り、それを意識してゲームの開発や(デジタル販売、マーケティングなどの)準備を進めてきた。「世の中の時流に乗っかっていかんかったら、会社が潰れる」という思いもあった。
バイオ7は、昔のパッケージ販売のみの時代だったら、初動中心に200万本強くらいしか売れなかったはずだ。デジタル販売によって売り上げが落ちた段階でセールを入れるなどして、発売した期の販売本数は350万本を記録した。発売から7年経っても世界で売れている(2024年3月期の年間販売本数は130万本)。
――当時から、7年売れ続けるという確信があったのでしょうか。
いや、それはわからない。でも、「いつまで売れるか楽しみだな」と言いながら、データを全部取っていったわけです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら