三洋電機は2007年12月6日,ビデオ・カメラ「Xacti」シリーズの最新機種「DMX-HD1000」の小型・軽量技術を解説する記者発表を開催した。DMX-HD1000は,フルHD(1920×1080i)対応のビデオカメラとしては「世界最小で最軽量」(同社)。体積は272cc,質量は268gで,同年9月に発売された。小型化・軽量化のカギを握るのは,通常は複数のチップに搭載されている映像処理機能を「1チップ」に詰め込んだことにある。これにより,LSIそのものの体積・質量を軽減できただけでなく,LSIで発生する熱を逃がす放熱部品を大幅に削減できた。
DMX-HD1000が搭載するチップは「プラチナΣ(シグマ)エンジン」。メモリーバスを共有しながら動画(MPEG)と静止画(JPEG)を同時並列で高速処理できるのが特徴だ。1チップにできたのは,低電力/小回路規模/高圧縮を可能にする独自開発のH.264(MPEG-4 AVC)コーデックを採用したことが大きい。同コーデックでは,消費電力はフルHD対応で従来機種の2/3,回路規模は従来比で60%,圧縮率はMPEG-4比で1.5倍の約1/100を実現している。4GバイトのSDカードに45~60分の動画を記録できる。
同コーデックを可能にした主な技術は三つ。(1)動きベクトル探索の効率化(2)並列動き探索アーキテクチャの採用(3)最適符号量制御アルゴリズムの採用--だ。
(1)では,動きの小さいシーンと大きいシーンで異なる探索手法を取ることで演算量を削減した。動きの小さいシーンでは,探索対象がもともとあった位置を中心に周囲を探索。大きいシーンでは,直近の画像データからパンニングの方向と量を予測し,その周辺を探索する。
(2)でも独自手法を取り入れた。動きベクトルを探索する際,従来はマクロブロック(16×16画素)一つひとつを処理し,1本の回路でデータ転送をしていた。新手法では,並列方向に隣接するマクロブロック二つを同時に処理。データ転送に回路2本を使って転送することで,データ転送総量(バンド幅)を50%削減(H.264全体では30%削減)できた。
(3)は,画像に3次元(縦・横・時間)の相関分析を施すことで実現した。1枚の画像領域内に「動きの大きな部分」と「小さな部分」があるとき,通常は,動きの大きな部分に多くの符号量が費やされる。しかし,重要度の低い「背景」が動いていて,重要度の高い「人物の顔」があまり動いていない場合だと,重要度が高いにもかかわらず顔がぼけてしまう。同社によれば,まだらな模様がなく,かつ動きの小さいものの方が重要度が高いものが多い。同社は相関分析によってそうした領域を見つけ出し,そこにより多くの符号量を費やすことで,同じ符号量でも満足度の高い画質を得られるようにした。
また,手ぶれ補正処理では光学式ではなく電子式を採用した。電子式には,ジャイロセンサで得た角度情報から,静止状態を予想して補正する「画像復元式」,複数の画像を撮影して合成する「画像加算式」などがある。DMX-HD1000では画像加算式を採用。ジャイロを不要にしたことも小型化・軽量化につながった。