ガートナー ジャパンは,国内のPDAおよび携帯用小型パソコン市場の出荷実績を発表した(PDFの発表資料)。2006年の総出荷台数は,対前年比115.2%増の52万6000台。2002年以降,2ケタ台で減少し続けていた出荷台数が,4年ぶりに増加した。国内で出荷台数が50万台を超えたのは,2003年以来だという。
ガートナー ジャパンは,2006年の大幅な成長の要因を,通話機能付きのPDAの市場が国内で立ち上がったことだとする。この場合の通話機能付きPDAには,通話ができず無線LANのみを使用するPDAは含まれていない。2005年末にシャープが「W-ZERO3」を発売すると,この製品が一般消費者に普及して,通話機能付きPDA市場が立ち上がる端緒となった,と分析する。W-ZERO3の通話方式はPHS方式で,OSには米Microsoft Corp.の「Windows Mobile 5.0」を採用。640×480画素(VGA)の液晶パネル,パソコン向けのWWWサイトを閲覧するWWWブラウザー,スライド式で収納するQWERTY配列キーボードを備えており,端末価格は通信サービスの年間契約を含めて3万9800円程度だった。ガートナー ジャパンは,同水準のスペックを持つ従来のPDAに比べてW-ZERO3の価格が手ごろだったことと,通話とデータ通信サービスの利用料が比較的安価な定額制であったことが,出荷台数を急速に伸ばした要因とする。一方で,従来のPDAの出荷台数は縮小した。
2006年には,NTTドコモやソフトバンクモバイルからも通話機能付きPDAが発売された。NTTドコモは主に法人利用を狙って事業を展開している。しかし,法人の通話機能付きPDAの需要は,2006年の段階で,海外の既存顧客の日本における利用や一部の特定業務での利用など,限定的なものだとする。
メーカー別の出荷台数シェアを見ると,首位は63.0%のシャープ。前年から28.4ポイントシェアを伸ばした。出荷台数は対前年比291.8%増の33万2000台。シャープはW-ZERO3のほか,後継機種の「W-ZERO3 es」や従来のPDA「ザウルス」も販売しているが,2006年の出荷台数はW-ZERO3などの通話機能付きPDAが大きく伸びたという。
2位は,2006年に日本市場に新たに参入した台湾High Tech Computer (HTC)Corp.。2006年7月にはNTTドコモ向けに,10月にはソフトバンクモバイル向けに出荷を開始した。NTTドコモには,法人市場に特化した製品を出荷するが,ソフトバンクモバイルには消費者向けの製品を出荷している。2006年の出荷数は5万台で9.5%のシェアだった。
3位はシェア6.9%の台湾MiTac International Corp.。前年の7位から,シェアを3.2ポイント増加した。出荷台数は,対前年比301.4%増の3万6000台。2005年以降は,GPS機能を活用するナビゲーション・ソフト搭載のPDA製品を販売して出荷台数を伸ばしている。以下,シェア6.2%の米Hewlett-Packard Co.,6.0%のカシオ計算機と続く。
ガートナー ジャパンは,2007年の国内におけるPDAおよび携帯用小型パソコンの出荷台数を前年比6.2%増の55万8000台と見込む。2007年は,引き続き通話機能付きPDAの出荷が伸び,従来のPDAの出荷台数は減少していくとする。