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2024-11-24 (Sun)  08:35

【映画】『グッド・シリアルキラー』(2018年) 正義を語る殺人鬼。善と悪が交錯するその刃は、救済か破滅か──揺れる信念が世界を変える! | ネタバレあらすじと感想

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◆映画『グッド・シリアルキラー』の作品情報

【英題】Bloodline

【監督・脚本】ヘンリー・ジェイコブソン

【脚本】エイヴラ・フォックス=ラーナー、ウィル・ホンリー

【原案】ウィル・ホンリー

【出演】ショーン・ウィリアム・スコット、マリエラ・ガリガ他

【公開】2018年

【上映時間】97分

【製作国】アメリカ

【ジャンル】ホラースリラー

【視聴ツール】Prime Video、吹替

◆キャスト
エヴァン・コール:ショーン・ウィリアム・スコット
ローレン・コール:マリエラ・ガリガ
マリー・コール:デイル・ディッキー
デテクティブ・オーランド:ケビン・キャロル
キャロライン看護師:クリスティー・ハーリング
クリス・ウェルズ:レイモンド・アレクサンダー・チャム・ジュニア

◆見どころ
本作、『グッド・シリアルキラー』(原題:Bloodline)は、異色のサイコスリラーとして注目される作品です。この映画は、家族を守ることを至上の目的とする主人公が、内に秘めた狂気と道徳の境界線を問う物語です。その独特なストーリーと心理描写が、見る者を引き込む大きなポイントとなっています。
見どころ1:異色の主人公像
主人公エヴァン・コール(ショーン・ウィリアム・スコット)は、普段は冷静で献身的なソーシャルワーカー。しかし、彼の裏の顔は、家族を守るために犯罪者を容赦なく始末する冷酷な殺人鬼です。この二面性を描いたことで、エヴァンが“正義”と“狂気”の狭間で揺れる姿が強烈に印象づけられます。家族を守るための殺人がどこまで許されるのか、その線引きを観客自身に問いかける構成は、この映画の大きな魅力です。
見どころ2:サスペンスと心理劇の融合
映画全体を通じて、緊張感が漂います。犯罪者への処罰としての殺人と、エヴァン自身の心の中に渦巻くトラウマや欲望が交錯し、彼の心理的な変化が丁寧に描かれています。観客は彼の行動を非難する一方で、その動機に共感を覚えるジレンマを味わいます。このような感情の揺れ動きが、映画の緊張感をさらに高めています。
見どころ3:スタイリッシュなビジュアルと音楽
映像は暗いトーンを基調とし、主人公の内面的な暗さや隠された狂気を象徴しています。殺人シーンや追跡シーンは緻密に計算されたカメラワークで描かれ、視覚的なインパクトも抜群です。また、不安感を煽る音楽が物語を盛り上げ、観客を映画の世界に引き込む大きな役割を果たしています。
見どころ4:家庭と社会のギャップ
エヴァンが理想の夫であり父親としての顔を持ちながら、その裏で殺人を犯しているという設定は、家庭内の幸福と外部の闇が同居する物語の核心です。彼の妻や母親との関係性も複雑で、家族が物語にどのように影響を与えるのか、そして彼らの絆がどこまで続くのかに注目が集まります。
『グッド・シリアルキラー』は、単なるスリラーを超え、愛と狂気の狭間を描いたサイコドラマとして観る者に問いを投げかけます。その独特な世界観とメッセージ性が、他のスリラー映画とは一線を画し、忘れられない体験を与えるでしょう。

◆ネタバレあらすじ
本作、『グッド・シリアルキラー』(原題:Bloodline)は、家族愛と狂気が交錯するサイコスリラーです。主人公エヴァン・コール(ショーン・ウィリアム・スコット)は、表向きは献身的なソーシャルワーカーであり、完璧な夫であり父親。しかしその裏には、彼を駆り立てる暗い秘密が隠されています。本作は、彼の二面性と、家族を守るという名目の下で行われる残虐な行為が織りなす緊張感溢れる物語です。
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エヴァン・コールは、虐待を受けた若者たちを支えるソーシャルワーカーとして働いています。彼は一見、冷静で真面目な人物として周囲に信頼されていますが、その裏では暗い欲望を抱えています。彼の人生を支えるのは、妻ローレン(マリエラ・ガリガ)と生まれたばかりの息子アンドリューの存在。しかし、過去に受けた虐待が彼の中で燻り続け、正義という名のもとに暴力衝動を満たす機会を探しています。
エヴァンは、支援する若者たちから虐待や暴力を振るう加害者の話を聞くたびに、彼らへの怒りを募らせていきます。そして、自らの手で裁きを下すという行為に手を染めるようになります。彼のターゲットは、若者たちを傷つける大人たち――家庭内の虐待者や暴力的な親たちです。彼は冷酷な手口で彼らを捕らえ、命を奪うことで「正義」を実現しようとします。
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そんな彼の行動は、次第にエスカレートしていきます。彼は殺人を重ねるたびに自分の行動を正当化し、息子や妻を守るためには手段を選ばないという信念に囚われていきます。しかし、この信念の裏には、彼自身の幼少期のトラウマが深く関係していました。彼の母親マリー(デイル・ディッキー)は過去に厳格で支配的な教育を施し、その結果、エヴァンの中に抑圧された感情が蓄積されていたのです。
エヴァンの行動は、次第に妻ローレンにも疑念を抱かせます。彼女は夫が夜な夜などこかへ出かけていることに気付き始め、不審に思います。しかし、ローレン自身も新米の母親としての不安や葛藤を抱えており、夫に依存している部分が大きかったため、エヴァンの本性を疑う一方で、その真実に直面することを恐れていました。
さらに、エヴァンの周囲では殺人事件の捜査が進み、刑事オーランド(ケビン・キャロル)が犯人を追っています。彼はエヴァンの関係者たちから話を聞く中で、エヴァン自身が事件に関与している可能性を徐々に掴み始めます。エヴァンは捜査の目をかいくぐりながらも、自らの行動を止める気配を見せません。彼の「正義」としての信念は、すでに理性や道徳の枠を超えてしまっていたのです。
物語のクライマックスでは、エヴァンの行動が引き起こす連鎖が、彼の家族や周囲の人々に深刻な影響を及ぼすことが明らかになります。ローレンは夫の秘密に直面し、息子を守るために自分自身がどのような選択をすべきか悩む中で、家族の絆は崩壊寸前に追い込まれます。一方で、エヴァンは自身の信念を貫き通そうとする姿勢を崩しません。
『グッド・シリアルキラー』は、単なるスリラー映画に留まらず、家族愛や倫理観、そして正義の意味を問いかける深いテーマを持った作品です。観客は、エヴァンの狂気と愛情の入り混じった行動に魅了されつつも、その道徳性について考えさせられることでしょう。家族を守るためにどこまでの行動が許されるのか、その答えは観る者の心の中に委ねられます。
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エヴァンの愛と狂気が交錯するこの映画は、緻密な心理描写と視覚的インパクトに富み、観る者に強い印象を残す作品となっています。

◆考察と感想
『グッド・シリアルキラー』(Bloodline)は、単なるサイコスリラーに留まらず、家族愛、倫理、そして正義の境界を深く問いかける作品です。物語の中心にあるのは、主人公エヴァン・コールの二面性。彼は家族を守るために犯罪者に「裁き」を下す一方で、社会的には模範的な父親であり夫として振る舞います。この矛盾に満ちた主人公の行動や心理が、観客に複雑な感情を抱かせることが、この映画の最大の魅力と言えるでしょう。
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エヴァンの「正義」の意味
エヴァンが抱える「正義」とは、自己中心的で独善的なものでありながらも、彼自身の過去の虐待の経験や、守るべき家族の存在によって形作られています。彼の行動は、一見すると弱者を守るための正義感に基づいていますが、その裏には自らのトラウマを浄化し、精神的な解放を求める私的な動機が見え隠れします。
観客としては、彼の行為が道徳的に許されないものであることを理解しつつも、彼の被害者たちが虐待者や加害者であるという設定によって、ある種の「正当性」を感じさせられる場面があります。この「共感と反発の揺れ動き」が映画を観る際の大きな体験となり、エヴァンの正義が果たしてどこまで許容されるのかを観客自身に問いかけてきます。
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家族の絆と壊れゆくバランス
もう一つの考察のポイントは、家族の絆とそのバランスです。エヴァンが犯す犯罪の裏には、家族を守りたいという純粋な動機があります。しかし、その手段があまりにも暴力的で歪んでいるため、家族がその行動に気付いたときにどのような反応を示すかが興味深いテーマとして浮かび上がります。
妻のローレンは、エヴァンの行動に薄々気づいていながらも、新米の母親としての不安や孤独から彼に依存してしまいます。エヴァンの狂気的な愛情は、ローレンにとっては「理想の夫」であり続ける一方で、その愛が暴力に基づいていると知ったとき、家族の絆は崩壊寸前の危機に直面します。この二人の関係性は、観客に「愛とは何か」「家族のための犠牲とはどこまで許されるのか」を考えさせるものがあります。
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サスペンスの演出とビジュアルの魅力
映画の演出面でも考察に値するポイントが多々あります。映像全体を通して暗く不穏なトーンが支配しており、エヴァンの内なる狂気を巧みに映し出しています。特に、殺人シーンでは視覚的なインパクトと心理的な恐怖が同時に表現されており、彼の行為の残酷さと狂気をリアルに感じさせます。
また、音楽や音響効果も印象的です。不安感を煽る不協和音や静寂の使い方が、観客を映画の世界に引き込み、エヴァンの視点に寄り添わせるような効果を生んでいます。これにより、観客はエヴァンの内面に深く入り込みながらも、同時に彼を批判的に見る視点を失いません。
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感想:家族愛と狂気の交錯
『グッド・シリアルキラー』を観終わった後に残るのは、「家族のためにどこまでの行動が許されるのか」という問いです。エヴァンの行動は、彼の家族にとって結果的にプラスだったのか、それともマイナスだったのか。この疑問は明確な答えを持たず、観客自身の価値観や倫理観に委ねられています。
個人的には、エヴァンのキャラクターが持つ複雑さに非常に引き込まれました。彼の行動には反感を覚えつつも、幼少期の虐待や家族を守りたいという思いが見えることで、完全に否定できない部分も感じます。この矛盾こそが、この映画を単なるスリラー以上の存在にしている要因だと思います。
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最後に
『グッド・シリアルキラー』は、観客にエヴァンの狂気的な愛情と、それによって引き起こされる破壊の物語を通じて、人間の本質的なテーマを問いかけてきます。倫理、正義、家族愛といった普遍的な価値観が、主人公の歪んだ行動によって挑まれるこの映画は、観終わった後にも強い印象を残す傑作と言えるでしょう。




評価点   80点
お薦め度  78点


2018年  97分  アメリカ製作

 
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最終更新日 : 2024-11-24

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