2018-11-30(Fri)

秋篠宮の発言を支持します

私が「世の中なにかヘンだな」と思った最初の記憶は、幼い頃にテレビを見ていて「ひろのみやさま」という言葉を聞いたときでした。

他の人は「さん」づけなのに、なんで「ひろのみや」という人だけ「さま」なの? 「さん」とか「くん」とか「ちゃん」と呼ばれる人と、「さま」と呼ばれる人は、何が違うの? と幼いながらに思ったのでした。

時は流れ、「ひろのみやさま」と呼ばれていた人は皇太子になり、来年には天皇になるとか。
でも、いまだに なぜあの人は「さま」で、その他の人は「さん」や「くん」や「ちゃん」なのか 分かりません。

もうひとつ、天皇について「へえー」と思ったのは、小沢一郎さんが国会の開会日に天皇の「お迎え」に並ぶ理由です。
ちなみに、国会の正門は普段は固く締め切られており、主権者たる国民はもちろん、選挙の後の初登庁を除いては国会議員も両院の議長ですら通ることはできません。国会に正門から入れるのは、なぜか参政権のない天皇だけです。

それもおかしいなあと思っていたのですが、小沢さんが天皇をお迎えするのは、憲法に「天皇は国民の象徴」と書いてあるからなんだそうです。天皇に頭を下げるのは、主権者国民に象徴的に頭を下げること だと(ご本人からではないけど)お聞きしました。
なるほどねえ そういう考え方もあるんだな と「へえー」だっとわけです。

たしかに、護憲の方々も1条も9条もまもるのなら、そういう理屈になるよね。
安倍晋三がいくら9条嫌いでも守らなくちゃならないように、護憲派がいくら天皇制を嫌いでも憲法がある以上は1条も守らなくちゃならない理屈です。

私自身は護憲派じゃないので、1条は変えるべきだと思っています。今の天皇も皇太子も直接の戦争責任はないけれども、昭和天皇を免罪したのが象徴天皇制である以上、ケジメはつける必要があります。
だから、財団法人皇室博物館の館長になって、京都御所と江戸城の入場料を活用して、伝統文化を守っていってもらえばいいと思うのです。

しかしそのためには、日本人が日本人の頭で「憲法どうしようか」と議論できる国にならなければなりません。
実質植民地で、なおかつ実質独裁政権の今のような日本では、改憲は植民地と独裁を強めるだけで、百害あって一利無しです。


さて、天皇についてはそんな風に考えていた私の目から見て、話題沸騰の秋篠宮発言はどうみえるのか です。

大嘗祭 公費に異議 秋篠宮さま「宗教色強い」
東京新聞 2018.11.30

 秋篠宮さまは(略)、皇太子さまが新天皇に即位後の来年十一月に行う宮中祭祀(さいし)の「大嘗祭(だいじょうさい)」について「宗教色が強いものを国費で賄うことが適当かどうか」と疑問を呈し、皇室の私的費用の「内廷費」で対応すべきだとの考えを示した。政府は公費の「宮廷費」から支出する方針を決めており、皇族が公の場で、政府方針に異を唱えたのは極めて異例。 

 秋篠宮さまは会見で、「宗教行事と憲法との関係はどうなのかという時に、やはり内廷会計で行うべきだと思っています」と述べた。三十年前の平成の大嘗祭のときからの持論だったという。

(引用以上)

びっくらこいた政府は、案の定こんな話をしています。

秋篠宮さま発言、「憲法上問題ない」官房副長官
読売新聞 2018.11.30

 西村康稔官房副長官は30日午前の記者会見で、秋篠宮さまが皇位継承に伴う「大嘗祭だいじょうさい」に宮廷費(公費)を充てる政府決定を疑問視されたことに関し、「国政に影響を与えるものではないことから憲法上の問題は生じない」との認識を示した。
(引用以上)

なんで憲法上の問題とかの話になるかというと、憲法にはこう書いてあるからです。

第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。

国政で「大嘗祭は公費負担」と決めたのに、皇室がそれに異を唱えるのは憲法第4条に違反してるんじゃないか? という話です。
なるほど、そんな気もします。



しかし、憲法には こうも書いてあります。

第二十条 3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

「いかなる」と書いてある以上、「重要な伝統的皇位継承儀式」であろうがなかろうが、国はやってはいけない。
これは明確です。

東京新聞の記事に書いてある通り、30年前の大嘗祭の時には多くの人が国を訴えたのですが、裁判所は例によって憲法判断をしませんでした。
合憲です とは言わずに、逃げまくったわけです。まったく使えない最高裁です。

とにかく、最高裁も「合憲だ」とはさすがに言えないのが、宗教儀式である大嘗祭への公費投入です。

と、ここまでははっきりしていますが、今問題になっているのは、「いくら中身は正しくても、天皇や皇室が政府の決定に口を出していいのか」 ということです。
中身にかかわらず、皇室が政府に楯突くのは憲法4条に違反じゃないか という話についてです。

結論から言うと、私は今回のことに限っては、アリだと思います。
憲法4条には違反していない と言う考えです。

なぜなら、「天皇と皇室が違憲状態にされることに異を唱える権利」はあるのではないか と思うからです。
他のことではなく、「天皇が政治利用されて違憲になること」 だけは 天皇や皇室が反対する権利があるのでは ということです。

天皇は憲法1条でその存在を規定されています。
にもかかわらず、違憲状態になってしまったら、天皇はその存在基盤がなくなってしまいます。
天皇がみずから憲法の外に踏み出していくことを、憲法は固く禁じていますが、政府などが天皇を憲法の外に引っ張り出そうとするとき、それに唯々諾々と従うべきなのか、異論を述べるべきなのか という問題です。

大嘗祭に公費を投入することは、実は自民党の改憲案を先取りしているのです。
改憲案では、現行の20条3がこう変わっています。

20条3 国及び地方自治体その他の公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない

「範囲」などいかようにでも決められるので、現行憲法ではこのような但し書きはないのですが、現実は自民党草案の通りになってしまっています。
このように、正規の改憲という手続きすら踏まずに、政権与党の無理筋で天皇が現行憲法に違反した状態にされている。そのことに、皇室が反対することは、私は問題なし というか 当然だと思います。

繰り返しますが、現行憲法は天皇に対して「憲法違反」は固く禁じていますが、「憲法違反」を拒否することは禁じていません。

第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。


尊重し擁護する義務があるのですから、同じ義務を負っているはずの国務大臣や国会議員や裁判官が、「天皇を憲法違反にしてやるぞ!」と言ったら、「やめろ」というのは当然だと思うのです。
文科省が子供たちに「天皇のために国を守れ」と言い出したら「それは違う」と言うべきだし、自衛隊が「天皇のために死ね」と命令したら「バカなことを言うな」と言うべきです。
それは、天皇の国政に関する権能ではなく、国政に関わらないための拒絶にすぎません。



個人的には秋篠宮という人には あまり好感はもっていませんし、そもそも皇室に税金を使われることには、憲法に書いてあるから泣く泣く認めてるのが 私のホンネです。

そんな私ですが、今回の秋篠宮の発言は支持します。

彼の発言は、憲法違反ではなく、憲法違反を拒否しているのですから。



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