2011-07-11(Mon)
山本宣治と松本治一郎
戦前の政治家というと、山本宣治と松本治一郎を思い起こす
山本宣治のことを知ったのは、このブログのサイドメニューにもある、羽仁五郎の「自伝的戦後史」の中だ。
羽仁五郎さんは、山宣を暗殺の凶刃から守れなかったことを、日本の歴史として悔いている。
山宣の立場であれば、右翼に狙われているのはわかっているのに、神田の旅館に一人にさせていた日本人の不甲斐なさを強烈に反省している。
こういう国会議員が戦前にもいたと言うこと、そして暗殺されてしまったことを反省するという視点に、当時高校生だった私は、衝撃を受けた。
「実に今や階級的立場を守るものはただ一人だ、山宣独り孤塁を守る! だが僕は淋しくない、背後には多くの大衆が支持しているから」 という暗殺直前の演説はあまりにも有名。
だが、重要なことは、この演説に感動することではなく、この演説はここで中止させられているということであり、その直後に暗殺を許してしまったと言うこと。
今の時代を生きる私たちは、そのことを胸に刻まなくてはならない。
■■
戦前から戦後にかけての政治家で、もう一人印象の強烈な人がいる。
いわゆるカニの横ばい事件で有名な 松本治一郎だ。
部落解放運動の闘志の顔、九州やくざの顔、戦前の衆議院議員の顔、戦後の参議院議員の顔、と多くの顔を持つ。
そして、その全てが一人の松本治一郎という人なのだろう。
彼の経歴で、何よりも有名なのは、カニの横ばい事件。
戦後初の参議院副議長に就任したとき、その就任式で史上初めて天皇にお尻を向けて歩いた という「事件」だ。
今ならば、何が事件なの? てなものかもしれないが、つい先日まで神だと言われていた天皇に、さっさと尻を向けて歩き去るというのは、驚天動地だったわけだ。
今だって、園遊会とか言うと、自称ロックンローラーまでが背広を着てヘラヘラと出かけていく。
天皇に面と向かって、取引先の社長と話すように会話できる人が日本中に存在するだろうか?
しかし松本治一郎は、「貴族あるところ賤族あり」と喝破して、天皇を神ではなくフツウの人として扱ったのである。
そしてその感性は、当時の国民感情とも合致して、松本治一郎の名を不動のものにした。
■■
この松本治一郎の養孫である松本龍が、一瞬にして復興大臣から引き下ろされた。
マスメディアのみならず、マスメディアの害悪を知り尽くしている人たちまでが、松本龍を叩きまくった。
しかし、被災者を食い物にして復興利権をむさぼろうとしているのは、宮城県知事の村井のほうであり、そのバックにいる、日米利権集団だ。
日米利権集団は、私の妄想でも何でもない。
米戦略国際問題研究所(CSIS)と日本経団連によって「復興と未来のための日米パートナーシップ」という組織を作り、巨額の復興利権を吸い尽くすための準備をしている。
代表はボーイング社のCEOであり、主要メンバーはリチャード・アーミテージ元国務副長官、マイケル・グリーン元大統領特別補佐官など。
村井知事は、日本の国会においてアメリカ利害を代表する前原誠司の子分であり、野村総研などの東京の大資本の言うなりで、地元の意見は入れないと公言し、実際に水産特区などの地元漁民切り捨て策を、着々と進めている。
松本龍の言動を見ると、明らかにこうした利権構造にたいして、自爆攻撃をしかけたと思われる。
松本龍の普段の様子を伝え聞くと、ますますその思いは強い。
しかし彼の捨て身の攻撃は、養祖父のカニ事件のような効果はもたらさなかった。
松本ドラゴンがもし責められるとしたら、暴言ではなく、攻撃の失敗によってである。
■■
部落差別は、無くなったわけではない。
10年ほど前、私の親しい友人も、差別の中で煩悶しながら病魔に冒され亡くなった。
部落解放同盟という組織が、利権集団になってしまったという側面は確かに否定できない。
亡くなった友人も、それは批判していた。
「人の世に熱あれ 人間に光あれ」という水平社宣言が、今の部落解放同盟にどれほど生きているのか、これは組織にいる人にとっても、非常に悩ましい問題だろう。
しかし、かの友人の生き様をみるにつけ、やはり差別はなくなっていないということは断言できる。
そういう世の中で、利権であろうと何であろうと、生きるための手段を部落解放同盟という組織が確保しているという側面もまた、真実なのである。
相矛盾した苦しい現実を前にして、一方だけを無いものにして好き放題言うことは許されない。
松本ドラゴンの「暴言騒動」も、あのように報道された背景には、必ず部落差別というものがある。
あるからこそ、だれもそれを口にしない。
今の日本の権力構造の中で、部落差別がないわけがない。
被差別部落出身者としてもっとも権力中枢に近づいた野中広務ですら、自民党内外での差別を浴び続けてきた。
エリート意識の塊であるマスメディアが、決して口に出さずに部落出身者としての松本龍を叩いていたことは、私の中では間違いない事実である。
■■
人生が100年あったとしても、ついに半分を迎えてしまった。
普通に学校に行って、普通に就職するというパターンと比べると、何倍もの時間を生きてきたような気もする。
いろんな問題にぶつかりながら、なんとかここまで生きてこれたのは、まるで奇跡。
まして、私が家庭をもって子どもを育てているなんて、自分でも信じられない。
とか言いながらも、子どもはどんどん育ち、多くの問題にぶつかりながら自分の生を生きていく。
その節々に、お父さんはどうして○○なの? と聞かれたときに、何か伝えられるようにだけはしておきたい。
原発のことも戦争のことも差別のことも政治のことも、やがて子どもの前で後悔しないようにしたい。
人に何かを強制することはしないけれども、私は納得できるように、これからの後半戦(?)を生きていきたい。


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山本宣治のことを知ったのは、このブログのサイドメニューにもある、羽仁五郎の「自伝的戦後史」の中だ。

山宣の立場であれば、右翼に狙われているのはわかっているのに、神田の旅館に一人にさせていた日本人の不甲斐なさを強烈に反省している。
こういう国会議員が戦前にもいたと言うこと、そして暗殺されてしまったことを反省するという視点に、当時高校生だった私は、衝撃を受けた。
「実に今や階級的立場を守るものはただ一人だ、山宣独り孤塁を守る! だが僕は淋しくない、背後には多くの大衆が支持しているから」 という暗殺直前の演説はあまりにも有名。
だが、重要なことは、この演説に感動することではなく、この演説はここで中止させられているということであり、その直後に暗殺を許してしまったと言うこと。
今の時代を生きる私たちは、そのことを胸に刻まなくてはならない。
■■
戦前から戦後にかけての政治家で、もう一人印象の強烈な人がいる。
いわゆるカニの横ばい事件で有名な 松本治一郎だ。

そして、その全てが一人の松本治一郎という人なのだろう。
彼の経歴で、何よりも有名なのは、カニの横ばい事件。
戦後初の参議院副議長に就任したとき、その就任式で史上初めて天皇にお尻を向けて歩いた という「事件」だ。
今ならば、何が事件なの? てなものかもしれないが、つい先日まで神だと言われていた天皇に、さっさと尻を向けて歩き去るというのは、驚天動地だったわけだ。
今だって、園遊会とか言うと、自称ロックンローラーまでが背広を着てヘラヘラと出かけていく。
天皇に面と向かって、取引先の社長と話すように会話できる人が日本中に存在するだろうか?
しかし松本治一郎は、「貴族あるところ賤族あり」と喝破して、天皇を神ではなくフツウの人として扱ったのである。
そしてその感性は、当時の国民感情とも合致して、松本治一郎の名を不動のものにした。
■■
この松本治一郎の養孫である松本龍が、一瞬にして復興大臣から引き下ろされた。
マスメディアのみならず、マスメディアの害悪を知り尽くしている人たちまでが、松本龍を叩きまくった。
しかし、被災者を食い物にして復興利権をむさぼろうとしているのは、宮城県知事の村井のほうであり、そのバックにいる、日米利権集団だ。
日米利権集団は、私の妄想でも何でもない。
米戦略国際問題研究所(CSIS)と日本経団連によって「復興と未来のための日米パートナーシップ」という組織を作り、巨額の復興利権を吸い尽くすための準備をしている。

村井知事は、日本の国会においてアメリカ利害を代表する前原誠司の子分であり、野村総研などの東京の大資本の言うなりで、地元の意見は入れないと公言し、実際に水産特区などの地元漁民切り捨て策を、着々と進めている。
松本龍の言動を見ると、明らかにこうした利権構造にたいして、自爆攻撃をしかけたと思われる。
松本龍の普段の様子を伝え聞くと、ますますその思いは強い。
しかし彼の捨て身の攻撃は、養祖父のカニ事件のような効果はもたらさなかった。
松本ドラゴンがもし責められるとしたら、暴言ではなく、攻撃の失敗によってである。
■■
部落差別は、無くなったわけではない。
10年ほど前、私の親しい友人も、差別の中で煩悶しながら病魔に冒され亡くなった。
部落解放同盟という組織が、利権集団になってしまったという側面は確かに否定できない。
亡くなった友人も、それは批判していた。
「人の世に熱あれ 人間に光あれ」という水平社宣言が、今の部落解放同盟にどれほど生きているのか、これは組織にいる人にとっても、非常に悩ましい問題だろう。
しかし、かの友人の生き様をみるにつけ、やはり差別はなくなっていないということは断言できる。
そういう世の中で、利権であろうと何であろうと、生きるための手段を部落解放同盟という組織が確保しているという側面もまた、真実なのである。
相矛盾した苦しい現実を前にして、一方だけを無いものにして好き放題言うことは許されない。
松本ドラゴンの「暴言騒動」も、あのように報道された背景には、必ず部落差別というものがある。
あるからこそ、だれもそれを口にしない。
今の日本の権力構造の中で、部落差別がないわけがない。
被差別部落出身者としてもっとも権力中枢に近づいた野中広務ですら、自民党内外での差別を浴び続けてきた。
エリート意識の塊であるマスメディアが、決して口に出さずに部落出身者としての松本龍を叩いていたことは、私の中では間違いない事実である。
■■
人生が100年あったとしても、ついに半分を迎えてしまった。
普通に学校に行って、普通に就職するというパターンと比べると、何倍もの時間を生きてきたような気もする。
いろんな問題にぶつかりながら、なんとかここまで生きてこれたのは、まるで奇跡。
まして、私が家庭をもって子どもを育てているなんて、自分でも信じられない。
とか言いながらも、子どもはどんどん育ち、多くの問題にぶつかりながら自分の生を生きていく。
その節々に、お父さんはどうして○○なの? と聞かれたときに、何か伝えられるようにだけはしておきたい。
原発のことも戦争のことも差別のことも政治のことも、やがて子どもの前で後悔しないようにしたい。
人に何かを強制することはしないけれども、私は納得できるように、これからの後半戦(?)を生きていきたい。


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