アニメ・コミック

2009年11月18日 (水)

DARKER THAN BLACK 流星の双子 ep6 「香りは甘く、心は苦く・・・」感想

続けて感想。

この回は心理劇としては文句なしです。蘇芳と黒の関係がグラッと変化する様も良いし、ノリオに「契約者は人を殺しても平気なのか」となじられる場面はかつて蘇芳自身が発した言葉を思い出させます。

しかしアクション作品としてみると気に入らない点がいくつかあります。

・移動時間、距離感

一番気になったのがこれです。葉月が蘇芳達に追いつく前にマオと黒が合流していますが、これは無理な気がします。黒が囮に引っかかった地点から港までの距離は分かりませんが、風景が違うこと、敵を分断する意図が有っただろうこと、を考えると多分車で十数分程度の距離でしょう。一方、蘇芳達から潜水艦までは2,000mですから葉月のボートが対岸に到着する方が黒の帰還より早いのではないでしょうか。マオに関してもボートを操縦している葉月より隠れていたマオの方が早く合流できるのは不自然です。追いついた後の葉月も本来の目標であるイザナギ(紫苑or蘇芳)ではなく黒の方を追いかけるのは何故なのか。

いっそのこと蘇芳のPTRDで海上のボートを狙撃すれば足止めになったんじゃないかと・・・

・潜水艦には大きなものは積めない

潜水艦への物資の搭載は前後のハッチもしくは艦首にある魚雷搭載用の小さなハッチからしか行えません。これは耐圧殻の開口部が限られているためで、作中で出てきたような観音開きの大きな扉を付けることはありません。米軍がやっているように甲板上にタンク状の水密チャンバーを背負わせてやれば良かったのにと思います。

http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2006/2006/html/i1210000.html

http://www.ships-net.co.jp/detl/199910/ssnj.html

PTRDを手すりに載せて構える

銃を手じかなものにレストすると言うのは正解です。また、手すりの下にクッションをかませて安定させるのも正解。このクッションは第一話で蘇芳が木の上で望遠レンズを安定させるのに使っていたピンクの変なヌイグルミなのもナイスです。

でも手すりの高さが低すぎないでしょうか?以下の二枚を見比べるとおかしいことに気がつきます。

http://blog-imgs-41.fc2.com/3/4/6/346zakki/cp091115-dtb06-a03.jpg

http://continue.blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_991/continue/hey2-2eff2.jpg

落下防止の手すりはふつう100110cm位でみぞおちから胸の高さあたりです。一方、片膝ついて鉄砲を構えると(立った時の)おへその高さくらいになります。小柄な蘇芳では70cmくらいだと思うので、あの姿勢で構えることは困難なのです。

それと金属の手すりと言うのは共振しやすいので、望遠レンズや狙撃銃を載せる台としては今一つ信頼できないことが多いです。PTRD17kgもあり、伏せ撃ちでも反動で本体が65mm後退しますから、やわな手すりではとても安定しないでしょう。

・コンビニは危険

コンビニのレジには防犯カメラがあります。オンラインで警察がリアルタイム監視しているケースはまだ少ないと思いますが、治安機関から逃げ回っている黒と蘇芳が一緒にコンビニにやってくるのはまずいでしょう。

・黒が飛び乗ったワゴン車の走る方向

黒が戦っている道路からみて正面の道路から来たはずの車が右から左へと通り過ぎるのは何故か?

・折れた腕が治っている

ノリオの友人の太った男の子ですね。前回のけがはどう見ても肘の脱臼か前腕の複雑骨折で一週間やそこらでギブスもテーピングもなしで済ませられるものではないはずです。

全体として、コンテ段階でのチェックもれが多い回だと思います。

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Draker Than Blackに登場するPTRD(デグチャレフ対戦車ライフル)に関するメモ

以下はDarker Than Black 流星の双子に登場するデグチャレフ対戦車ライフルPTRDに関するメモ。

・腰だめ射撃はできるか?

反動がきつくて手首を痛めるだろうと言うのは置いておくとしても、どうも腰だめ射撃をすると自動排莢機構が働かないようだ。

下記アドレスに図解がある。

http://www.ww2aircraft.net/forum/ww2-general/antitank-rifles-mgs-1930-1945-a-7069-2.html

簡単に言うと、銃全体が反動で後退してショルダーストックにめり込むように動いて、ストック右上に突き出している台形の鉄板にボルトハンドルがぶつかってロック解除する機構のようだ(なんて野蛮な!)。ボルト自体が飛び出すのは多分慣性力によるのだろう。だから腰だめではストックに力がかからないのでただのボルトアクション単発になってしまう。

まぁ、そもそも対戦車兵器と言うのは周辺への危険(リコイル、ブラスト、破片など)が多いので正規の射撃姿勢以外をとるのはやめた方が無難だ。

・スコープマウント

スコープはちょっと問題で、アニメの設定ではスタンダードのオープンサイトの位置にプレートを溶接したものだが、これはどうも間違っているようだ。

銃全体が何センチか後退する作りだから、あの位置にスコープに付けていると、ぶっ放すと同時にガツンときて目の周りにパンダマークを作ることになる。これはとても恐ろしい。

この件は、下記アドレスの写真で判明した。

http://img369.imageshack.us/img369/1923/32836411un7.jpg

グリップ基部右側(ただし構造的にはストック側)からプレートが伸びてレシーバーをぐるりと巻いているようだ。

・長距離射撃精度と有効射程

精度について言うと、PTRS(シモノフ対戦車ライフル)のガスピストンなどの複雑な機構が無いPTRDの方が銃身の余計な振動が少なくて有利じゃないかと思う。それとストックの伸縮機構がクッションになるので反動がマイルドなのだろうと思う。PTRSだと弾丸が銃口をでるまでボルトとレシーバーは勘合しているので反動がガツンときて肩に青痣を作りそうだ。(そう言う場面が有ってもよかったかもしれない。蘇芳がお風呂で肩の青痣を気にしてる場面とか・・・これは漫画版パトレイバーに有ったけど。)

長距離射撃時の精度上の問題となりやすいのはたぶんバイポッド(二脚)のガタつきだ。GUN誌のTurk氏がしばしば指摘しているのによると、二脚は問題を起こしやすいのでできればサンドバックかバックパック上に銃を置いた方が良い、のだそうだ。肩あてから二脚まで1mで二脚のガタが1mmとしても、2000m先を狙うと2,000mm狂うから、銃を設置する地面の状態には特に神経を使う必要がありそうだ。その他にも連射すると重心の温度上昇で着弾点が狂うとか、いろいろややこしいことが有るらしい。

カートリッジの性能だけで言うとたぶん2000mでも有効射程だろうが、大戦中はオープンサイトで動く戦車のペリスコープやキャタピラを狙っていたそうで、本来の有効射程は2-300mが良いところだったのだろう。

・スポッターの役割

もうひとつよく考えているなぁと感心したのはジュライの存在だ。ゴルゴ13と違って実際の狙撃と言うのはシューターとスポッターの二人で行うのが普通らしい。スポッターの仕事は、目標観測、着弾観測、外した場合のバックアップ、急襲された時の対応などに加えて照準修正計算を手伝う場合もあるようだ。

照準の計算と言うのがえらく面倒で、距離、高低差、風速、風向、温度、湿度、陽炎の影響などを考慮して照準修正量を計算しそれをMil値(スコープの目盛数)に換算しなければいけない。このために、双眼鏡のほかにレーザー測距機、風速計、弾道計算プログラムをインストールしたPDA等を駆使する。ターゲットが予定距離と別なところに現れるとか、気象条件が急変するとかの事態になると、あわてて再計算を行い場合によるとスコープの調整が必要になる。(この辺の様子はGUN誌の“スナイパーズチャレンジ”記事が興味深い。)

どうやらMI6はドールに射撃管制機能をプログラムしているらしくて、こう言ったややこしい仕事を全部やってくれて暗算結果を口頭で指示してくれる。ライフルマンにとってこれはもうドラエモンのような存在だ。

Milドットについては下記アドレス参照

http://www.shootingtips.com/NewFiles/article/Leupold%20Tactical%20acope%20&%20Mil%20dot/Leupold%20Tactical%20Mil%20dot.html

MI6PTRDのデータまで持っていたかどうかは不明だが、射撃練習を行ったのは蘇芳の特訓であると同時に、ジュライへのデータ入力とキャリブレーションでもあったのだと考えると納得がいく

ここまでやったのだからついでにジュライに装填手をやらせてもよかったかも知れない。大戦中のソ連軍ではPTRDは二人ひと組で運用していたそうだ。17kgの重さも二人で運べば何とかなったろうし、単発自動排莢の欠点も装填手がタマ込めを担当することで補えたそうだ。

まあ細かいツッコミよりも、ここまで調べ上げて作画したスタッフの努力の方を評価すべきなのは言うまでもない。PTRD以外にもFSBの使っているVSSKEDRなど気になる銃が満載だ。面白い物語というのは、「小さな真実を沢山並べておいて、大きな嘘を一つつく」だと思うが、DTBのスタッフはこの辺が良く分かっているなあと感心するようなディテール描写だ。

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2008年12月31日 (水)

メメントモリ攻略戦の科学考証

ツッコミばかり書いていると思われると嫌なのですが・・・

ガンダムOO#13“メメントモリ攻略戦”なかなか面白かったです。衛星兵器破壊ミッションと言うのは古くはヤマトやスターウォーズからseedまで定番シチュですが、さすがにサンライズの看板番組だけあってきっちりと作りこまれています。

が、しかし、間違っているのです。1stシーズンの冒頭でも言っていた様に、低軌道リングは無重力ではなく外へ飛び出せば落っこちしまうはずなのに、アロウズの宇宙艦艇とMSはメメントモリのすぐ脇でフワフワ浮いています。実際にはこの高度(地上から10,000km)に居続けたいならば、地球の引力と遠心力が釣り合うような速度で動いて居なければいけません。

ちょっと計算してみましょう。理屈は簡単、「引力は物体の質量に比例し距離の自乗に反比例する」「遠心力は半径に比例し角速度の自乗に比例する」です。定数はWikipediaから探してきました。

低軌道リングの地表からの高度

Hr

10,000

km

地球の質量

M

5.97E+24

kg

万有引力定数

G

6.67259E-11

m^3*s^-2*kg^-1

地球の赤道半径

R

6,378

km

地球の中心から低軌道リングまでの距離

r = Hr+R

16,378,000

m

重力加速度

g = MG/R^2

1.49

m/s^2

軌道速度(遠心加速度と重力加速度が等しくなる速度)

v = √(a*r)

4,933

m/s

軌道リング座標系の速度(地球の自転に伴う周速度)

vr = Hr*3.14*2/(24*60*60)

1,190

m/s

軌道リングに対する相対速度

v-v

3,743

m/s

計算結果は、軌道リングの位置での地球の引力(重力加速度)は約0.14G、この高度を回る衛星の速度は毎秒4,933m、対地速度は毎秒3,743m(時速に換算すると13,475km/h、およそマッハ13.5)になります。

つまり軌道リングの高度に居たければ、地球に向けてロケット噴射をするか、または(軌道リングの座標系で)西から東に向かってマッハ13.5で(東から西ならばマッハ22)でぶっ飛んでいかないといけないわけです。

だから、メメントモリ周辺で待ち構えるアロウズ艦隊に対して高速で突進するトレミー、と言う図式はあり得ません。アロウズ艦隊は速度を落とせば地球に向かって落下しますし、トレミーの方は速度が上がれば軌道半径が増大して地球から段々離れていきます(上昇するとも言う)。宇宙空間では高度、方向が同じ軌道で速度だけが異なると言うのは無理で、一瞬軌道が交差して離れていってしまうだけなのです。

それと画面上でのトレミーの動き、マッハ13に見えたでしょうか?私には鉄橋の上を通過する暴走特急くらいにしか見えません。毎秒3,700mで接近するのですよ、「がんばってロックオン」「よっしゃぁ狙い打つぜ!」などと悠長な会話をしている間に通り過ぎてしまいます。右から飛んできたダブルオーと左から飛んできたガデッサがチャンバラしていましたが、このまま衝突したら刹那はペッチャンコですよ。マッハ13から減速するなんて大変なことをやっているように見えましたか?

と言うことでSFアニメの絵コンテを切る人は、高校の物理学の教科書をひっくり返して勉強しないといけないんですね。大変だぁ。

受験生のかたで(サボっていて)これを見た人がいたらちょっと頭の体操に使ってみてください。物理の試験で類似問題が出たらばラッキーってことで・・・・

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2008年8月19日 (火)

スカイクロラ 視界と機動の件

La5様へ

(長くなったのでコメントではなく独立の記事にしました)

実は私も同じことを感じながら見ていました。

まず散華の視界の件ですが、確かにBf109に似た太い前部キャノピー枠と妙に幅広のメータパネルフードのせいで、前方視界(特に三角窓を通してみる斜め前下方視界)が悪そうです。また、Fw190に似たキャノピーなのに胴体側面に食い込むような形にはなっておらず側方斜め下の視界を軽視しているように見える点も気になります。

しかしよく考えてみると散華はエンテですから前下方視界は良好ですし、3車輪式の場合タキシングや離着陸の際に機体は水平に保たれるので事が多いので、斜め前下方視界はそれほど重視しないでも良いのかもしれません。またコックピットが主翼より前方にあるので空中での下方視界もそう悪くないと思います。

着陸に関して言うと、機体を水平に保ってゆっくりと着地する接線着陸を行う場合、機首を持ち上げて減速する三点着陸に比べて着陸距離が長くなる可能性があります。このため、何かエアブレーキみたいなものを使用するか、長い滑走路をいっぱいに使うかと言うことになるわけです。映画の中で、散華がハンガーに近づいてくる場面ではプロペラを逆ピッチにして後退しているように見えたのですが、もしそうだとすれば、着地後に逆ピッチを切替えてスロットルを開け、プロペラをスラストリバーサみたいに使って減速するのかもしれません。

以上のような事を考えながら映画を見ていたため、パイロット視点やチェイサー視点の離着陸場面などを用いて、細かな描写がなされていればもっと良かったなぁと考えた次第です。

散華の初期スケッチでは最終稿よりもキャノピーが大きく丸っこいデザインがあったようですから、これも「もっと尖ったデザインにするように」と言う監督オーダーがあったのかもしれません。散華のコンセプトは繊細で非常にコンパクトな機体ということみたいですが、キャノピーを大きくすればコンパクトさは簡単に強調できる代わりにユーモラスでかわいいデザインになってしまいます。スパルタンな感じを出すためにあのキャノピーデザインになったのではないでしょうか。

また、自動車の例でも分かるように、キャノピー(サイドウィンドウ)下端の線をどう引くかはデザインの好みが強く現れる部分です。また、単座航空機の場合胴体幅にも依存します。例えばフォッケウルフFw190の場合、コックピットが前方にあった初期試作機ではキャノピーの側面形は普通の形ですが、コックピットを後方へ移動した後期試作機以降ではキャノピーが胴体に深く食い込んだ様な形に代わっています。散華のコックピットは震電よりは前、現代ジェット戦闘機よりは後ろ、の微妙な位置にあります。ここは胴体幅は狭いがラインが前下がりになっているので、Fw190のようにキャノピーの食い込みが目立つ形にはならないのですが、実際の側下方視界は結構良いのではないでしょうか。

次に、運動エネルギー重視の戦術と言う件。「危機一髪を減速機動で一挙逆転」と言うのはトップガンから最近はマクロスFまで、戦闘機アクションではおなじみの演出ですね。これは一対一の決闘であればまあOKですが、現実の空中戦は多対多なので愚策とされているわけです。その意味で言うと、冒頭の空中戦場面は減速機動にいたるまでのエクスキューズがちゃんとなされていたので許容範囲だと思います。

・ 散華①の後方にスカイリーが襲い掛かる

・ 援護の散華②がスカイリーの後方に回り込む

 ・ スカイリーが減速機動で逆転、散華②を撃墜

問題はむしろ、後半のエピソードで草薙とユーイチがそれぞれ単騎でティーチャーに挑むことのほうにあるのではないでしょうか?手ごわい相手であればこそ、複数機で有利に戦うのが空中戦の定石のはずですから、エース級の二人がそろいもそろってセオリーを無視して単独空戦を挑んで自滅するのは少し無理があります。

作戦後のミーティングでスカイリィの動きを「ハーフループ(ハーフロール?)からスナップ気味に・・・」みたいに説明をしていたと記憶しています。これがどんな機動なのか今ひとつ分かりませんが、変形のバレルロールなのでしょうか?また、パンフレットを見るとユーイチが用いたストールターンの解説が出ていますが、これは通常のハンマーヘッドターンの途中で180度ロールして敵機の後方につくもののようです。これらは「単純な減速機動ではなくて、立体的な機動で運動エネルギーを温存しつつ敵機をオーバーシュートさせているぞ」と言う演出上のエクスキューズですが、そうまでして「必殺技で一挙逆転」にこだわる必要が有ったのかどうかは疑問です。

チャック・イェーガーの空戦記には「後方からドイツ機に襲い掛かられたのをバレルロールでかわし、フットバーを蹴る(回転を止める)と同時に1連射で撃墜」と言う場面が有るそうです(「音速への挑戦」(加藤寛))。こういったことはたまたま混戦状態の中で一瞬起りうることですが、冒頭の空中戦場面にはそういったスピード感があるのに対して、最後の空中戦場面は剣豪小説の一騎打ちのごとく「数度の打ち込みで追い込まれた後、必殺技で最後の勝負・・・」と言った流れになっている事がいささか不満でした。

F4Fvsゼロ戦とかメッサーシュミットvsスピットファイアの場合、運動エネルギー重視の戦術と旋回角度重視の戦術の違いを分かりやすく表現できますが、スカイリィと散華の場合、飛行特性の違いがはっきりせずどちらも高速型の機体のように見えます。

設定によるとスカイリィは「凶暴なパワーをもつ怪物」で散華は「きわめてコンパクトで繊細だが暴力的な性能を秘めている」(?)だったと思います。私のイメージではスカイリィ=グッドイヤーF2G、散華=Yak-3と言ったところでしょうか。まるでヘビー級vsフェザー級の対戦ですが、スペックを良く見ると翼面荷重と馬力荷重はそんなに極端には違わないです。こういったケースだと、双方ともエネルギー重視の戦術を用いつつ微妙な飛行特性の差を利用して優位を取ろうと駆け引きを行うことになり、分かりやすく差を表現することは難しいだろうなぁと思います。

(参考)

F2G (*1)

Yak3 (*2)

全長×全幅(m

10.31 m × 12.49 m

8.50 m × 9.20 m

全備重量(kg

6,054 kg

2,692 kg

エンジン

P&W R-4360

クリーモフ

VK-105PF-2

排気量(L(*3)

71.6 L

36.05 L

出力(hp)/高度(m

3000 hp

(緊急3650hp)

1240 hp/?m

翼面積(m^2

29.17 m^2

14.85 m^2

上昇率(m/min

1,342 m/min S.L.

1,111 m/min

(以下は計算値)

翼面加重(kg/m^2

207.5 kg/m^2

181 kg/m^2

馬力荷重(hp/kg

0.496 hp/kg

0.460 hp/kg

翼面馬力(hp/m^2

102.84 hp/m^2

83.50 hp/m^2

出展:

*1: ヴォートF4Uコルセア エアロ・ディテール25

*2: http://ja.wikipedia.org/wiki/Yak-3

*3:  航空ピストンエンジン(ビル・ガンストン)

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2008年8月10日 (日)

スカイクロラ ~印象かディテールか?~

スカイクロラ見てきました。

映画館へ行ったのは何年ぶりだろう?僕は目が悪いので暗くて遠い画面は正直しんどいのだが、音響はさすがだった。家のショボいスピーカーやヘッドホンとは全然違う。

この作品は音響にかなり気を使ったそうだけど、それがよくわかった。たとえばユーイチが草薙に向かってピストルをぶっぱなす場面、バンという破裂音が強烈で、そのあと右の方で薬きょうが転がるチリンチリンという音がしばらく続いているのが印象的だった。我が家のオーディオも見直さなくては。

内容は・・・、なんて言うのかな、「きれいだけどちょっと頽廃的だなぁ」です。

「完全な平和が実現された世界のショーとしての戦争」と言うのは甘すぎると思う。ガンダムOOの「エネルギー問題は解決したけど戦争はなくならない」と言う設定に対するのと同じようなことを感じた。

21世紀初頭現在の人類はむしろエネルギー・資源・水・食糧・居住空間などを奪い合う悲惨な戦いに陥る際のところに居る。

「争う必要もないのに戦争が続く(戦争は人類の宿命)」と言う悲観的な話ではなくて、「生きていくために競合や対立はある程度避けられないけど、戦争以外にも解決手段はある」(制限付きの闘争とか、騙すとか、妥協するとかも含めて)と言う方が現実ではないかな?

さて、本題に入る。(問題は空中戦なんですよ、私にとっては。アッハッハ。)

押井監督は「宮さんには負けない」とか豪語していたとか(当然、紅の豚のこと)。悪くないとは思う、いや思っていた以上の出来だ。でも、(航空マニアが思わず)ニヤッとする場面と言うのは全然なかった(*1)。それと、「空中戦のフィルムをいろいろ研究したんだろうなぁ」とは思ったけれど、「自分で空を飛んでワクワクした感じ」を表現できているとは思わなかった(*2)。

(*1)は紅の豚をみていると気がつくことで、あれには「ここは横滑りを使っている」とか「あ、これはヨアヒム・マルセイユの逸話だ」とか、いろいろウンチク話がたくさん込められているのだけれど、それがスカイクロラにはほとんど見られなかった。

(*2)は機体の揺れとかスピード感や浮揚感のこと。スカイクロラの離陸はすべて、着陸シーンもほとんどが地上視点で、パイロット視点がほとんどない。それと着陸場面ではもっと機体が(ヨー・バンク両方向に)傾いた状態でアプローチして着地の直前に滑走路に正対するとかあってよい。その他、オイルのにおいも、機体の振動も、排気管の熱く焼けた感じも、エンジンを地上運転した時の轟音も、みんな希薄だ。

でも、上記のようなディテールに凝ったからと言って、良い映画になるとは限らない。

アクションは一瞬の印象が大事であり、それは画面の動きの良さで決まると思うので、ここに書いてきたようなあれこれのディテールを描こうとするあまりに動きが遅くなったり表現が冗長になったりでは駄作になってしまう。その辺はベテラン監督と僕のようなただの飛行機オタクとは全然違う点だろう。

だから、スピード感を保ってとにかく画面を止めない表現は良かったと思う。

と言うことで、航空マニア的ディテールは横に置いておけば良いのであって、動きと印象の方は良くできていたと思う。

(でももう少し高高度の空は濃い青で、空間が広く見えるともっと良かったなとは思う。)

あっ、そうそう。

最後の場面で・・・・・・・・・・

「ネタばれ注意」

主人公のクローンが配属されてくるってのは、萩尾望都の「AA´」のパクリだ。

どこかでオチを読んでしまってから見に行ったのは失敗だった。知らなければきっとラストシーンで泣いていただろう。

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2007年11月28日 (水)

電脳コイル ~そのメカニズムと公共インフラの将来像(10)~

<メカニズム: メタバグ(メタタグ、キラバグ)って何?>

メタバグとは古いバージョンの電脳空間にすむ電脳生物の死骸からできたもので・・・と言うのはお話の中の設定だが、現実のコンピューター技術で似たようなものが何か有るだろうか?

X-WindowWindowsのドメインではネットワーク上のリソース(ファイルサーバーやプリンタなど)を共同利用するけれど、そのために全てのPCにユーザーIDとパスワードを登録するのではユーザー管理が大変だしセキュリティーが保てない。そこでアクセス権管理を行っているのが認証サーバーだ。詳しい事を説明できるほど知っているわけではないが、要するにセッションごとに使い捨てパスワードみたいなものを発行しているらしい。分かりやすく言うと、期間限定の周遊券みたいなものをお客さん(セッションやプロセス)に対して発行し、それぞれのサービス担当者はこの切符が正当なものかどうかだけをサーバに問い合わせする仕組みだ。(らしい・・・、よくは知らない・・・、多分そうではないかと思う・・・)

メタバグと言うのは、旧バージョンOSの互換モードで実行中にクラッシュしたプロセスのメモリーダンプか何かで、セキュリティーが甘いためセッションIDや使い捨てパスワードを盗む事ができる、と考えたらどうだろうか?

そして、自分の書いたプログラム(メタタグや暗号式)にそれを組み込めばセキュリティーチェックをすり抜けて違法プロセスを実行する事ができると考えれば納得できる。

もう一つの疑問は、あの御札の模様や暗号式って一体何なのだろう?と言うことだ。何故、電脳チョーク書いた道路のいたずら書きがプログラムとして機能するのだろうか?

どうやらこの電脳インフラにはユーザーのジェスチャーやグラフィックパターンをプログラムとして認識する機能があるらしい。指電話や「カンナの日記」に出て来る「道順」などもその例だ。もしかすると道路のマーキングや標識なども、システムが読み込んで解釈して動作に反映するのかも知れない。いずれにせよこれはユーザー権限で実行するマクロやスクリプトのようなもので、本来たいしたことはできないはずだ。だから、メガ婆やイサコがやっている事は、ちょうどSQLインジェクションみたいに、ユーザー書き込み欄にプログラムを忍ばせておいてサーバに実行させてしまう行為だと思う。

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2007年11月25日 (日)

電脳コイル ~そのメカニズムと公共インフラの将来像(9)~

<メカニズム: バスは走る ~移動する座標系とリアルタイム性の問題~>

23回の解説で「量子通信によって驚異的な大容量高速通信が可能になった」の一言で済まされてしまったのだが、このページはあくまで「現在の技術の延長線上で、可能なことと困難なことを峻別する」のが目的なので反応速度の問題を取り上げてみようと思う。

「メタバグ争奪バスツアー」でバスの車内が電脳化されている事が示されているが、これをまともに実現する場合反応速度の問題を考慮する必要が有る。

デジタルネットワークやデジタル放送の隠れた欠点はリアルタイム性の欠如である。例えば地デジ放送ではアナログ放送で問題にならなかった時報や災害時緊急放送の遅れが心配されている。これをご覧になっているパソコンの時計はインターネット上の時刻サーバーを使って同期されているはずだが、数秒から数十秒程度の狂いがあるはずだ。HTTPのリクエストからレスポンス+表示までの時間だって1/10秒以内と言うわけにはなかなか行かないであろう。

例えばユーザーがバスの中に立ち、座席や案内表示などの車内の物体を見ているとする。もし、これら車内物体が電脳管理局やバス会社のサーバーで管理されている(遠くの事務所に設置されたサーバーに問い合わせを行い、レスポンスを受け取ってから電脳体が描画される)ものであり、その位置がグローバル座標系で管理されているのだとしたら何が起こるだろうか?バスが時速60km/hで走行している場合、これは秒速17m/secだから、リクエスト~レスポンスに1/10秒かかるとするとその間にバスは1.7m移動することになる。これではバスの乗客から見ると車内の物体の電脳体が皆1.7m以上も後方へずれたり追いついたりを繰り返すことになり、車酔いどころの騒ぎではない。だから、バス車内の物体の位置は全て車内の座標系で管理する必要がある。おそらくバス毎にローカルサーバーを搭載するのだろう。

車外に目を転じてみるとさらに問題は深刻である。自動車を電脳ナビで自動運転するのに実物体と電脳体が最大で1.7mもずれていたら、交通事故だらけになるだろう。運転に必要な精度はセンチメートルオーダーだから、レスポンス時間1/1000sec1.7cmと言ったところが要求される(これに端末側の処理時間も加わる)。これを解決するためには道路上に多数のカメラとレーザーセンサーを設置して道路上の物体を検出し、道路周辺に設置したローカルサーバーで電脳ナビや電脳メガネの問い合わせに瞬時に答えるシステムが設置されるだろう。(同じことを個々の自動車の電脳ナビで行うよりは、皆で同じデータを共有するほうが合理的だ。)

要するに、車等の移動する物体(とその内部)の表示には、大変な高速レスポンスが求められるのだ。

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電脳コイル ~そのメカニズムと公共インフラの将来像(8)~

<メカニズム: バスの床が抜けた 

 ~データベースのアップデートと自然物のとりこみ~>

「メタバグ争奪バスツアー」の回で、バスの床が抜けているのにデータのアップデートが行われていない場面があったが、これは「絶対あってはならない!!」ケースだ。建設工事に於ける死亡原因第一位は落下事故だ。階段や外廊下に手すりがない、エレベータのドアは開けっ放し、床の開口部の蓋がない、etc。電脳データ上はある筈の手すりや床がなかったり、ボロボロだったりって言うのはすごく怖い。アップデートできなきゃ全部“no data”とするべきだし、そもそも、工事現場や資材置場、廃工場、廃車置場に子供が出入りしちゃいけない。と言うか、それを防ぐのが電脳インフラの役目であろう。まぁ、しかしこれはフィクションであるしジュヴナイルものだから、廃工場や資材置場の冒険は定番なので外せない。

さて、全ての人工物(工業製品及び商品)にICタグを埋め込むとは言ったものの、廃材置場のガラクタや自然物、街路樹、野良猫、ハト、カラス、土砂、水、建物壁面のシミや落書きまでデータ化して最新状態を保つにはもう少し別な方法が必要だ。この辺の仕組みは「最後の首長竜」で説明されている。街中のあらゆる公共空間には監視カメラが設置されており、電脳空間中のオブジェクトを最新の状態に保っている。これによって路面のシミや日陰など黒っぽい部分(クビナガが通れる場所)が作られていたわけだ。画像だけから3次元形状を合成するのは処理が重く精度が悪いから、カメラにはレーザースキャナーも一緒になっていてこちらで得た3次元形状にテクスチャーを貼り付けるのだろう。

「いきものの記録」に出てきた電脳ペットによる盗撮行為は、既にネット上で議論されたようだ。電脳ペットは物理的実態の無いソフトウェアにすぎないのでマイクもカメラも搭載できるわけがない。あれは、以下のどちらかだろうと言うことで結論は一致している。

① 電脳空間上の物体(ICタグ等から取得した属性情報付の3次元データ)を見ている

② 監視カメラ画像(もしくはそこから合成した3次元イメージ)を取り出してきている

まぁ、ここまでの説明で分かるように、データベースがきちんとアップデートされておれば両者は一致するはずなのだが。

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電脳コイル ~番外編~

ちょっと脱線。

あと一回で最終回!25話では事の真相がかなり明らかに・・・・・

しかし、4423=イサコですか!

と言うことで、嘘八百の大胆予測。

1) 例の傷がある左手はイサコのものだった(なるほど夏でもデニムのジャケットを着ているのが理解できました)

2) ヤサコがチュッしてお嫁さんになる約束をした相手はイサコだった(もしくはノブヒコとイサコが混ざっていた)→どうするんだヤサコ、約束はちゃんと守れよ!

大間違い!「お嫁さん」ではなく「恋人」でした。(11/27修正)

3) ヤサコパパは実は潜入捜査官でメガマスを調査していた(ラスボスがパパではあまりに悲惨なので)。

4) 赤いオートマトン、黒いオートマトン、と来たので、Ver3.0は白いオートマトン(連邦の白いやつ)

5) オジジの死因が明かされる

 5)は最後に残ったナゾ。ヤサコがCドメインで迷子になったのは「オジジの葬式(お通夜?)」の夜のこと。なので、この時点ではオジジは死んでおり、イサコは既にCドメインからサルベージされた後のはずだ(あれれ、2と矛盾してしまった)。よって、ミチコが言っていたようにノブヒコにキスするヤサコを見たはずがない。

 もしかして、「オジジはCドメインを閉鎖する予定だった」「猫目宗助がその場にいて、父親の築いた業績を葬るのは許せない!とか言ってオジジのメガネを取り上げた」とか?

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2007年11月21日 (水)

電脳コイル ~そのメカニズムと公共インフラの将来像(7)~

<メカニズム: サーバ側 ~デンスケは何処に居るか~>

さて、此処からはサーバ側の機能だ。電脳インフラ内の各種サービスはどのようにして実行されるのだろう。例えば仮想ペットはどのコンピューター上で実行されているのだろうか?

考えられるのが以下の4ケースだ。

① ローカル端末(電脳メガネ)

② お家サーバ

③ ペット会社のサーバ

④ 大黒市(電脳管理局)、メガマス社等のサーバ

どれも正しい。仮想キーボードや指電話位ならメガネ内で全て実行するのだろうが、電脳ペット位は皆で可愛がって楽しむものなので、次の様な役割分担が良さそうだ。

電脳メガネ(①)はユーザーが抱上げる等の接触判定やインタラクティブな操作を受け持つ。②のお家サーバーか③のペット会社のサーバがペットの行動や生育履歴などを管理する。ペットの動作や位置は周辺に居るユーザー全員のメガネに通知され、メガネ(①)はそれぞれの視点から見た3次元映像を描画する。一方、ペットやユーザーの位置、幾何形状、接触判定結果などはその空間を管理するサーバ(④)上で一つのデータに統合される。

④はちょっと「?」かもしれない。全てのユーザーが空間を共有する必要が有るのだろうか?他人が楽しんでいるゲームや電脳ペットまで見せられる必要が有るのだろうか?電脳コイルの世界の電脳インフラはそういった物なのだ。例えば、公園の一隅で電脳キャッチボールを楽しんでいる子供たちがいて、近くで電脳テニスをやっているグループがいるとする。ボールが飛んでいって、子供がそれを追っかけてくる。こんなとき、他人が何をやっているのが見えたほうが安全だし、新たなコミュニケーションの機会も発生する。だから。全てのユーザーが単一の空間を共有する事は必要なのだ。無論、学校や職場や個人の住居内などは物理的にも社会的にも仕切られた別空間だから切り離して扱ってよい。これが別ドメインと言うことになるのだろう。

しかし、全ての物体の接触判定情報を一元管理するのはとんでもない処理量になりそうだ。一つの空間内にN個の物体があると考えて、N×(N1)/2回の接触判定だ。多分空間を細かく分けて分散データベースにして、DNSみたいに階層構造にして順番に上位のサーバに問い合わせして・・・・・、などと妄想するばかりだ。

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