こんな単純な図式はもう成り立たない
今週のマーケットは、世界的な同時株安で始まった。新興国経済の先行きに根強い懸念があるからとされる。
東京市場も週明けの27日、日経平均株価は一時1万5000円割れとなり、400円近い大幅下落となった。
同じくこの日政府は2013年(暦年)のかなり衝撃的な貿易統計を発表した。
これによると13年の貿易赤字が過去最大の11兆4745億円に達したというのである。
13年の為替レートは、12年比平均で2割以上も円安になっている。一体どうしたのか。
輸出は価格ベースでは1割近く増えているが、数量ベースでは何と減少(1.5%)している。要するに円安によっても輸出は伸びていないのだ。
その最大の原因は、日本企業の生産拠点が海外に移転されたため輸出が増えにくくなっていること。そしてわれわれが期待する国内生産回帰への流れは全く生じていないのだ。
もう円安が進めば輸出が増加するという単純な図式は成り立たないだろう。
一方の輸入は価格も数量も増えている。13年の輸入増額は12年比15%増となっている。
これは主として火力発電への依存が強まり燃料輸入が急増したためとされる。
ただ、この場合も円安が輸入価格を大きく押し上げているのが問題だ。
幸い、今のところ日本の所得収支黒字の余力はある。しかしこの黒字も減少を示しているから、所得収支の黒字の拡大策も真剣に考える必要がある。
「不連続な歴史の局面」こそ
日本経済を飛躍させる
私は現状の日本経済の流れに小手先で対応するだけでは、中長期のジリ貧傾向は避けられないと考えている。
やはり、新技術、新商品の爆発、イノベーションがあって初めて日本の経済は再生する。
戦後日本の経済を通覧すると分かるが、経済の新しいステージは、敗戦や石油ショックのように、大きな「経済外的要因」、「不連続な歴史の局面」によって用意されるのではないか。戦後の日本だけでなく世界の歴史にもその例は多いだろう。
「原発ゼロ」は、不連続な歴史の局面。必ず日本経済を飛躍させると私は確信している。確かに経済と生活に一時的な困難をもたらす可能性はあるが、その彼方には新しい経済、新しい生活が展望できる。ジリ貧の流れに流されることは我々日本人の進む道ではない。<田中秀征 政権ウォッチより>