小沢一郎元民主党代表を中心とする新党がきょう旗揚げする。二〇〇九年衆院選で国民が政権を託した民主党を離党したが、マニフェストで掲げた「国民の生活が第一」という理念は貫くべきだ。
小沢氏には新生党、新進党、自由党に次ぐ四度目の新党結成だ。自民党を飛び出した際のような新鮮味はなく、今回も権力闘争の一環であることは否定しがたいが、「もはや野田佳彦首相の下での民主党は、政権交代を成し遂げた民主党でない」という問題意識は共有する。
野田首相は消費税増税はしないという〇九年衆院選での「国民との契約」を反故(ほご)にし、敵対していた自民、公明両党と結託して増税を強行しようとしている。
政権交代可能な二大政党制は、有権者が政策によって政権を選択する制度のはずだ。政権を委ねられた政党は選挙で公約した政策の実現に努めるのが大前提である。
首相はこれを無視し、約二十年間にわたる政治改革を経て有権者がようやく勝ち取った政権交代の意義を貶(おとし)めた。その罪は深い。
小沢氏は、新党が目指す政策について「政権交代の時に国民と約束した理念と個別の政策だ。今日的なテーマとしては消費税増税の先行に反対する。原発も大きな国民の関心事だ」と語った。
「小沢新党」が「反消費税増税」や「脱原発」を掲げるのは、民主党マニフェストを掲げて選ばれた経緯や、原発事故後の状況を考えれば当然の成り行きだろう。
新党が、国会内で活動する際の会派名を「国民の生活が第一」と届け出たことからみても、マニフェスト実現に努める責任は自覚しているようだ。国民との約束は貫くのが筋である。
問題はどう実現するかだ。
衆参合わせて五十人規模の新党は、野田政権の暴走を止めるには力不足かもしれない。小異を捨てて大同につき、「反消費税増税」や「脱原発」など同じ政策の実現を目指す他党議員との連携を粘り強く模索する必要がある。
次期衆院選も苦戦が予想されている。小沢氏は河村たかし名古屋市長ら首長率いる地域政党と共闘する「オリーブの木」戦術に新党の生き残りを託しているようだが、地域政党側の反応は芳しくない。
それでも小沢氏は理念を高く掲げ、政策の選択肢を示し、その実現を愚直に目指す姿勢を見せるべきだ。政権を託すに足るかどうか判断するのは有権者である。
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