
昨年1月より世界で猛威をふるっている、新型コロナウイルスこと「SARS-CoV-2」*1が、中国の武漢ウイルス研究所から流出した遺伝子改変ウイルスの疑いがあるという「研究所流出説」を、米国の大手メディアのFOXニュースが、政治コメンテーターのスティーヴ・ヒルトン氏の報道番組『ネクスト・レボリューション』で数回の特集を組んでいるが、その内容が興味深いので動画ニュースの全訳を試みてみた。
コウモリ由来とされる2001年のSARS流行を受けて、米国の国立アレルギー感染症研究所 (NIAID) が推進をしていた、ウイルスの病原性や感染性の増強(機能獲得変異研究)を伴うコウモリコロナウイルスの研究が、中国の武漢ウイルス研究所に2014年に外注されていた問題で、コウモリSARSウイルス等を使って遺伝子操作も含む実験を行なっていた同研究所から、人間への病原性や感染性が増強された人工SARSウイルスが何らかのミスで漏洩した可能性を疑うのに十分な理由があるというのが、1月26日放送分の第一回の内容である。
また、新型コロナウイルスの起源を調査する国際タスクフォースのチーフで、先日武漢入りしたWHOの調査団に参加し、研究所流出説を強力に否定している人物が、2014年に武漢ウイルス研究所にウイルス改造研究を外注し共同研究を行なっていた張本人だという事も指摘されている。
・注釈番号をマウスオーバー (PC)、タップ (モバイル) で脚注の追加説明が表示されます。
米国から委託された研究との接点
ザ・ネクスト・レボリューション
FOXニュース
2021年1月25日放送
解説:スティーヴ・ヒルトン
動画1 (6'31")
PART 1 of @SteveHiltonx's special investigation into the origins of the coronavirus#NextRevFNC pic.twitter.com/8iQvhH8sr9
— The Next Revolution (@NextRevFNC) January 25, 2021
コロナウイルスの大流行は世界の歴史で最も破壊的な出来事の1つである。このウイルス自体はもちろんの事、ここ米国ではアンソニー・ファウチ氏が推進するロックダウンもそうだ。その彼は今やバイデン大統領によって更に権力を与えられている。
以下は先週のファウチ氏だ:
▶WHO執行理事会 2021年1月21日(動画)(17:19〜51)
Video: NBC News. "Fauci addresses WHO executive board meeting – watch live". YouTube, January 21, 2021, at 17:19-17:51.; Transcript: "Dr. Anthony S. Fauci Remarks at the World Health Organization Executive Board Meeting". U.S. Department of Health and Human Services, The, January 21, 2021.
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これから私達が明らかにする事実の結果として、ファウチ氏は上層部に「大切な友人達」が必要になるのだろう。
このパンデミックの原因を示す最も納得のいく証拠を、これから皆さんは目にする事になる。そして、それは皆さんがこれまでに聞いていたどんな事よりも悪いものだ。
話は、このパンデミックの意外な副次的影響の一つから始まる。
デンマークが昨年後半に、国内で飼育されているミンク全頭の殺処分を決定した事は皆さんも耳にしていると思う。
コロナウイルス:数百万匹のミンクの殺処分に揺れるデンマーク
BBCニュース
2020年11月11日
ここ米国では、ユタ州の1匹のミンクが、そのウイルスへの感染が発見された野生動物の第一号だった。それで、ミンクの何が問題なのか?
MAGAZINE
COVID-19*2の野生動物初症例 ユタ州の一匹のミンク
スミソニアン誌
2020年12月16日
そう、ミンクやその近種の呼吸システムは、人間と類似した機能を持つ事が判っている。
機能獲得ウイルス研究
米国の国立アレルギー感染症研究所が主導
約10年前、オランダのエラスムス医療センターの研究者達が、フェレットを使った一連の実験に着手した。彼等は、最初は空気感染能力のなかったウイルスが、最終的にその能力を得る事ができるかどうかを見出そうとしていた。
答えはイエスだった。1匹のフェレットから別のフェレットにインフルエンザウイルスを注入し続ける事で、ウイルスがエアロゾル飛沫によって空気感染するのに十分に変異する事を彼等は発見したのだ。
A型H5N1インフルエンザウイルスのフェレット間での空気感染
サイエンス誌
2012年6月22日
これは、遺伝子技術やゲノム学の進歩によって可能となった、完全なニュータイプの科学研究の開発に繋がった。
それは「機能獲得ウイルス研究」と呼ばれた。
Public Health and Medical Emergency Support for a Nation Prepared
機能獲得研究
“機能獲得研究 (GOF) とは、人間=病原体間の相互作用の基本的性質の定義付けに役立ち、それによって新規の感染病原体によるパンデミックの恐れに対する判断が可能となり、公衆衛生と防衛準備努力に情報を提供する。”
アメリカ合衆国保健福祉省(HHS)
2019年3月6日
そのアイデアは、1つのウイルスを取り出すためにこれらのフェレットで行われた事を実験室で反復し、より強力さと威力を持たせるためにその遺伝子コードを操作するというもので、そのウイルスが新たな機能を獲得する事からその名称が来ている。
私達がもし、最も感染力が強く致死性の高いウイルスを実験室内で自ら設計できるなら、実際の大流行という惨事が起きる事なく治療法やワクチンの見通しを得る事ができるという、「機能獲得ウイルス研究」は将来の大きな有望性を一部の人々には示していた。
「機能獲得研究」の原動力となった信念とは、「敵を知る事で戦いに備えられる」という崇高なものだった。米国の国立アレルギー感染症研究所 (NIAID) からの助成で数年にわたり、「機能獲得ウイルス研究」は世界各地で行われて来た。
そして、「機能獲得ウイルス研究」における主要な研究所の一つが中国にあった。それは世界中が知るところとなった武漢ウイルス研究所だ。

しかし、人類を救うための大きな可能性を秘める一方で、「機能獲得研究」は私達を傷つける可能性もある。
もし、実験室で強力な感染力を持つように作られた致死性の高いウイルスが、何らかの理由で実験室から漏洩したと想像してみてほしい。それは正確に大惨事を引き起こす事になる。なぜなら、それは自然界ではなく我々によって、そのように設計されていたからだ。この理由から、「機能獲得研究」は常に論争を呼んで来た*20。
実際、「連邦研究施設における最近のバイオセーフティ事故を受けて」オバマ政権は2014年にこの種の研究に対して完全なモラトリアムを出すに至っている*3。
危険な生物学的研究への助成金を停止 ホワイトハウス
“ホワイトハウスによると「連邦研究施設における最近のバイオセーフティ事故を受けて」モラトリアムの決定がなされたという。”
ニューヨーク・タイムズ
2014年10月17日
当時、彼等はこう言っていた:
PRESIDENT BARACK OBAMA
生命科学系「機能獲得研究」のリスク及び利点評価のための精査を実施
“哺乳類への呼吸器経路を介した病原性や伝染性が増強された特性を、インフルエンザ、MERSやSARSのようなウイルスに与える事が当然予想されるような機能獲得研究プロジェクトに、この助成停止は適用される。”
ホワイトハウス
2014年10月17日
さて、この種の研究をめぐる議論にもかかわらず、そこには常に1人の確固たる推進派がいた。感染症界の第一人者、アンソニー・ファウチ氏だ。

最初のフェレット研究を助成したのが彼の研究所 (国立アレルギー感染症研究所、NIAID) だ。当時、彼はこの研究が「冒す価値がある危険」であり、「重要な情報と本質の理解は、潜在的に危険なウイルスの実験室での生成から得られるだろう」と説明する論説記事を、ワシントンポスト紙に共同寄稿している。
冒す価値があるインフルエンザウイルスの危険
“重要な情報と本質の理解は、潜在的に危険なウイルスの実験室での生成から得られるだろう。”
アンソニー・S・ファウチ、ゲアリー・J・ノーベル、
フランシス・S・コリンズ
ワシントン・ポスト紙
2011年12月30日
そして、2014年にオバマ政権が「機能獲得研究」を禁止する少し前に、ファウチ氏は以下のプロジェクトを委託した。

それは、コウモリのような野生動物からの新たなコロナウイルス出現の危険性を見積もるプロジェクトだった。
そこで掲げられた目標の1つは、どのようなウイルスが動物と人間の両方に感染するかを確かめる事だった。

ここで、プロジェクト概要の一番最後にある以下の一文に注意してほしい:

これはウイルスの「機能獲得研究」の説明であり*4、オバマ政権が中止させたまさしくそのタイプの研究だ。
しかし、ファウチ氏はそれを止めなかった。彼はニューヨークのエコヘルス・アライアンスという団体にその研究を下請けに出す事で、そのままそれを継続したのだ。
これは、ウイルス研究分野の第一人者であるピーター・ダザック氏が運営する団体だ。

題名:コウモリコロナウイルス発生の危険性への理解
被助成団体:エコヘルス・アライアンス
彼は野生生物の病気を専門とする動物学者である。つい10年あまり前に、SARSパンデミックのコウモリ起源を最初に発見した事で、大きな名声を誇る人物だ。
ダザック氏は、そのウイルスの起源がコウモリである事を、中国の市場の1匹のジャコウネコ(ハクビシン)によって立証した。それ以来、彼は「バットマン」として名声を築いた。彼のチームは、科学研究目的でコウモリのサンプルを収集するために、人里離れたジャングルのあちこちの洞窟に実際に行っていた。
“共著者のピーター・ダザック博士は「SARS-Cov*5を運ぶコウモリが、人間に直接感染させる可能性があるという私達の発見は、公衆衛生管理の方法に対して大きな意味を持つ」と述べた。”
NIH(国立衛生研究所)フォガーティ国際センター
2013年9月/10月号(第12巻5号)
オバマ政権が禁止したにもかかわらず、ファウチ氏が委託したこのプロジェクトで、エコヘルス・アライアンスに6年間で300万ドル以上が支払われている。

* NIH(国立衛生研究所)、CDC(疾病予防管理センター)、FDA(食品医薬品局)の助成金データのみの合計額。
そして、ここで私達は、これまでに報じられた事のない極めて重大な段階に足を踏み入れる。
中国に下請けに出された「機能獲得研究」
ピーター・ダザック氏自身が、ファウチ・プロジェクトの重要な部分である「機能獲得」を更に下請けに出したのだ。彼はそれを、コウモリのコロナウイルスを専門とする、「機能獲得ウイルス研究」で有名なエキスパート集団に与えた。そう、彼はそれを武漢ウイルス研究所に与えたのだ。
ここで生じる疑問は、彼等はそれを私達にも与えたのかどうかだ。
PART 2 of @SteveHiltonx's special investigation into the origins of the coronavirus#NextRevFNC pic.twitter.com/F2a4iBypv6
— The Next Revolution (@NextRevFNC) January 25, 2021
ファウチマネーで彼等が何をしたかを見てみよう。プロジェクト成果のページには、武漢研究所の新発伝染病部の石正麗氏が共著している13本の論文が掲載されている*6。

論文のうちの1つは、プロジェクトのほぼ中間である2017年に発表されたものだ。
コウモリSARS関連コロナウイルスの豊富な遺伝子プールの発見が、SARSコロナウイルスの起源に新たな理解を提供する
コウモリSARS関連コロナウイルスのレスキューとウイルス感染実験
“全てのウイルスは、ヒトACE2発現細胞内で効率的に複製した。”
胡犇、ピーター・ダザック、石正麗 他
PLoS Pathogens
2017年11月30日
ACE2受容体とは何か、それがコロナウイルスとどのように関連しているのか、そしてなぜそれがCOVID-19の治療の鍵となるのか? 専門家が解説
“ACE2は、COVID-19を引き起こすウイルスのための細胞の入り口(受容体)として作用する。”
ザ・カンバセーション
2020年5月14日
ピーター・ダザック氏は共同執筆者の1人としてリストされている。これは一種の中間報告になる。

コウモリSARS関連コロナウイルスの豊富な遺伝子プールの発見が、SARSコロナウイルスの起源に新たな理解を提供する
その論文の助成金欄には、ファウチ委託プロジェクトの番号「R01 AI110964」がある。それが資金の流れだ。

これまでのところ、この全てにおいてファウチ氏の役割に関する唯一の報告は概ね、武漢研究所への助成金のみである。
しかし今夜、この論文のおかげで私達は更に掘り下げる事ができる。私達は、ファウチ氏が出資した活動を具体的に見る事ができるが、実際それは何とも恐ろしいものだった。
新型コロナウイルスの作成も可能な技術
私達が国立衛生研究所(NIH)とピーター・ダザック氏の団体にコメントを求めたところ、不可解な事にその論文は金曜日からしばらく非公開となった。

しかし、私達はそれを数週間前にダウンロードしていた。以下がその詳細だ:
コウモリSARS関連コロナウイルスの豊富な遺伝子プールの発見が、SARSコロナウイルスの起源に新たな理解を提供する
コウモリSARS関連コロナウイルスのレスキューとウイルス感染実験
“単一個体のフンのサンプルから、更に新型のSARS関連コロナウイルスRs4874の培養に私達は成功した。(中略)WIV1*7をバックボーンとする感染性細菌人工染色体(BAC)のクローン群と、8種類の異なるコウモリSARS関連コロナウイルス由来のS遺伝子変異体を私達は構築した。(中略)Rs4231とRs7327の感染性クローンのみが、トランスフェクション後にベロ6細胞における細胞変性効果に至った。”
胡犇、ピーター・ダザック、石正麗 他
PLoS Pathogens誌
2017年11月30日
上記は実際の科学論文だが、これが意味する事を簡単な英語で表現すると、こうなる:
「彼等は中国の雲南省の昆明市付近の洞窟*8でコウモリの排泄物サンプルを採取した。彼等はフンに新種のコウモリコロナウイルスが多数含まれている事を発見し、それらを分析し遺伝子情報をシーケンスした。そして彼等は様々なキメラを構築し、実験室で遺伝子操作によって新しいウイルスを人工的に作成した。」
彼等は実験室でヒトの細胞をそれらに感染させ、自作の人工ウイルスが機能的ウイルスとして自己複製できる事を示した。
コウモリSARS関連コロナウイルスの豊富な遺伝子プールの発見が、SARSコロナウイルスの起源に新たな理解を提供する
コウモリSARS関連コロナウイルスのレスキューとウイルス感染実験
“ベロ6細胞が、2つのレスキューされたキメラ型SARS関連コロナウイルス、WIV1-Rs4231S、WIV1-Rs7327Sと、新たに単離されたRs4874にそれぞれ感染した時、全ての感染において効率的なウイルス複製が検出された。(中略)全てのウイルスは、ヒトACE2発現細胞において効率的に複製した。”
胡犇、ピーター・ダザック、石正麗 他
PLoS Pathogens誌
2017年11月30日
最も重要な部分はここだ。
研究室で彼等が行なった遺伝子の改変が、人体の非常に特異な入り口のロックを解除したのだ*9。COVID-19を引き起こすウイルスも全く同じ入り口を使う。
ACE2受容体とは何か、それがコロナウイルスとどのように関連しているのか、そしてなぜそれがCOVID-19の治療の鍵となるのか? 専門家が解説
“ACE2は、COVID-19を引き起こすウイルスのための細胞の入り口(受容体)として作用する。”
ザ・カンバセーション
2020年5月14日
誤解のないように言っておくが、2017年当時に作られた遺伝子操作ウイルスで、私達が現在対峙しているウイルスと全く同一のものはない。
しかし、彼等が確認した事とは、ファウチ・プロジェクトで開発された技術を使ってCOVID-19を作り出すのが可能だった*9という事だ。そして、そのプロジェクトは更に3年間続けられた。更に3年の実験が。更に3年の人工変異が。
では、実際のCOVID-19ウイルスを見てみよう。武漢研究所で以前作られたものと比べてどうなのか?
実際のパンデミックウイルス*10は、元のSARSウイルスよりも10倍から20倍強固にヒトの細胞に付着する事が分かった。
プレヒュージョン立体配座における2019-nCoV*11スパイクのクライオ電顕構造
“約15ナノメートルの親和性で2019-nCoV Sエクトドメインに結合したACE2は、SARS CoV Sに結合したACE2より約10〜20倍高い。(中略)ヒトACE2に対する2019-nCoV Sの高親和性は、2019-nCoVがヒトからヒトへ拡散するのが明らかに容易である事への要因となるだろう。しかしながら、この可能性を調査するために更なる研究が必要である。”
2020年3月13日
それがこのウイルスがより感染力が強い理由だ。感染力の増加が変異の繰り返しを通じて起こる事を科学者達は予想していただろうが、このウイルスに関してはそれは最初から備わっていたものだ*12。
2020年2月に発表された論文で石正麗氏は、今回のパンデミックウイルス*10のバックボーン(主鎖)が武漢研究所の収集サンプルライブラリの一つと一致する事を確認している。
コウモリ由来とみられる新型コロナウイルスに関連した肺炎の激増
“それから、以前に雲南省のナカキクガシラコウモリから検出されたコウモリコロナウイルス(BatCoV RaTG13)*13のRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)の短領域が、COVID-19との高い配列相同性を示した事を私達は発見した。”
周鵬、石正麗 他
2020年2月3日
彼等の2017年の論文では、より感染性の高い人工バージョンを作るために、コウモリコロナウイルス株に他の動物から見つかったコロナウイルスの一部を入れ替えた方法が説明されている。
そして十分に確かな事として、そのパンデミックウイルス*10は、非常に異なる2種類のコウモリのウイルスが組み合わされ、そこに一部全く異なる種の生物のウイルスと混ぜ合わせられたものに見える。このような事が自然界で起こるのだろうか?
ピーター・ダザック氏は、このように話している。

COVID-19の起源の可能性に関するピーター・ダザック氏の発言
“1人の農家、あるいは1頭の家畜が感染し、それらが市場に紛れ込んだのかもしれない。(中略)1人の人物が持ち込めば、それとも1頭の動物が・・・そのウイルスは拡散する。ここで起こっているのは、そのような事だと思われる。”
2020年4月16日 Transcript: "'Pure Baloney': Zoologist Debunks Trump’s COVID-19 Origin Theory, Explains Animal-Human Transmission". Democracy Now!, April 16, 2020.
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私達がその「自然起源説」を信じるなら、以下の複数の偶然の一致が必然的に起こる必要がある:
- 中国南部において、異なる数種のコウモリと、その他の未知の生物が互いに感染し合わなければならない。
- それらの動物あるいは感染した人間が武漢市に到着するまで、その他の誰にも影響を与える事なく、1000マイル(1600km)*14を移動しなければならない。
- いかなる変異も起きる以前の初期段階で、それはこれまでに観察されたどのウイルスよりも10倍から25倍も感染力が強かった*15。
- そして何よりも信じられないことに、世界最大のウイルスのコレクションを持ち、既に感染者を出している研究所がある*16中国全土で唯一の場所であり、件のウイルスと一致した遺伝子研究を行なっていた世界で唯一の場所*17を、その感染した動物や人間がその1000マイルの旅の行き先になぜか選んだ。
そのコロナウイルスが生物兵器として作られ、あるいは放出されたなどとは、私達は一瞬たりとも示唆してはいない。しかし、実験室での事故は起こる。オバマ政権がこの種の研究を中止させた理由はまさにそこにあるのだ。
中国のバイオセーフティの虚弱性への警告
SARSエピデミックのさなか、中国の研究所でそのウイルス研究を行なっていた2名の研究者が感染し、大流行を引き起こした事がある。
北京の研究所からの2回のSARS漏洩
中国の国立ウイルス学研究所の実験室の安全性に関して厳密調査
ザ・サイエンティスト
2004年4月25日
シンガポールでも1人の研究者がSARSに感染している。この研究者自身はSARS研究を行なってはいなかったが、研究所の同僚達が行なっていた。こうした漏洩は起こりうる。
JOURNAL of MEDICINE
実験室で感染した重症急性呼吸器症候群
ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン
2004年4月22日
シンガポールのこの研究者はバイオセーフティ・レベル3の実験室で働いていた。これは最高レベルから2番目になる。
2015年には武漢研究所にバイオセーフティ評価4の実験室が建設されたが、それ以前の数年間はより安全性の低い環境で彼等はコウモリコロナウイルスの研究を行なっていた。
中国のバイオセーフティ・レベル4実験室のユーザートレーニング・プログラム
“中国で、初のバイオセーフティ・レベル4の実験室である、中国科学院武漢国立バイオセーフティ研究所(レベル4)が2015年に建設された。”
国立生物工学情報センター
2019年5月25日
ACE2受容体を用いるコウモリSARS様コロナウイルスの単離と特性化
“WIV1*7がACE2を細胞侵入受容体として使用できるかどうか特定するために、ヒト、ジャコウネコやシナキクガシラコウモリ由来のACE2発現あるいは非発現のヒーラ細胞を用いたウイルス感染力の研究を私達は行なった。”
ネイチャー
ピーター・ダザック、石正麗、他
2013年10月30日
そして、最も高い安全性評価の後でもその懸念はあった。2018年に在中米国大使館は武漢研究所を視察して以降、同研究所に外交官を繰り返し派遣し、安全管理面の深刻な弱点を警告した。
コウモリコロナウイルス研究を行う武漢の研究所における安全問題の通告を公電 国務省
“その米国政府の関係者は、今回の訪問で知った事に深い懸念を抱いたため、彼等は『機密扱いでないが慎重に扱うべき』のカテゴリーで2本の外交公電を政府に送り返した。この公電は、武漢ウイルス研究所の安全管理上の虚弱性に関して警告し、より多くの注意と対処を提案した。”
ワシントン・ポスト
2020年4月14日
そして先週になって国務省は、2019年秋に同研究所の複数の研究者がCOVIDの症状で病気になっていたと述べた。
ファクトシート
武漢ウイルス研究所における動き
“米国政府は、武漢ウイルス研究所内部の複数の研究者が、大流行の症例が初めて確認される以前の2019年秋に、COVID-19や一般的な季節性疾患の両方と一致する症状の病気になっていたと確信する理由がある。”
米国国務省
2021年1月15日
また1月には、トランプ大統領の国家安全保障副顧問補佐官のマット・ポッティンガー氏が英国政府関係者の一団に対し、「相次ぐ証拠」が武漢研究所からのウイルス漏洩説を裏付けたと、非公式に語ったと報じられている。
「相次ぐ証拠」が、中国の研究所からのCOVID-19の漏洩を物語る 米政府関係者
ニューヨーク・ポスト
2021年1月2日
記録によると、その人物は英国版CIAであるMI6(英国秘密情報部)元長官のリチャード・ディアラブ氏である。

COVID-19の起源に関するMI6元長官のリチャード・ディアラブ氏の発言
“それは武漢ウイルス研究所から漏洩した人工物だ。つまり、それは事故の結果だという、私はその事実を話しているまでだ。” —— リチャード・ディアラブ
2020年7月 Haynew, Deborah. "Coronavirus: Former MI6 boss says theory COVID-19 came from Wuhan lab must not be dismissed as conspiracy". Sky News, Monday 6 July 2020 06:01, UK.
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2014年にオバマ政権がこの研究を止めようとした理由は、こういった明らかな実験室リスクのためである。人から人へと空気感染する段階までコウモリウイルスを改造する事は、それは危険な火遊びなのだ。
トランプ政権は昨年この研究への助成を停止した。
中国との結びつきをめぐり、コウモリ=ヒト間のウイルス伝染に関する研究への助成停止 トランプ大統領
ポリティコ
2020年4月27日
一体なぜ、2014年にオバマ政権がモラトリアムを出した時に、ファウチ氏はそれを停止しなかったのだろうか?
この1年近く、ブロード研究所のアリーナ・チャン氏、デイリー・メールのイアン・ビレル氏、ニューヨーク誌のニコルソン・ベイカー氏をはじめとする、科学者や記者達はその「研究所起源説」を入念に調べて来た。
WSJ社説:COVID-19の起源に関する真の調査を世界は必要としている
アリーナ・チャン&マット・リドリー
ウォールストリート・ジャーナル
2021年1月15日
武漢研究所からのCOVID漏洩に関する山のような証拠の全てを、世界は調査しなければならない イアン・ビレル
デイリー・メール
2021年1月2日
研究所漏洩説
ニューヨーク誌
ニコルソン・ベイカー
2021年1月4日
医学界は研究所流出説を非難
医学界からの反応は衝撃的だった。実際に起きた事を調べようとする代わりに、彼等は隠蔽工作をしているのだ。
2020年2月にピーター・ダザック氏は、研究所起源説を強く非難する公開状をランセット誌に掲載した。2月時点で彼等は、調査が行われないことを知る由があった筈もない。
COVID-19と闘う中国の科学者、公衆衛生専門家、医療専門家達を支持する声明
“COVID-19が自然起源ではないと示唆する陰謀論を強く非難するために我々は共に立ち上がる。”
チャールズ・キャリッシャー、デニス・キャロル、リタ・コルウェル、ドナルド・B・コーリー、ピーター・ダザック その他
2020年3月7日
そして昨年11月に彼は、ウイルスの起源を調査する国際タスクフォースのチーフに任命された。それは馬鹿げた「利益相反」*18である。
EcoHealth Aliance |
SARS-CoV-2*1の起源を調査するランセットCOVIDタスクフォースのメンバーが発表される
“それがどこから来たのか、どのように制御不能になったか、そして私達はどうやってCOVID-19のような未来のパンデミックを食い止める事が出来るのか? これらの問題がピーター・ダザック博士が率いる国際タスクフォースの焦点となるだろう。”
エコヘルス・アライアンス
2020年11月23日
彼は1月13日に中国入りしたWHOの調査団にも参加しているが、これは実験室漏洩説を調査する予定もないという、信じがたい調査だ。
パンデミック発生源の調査のため武漢入り WHO調査団
“武漢研究所でコロナウイルスが誤って放出された可能性があるかどうかを調査する予定はない。”
AP通信
2021年1月13日
この医学界による隠蔽が私達に示すものとは、この最もあり得る理由を、なぜ彼等は調査すらせずに除外しようと必死なのかだ。
それは世界で最も強力な2つの政府に恥をかかせる事になるかもしれないからだ。ウイルス漏洩を許したであろう武漢の研究所を持つ中国政府と、今夜提示した証拠によれば、そもそもこのウイルスを生み出す事になった研究を2014年に発注した米国政府だ。

今週バイデン大統領は、ファウチ氏をより強化された役割の最高医療顧問に任命した。今夜提示した資料と証拠に照らして、私達はその役割を支持する事は全くできない。
もちろん意図的でなかったにせよ、この壊滅的な世界的パンデミックを作り出す事になった彼の役割の真相に私達が到達するまで、ファウチ氏は身を引くべきである。
オバマ政権が禁止した後になっても、彼がこの研究への助成をやめなかったのはなぜなのかを、私達は知る必要がある。
そして何よりも重要な事は、また別のパンデミックを引き起こしかねないようなこの研究に、まだ資金提供を行なっているのかどうかだ。
以下は今週ファウチ氏がレイチェル・マドー氏に語った事だ:
▶レイチェル・マドー・ショー 2021年1月22日(動画)(0:59〜1:11)
Video: "Fauci: 'I've Been Wanting To Come On Your Show For Months And Months' | Rachel Maddow | MSNBC". YouTube, January 23, 2021, at 0:59-1:11.; Transcript: "Transcript: The Rachel Maddow Show, 1/22/2021". MSNBC, Jan. 25, 2021, 5:27 AM JST.
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そう、私達は彼に尋ねたのだが、彼はちやほやご機嫌を取ってくれる人々と話す事だけを好んでいるようだ。私達はファウチ氏、NIH、そしてエコヘルス・アライアンスのピーター・ダザック氏にコメントを求めたが何の回答もなかった。
今年1月にWHOの調査団が武漢入りするまで1年以上、一切門戸を閉ざしていた中国では、国外の学者や報道関係者を入れる以前に徹底的な証拠隠滅が行われたと言われているが*19、中国のご機嫌を損ねれば協力が得られなくなるため、WHOや、中国とパイプがある科学者はことごとく中国の言いなり状態になっているというのも想像に難くない。
そういう状況で国際調査団が入ったところで、中国にとって都合の悪い情報を出してくるはずもなく、情報統制が当たり前の独裁国家を相手に、調査自体が中国のプロパガンダへの協力の茶番にしかならないという、これはある意味、自由主義社会の敗北でもある。
それでも、武漢ウイルス研究所のチームが新型コロナ発生以前に米国のジャーナル等で発表していた論文は中国当局のコントロール下にはないため、こういった米国委託の研究プログラムの論文がむしろ現在得られる重要な情報となっている。
そういった過去のプログラム、論文、報道から点と点を繋いだ状況証拠的な追求が、このFOXニュースの特集の大部分ではあるが、一箇所それとは全く異なる直接的なアプローチの記述がある:
Their 2017 paper describes how they swapped parts of coronavirus found in other animals into bat coronavirus strains in order to make more infectious man-made versions.
And sure enough, the pandemic virus looks like a combination of two very different bat viruses mixed with parts of a virus from a completely different species. Could something like that occur in nature?
彼等の2017年の論文では、より感染性の高い人工バージョンを作るために、コウモリコロナウイルス株に他の動物から見つかったコロナウイルスの一部を入れ替えた方法が説明されている。
そして十分に確かな事として、そのパンデミックウイルス(新型コロナウイルス)は、非常に異なる2種類のコウモリのウイルスが組み合わされ、そこに一部全く異なる種の生物のウイルスと混ぜ合わせられたものに見える。このような事が自然界で起こるのだろうか?
これは新型コロナウイルスが遺伝子改変された人工ウイルスだという、この特集の主張の核心部分だ。
しかし、これは遺伝子解読など専門知識がないと説明も理解も出来ない領域であり、それがこの調査に専門家チームが関わっていると見られる事の証左だが、それを報道番組で解説するのは困難なのか、この主張に関して直接的な根拠は番組内では提示されていない。
ただ、大手メディアのFOXニュースが断言レベルで、米国のウイルス学界のトップを名指しで非難し、責任追求の報道をしているのは、状況証拠以上の何かしらの科学的根拠を揃えているのではないかとは思われる (次エントリーに続く)。
脚註:
-
*1 ^ SARS-Cov-2:2020年2月7日までに国際ウイルス分類委員会が名付けた、新型コロナウイルスの正式名称。SARSウイルス「SARS-Cov」の姉妹種の意味。三和 護. 『病名はCOVID-19、ウイルス名はSARS-CoV-2』. 日経メディカル, 2020/02/13.
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*20 ^ 「機能獲得研究」はそのバイオセーフティ上のリスクから、公衆衛生、安全保障、リスク評価、法律学、倫理学のパネルが、研究のリスクと利益を評価する事になっているなど、当初より論争を呼んで来た分野という背景がそもそもあった。 "Handle with care". nature, August 7, 2013 | doi: 10.1038/500121a.; 日本語版:『鳥インフルエンザウイルスの機能獲得変異研究』. natureダイジェスト, Vol. 10 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2013.131130.
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*3 ^ このモラトリアムはトランプ政権下の2017年12月に解除されるが、新型コロナ流行下の2020年4月27日に再び禁止されている。 "NIH Lifts Funding Pause on Gain-of-Function Research". National Institute of Health, December 19, 2017.
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*4 ^ 「機能獲得」(gain-of-function) は、「so-called gain-of-function」(いわゆる機能獲得) や「known as gain-of-function」(機能獲得として知られる) と表現される事もあるなど、正式名称ではなく通称扱いであるためか、ファウチ氏とコリンズ氏の2011年のコラムや、実際のエコヘルス・アライアンスのプロジェクト要旨にこの用語自体は直接出て来ない。従って、それが「機能獲得」であるかどうかの判断は、具体的な実験内容の説明による。 Fineberg, Harvey V. "Editorial: Wider attention for GOF science". Science, 27 Feb 2015: Vol. 347, Issue 6225, pp. 929.; "Doing Diligence to Assess the Risks and Benefits of Life Sciences Gain-of-Function Research". White House, the, October 17, 2014 at 3:30 PM ET.
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*6 ^ NIAID助成プロジェクト「コウモリコロナウイルス発生の危険性への理解」の成果として、29本の論文がジャーナル等に掲載されているが、そのうち13本で武漢ウイルス研究所の石正麗氏が共著者にリストされている。
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*7 a b WIV1:Bat SARS-like coronavirus WIV1 (Bat SL-CoV-WIV1)(コウモリSARS様コロナウイルスWIV1):中国のナカキクガシラコウモリから見つかったSARSの症状を引き起こすコロナウイルス。WIVは「武漢ウイルス研究所」(Wuhan Institution of Virology) の略。 Ge, Xing-Yi; Jia-Lu Li [...] Peter Daszak, Zheng-Li Shi. "Isolation and characterization of a bat SARS-like coronavirus that uses the ACE2 receptor". nature, October 30, 2013.; Cited in Segreto, Rossana and Yuri Deigin. "The genetic structure of SARS-CoV-2 does not rule out a laboratory origin" (PDF). Sience Open, September 2, 2020.
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*8 ^ 原文が「cave」のため「洞窟」となるが、これは2012年6月に6人の鉱夫がSARSのような病気となり、うち3名が死亡した、雲南省墨江ハニ族自治県の通関銅山の事で、2012年以来、武漢ウイルス研究所のチームがコウモリのフンからウイルス採取を行なっている。
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*11 ^ 2019-nCoV:新型コロナウイルス感染症の正式名称がWHOによって「COVID-19」と定められる以前の呼称。「2019 novel (or new) coronavirus」(2019年新型コロナウイルス) の略。日本の法令による「新型コロナウイルス感染症」の呼称はここから。 『COVID-19 (旧称: 2019年新型コロナウイルス、2019-nCoV)よくあるご質問について』 (PDF). Hawaii State Department of Health, 2020 年 2 月 13 日改定.
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*12 ^ 新型コロナウイルス (SARS-Cov-2) は、最初に確認された時点でSARSウイルスよりも10〜20倍高い感染力が備わっていたという意味。上記のテキサス州立大オースティン校とNIHの研究チームによる2020年3月のサイエンス誌での発表。
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*13 ^ BatCoV RaTG13:通関銅山で2013年に発見され武漢ウイルス研究所が保存していた、新型コロナウイルス (SARS-Cov-2) と96.2%の遺伝子配列の一致を持つコウモリSARS関連コロナウイルス。2020年2月3日のネイチャー誌で石正麗氏ら中国の研究チームが発表。「コウモリコロナウイルス (Bat Coronavirus) ナカキクガシラコウモリ (Rhinolophus affinis) 通関 (Tong-Guan) 2013」の略。平井良和. 『第1回「あそこへは行くな」 中国・雲南、ウイルスが潜む山』. 朝日新聞デジタル, 2020年12月10日 17時30分.
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*14 ^ 通関銅山から武漢市までの距離が直線距離で約1,515km。幹線道路経由の距離は最短でも1,700km程度になる。日本でいうと、新幹線ルートで鹿児島ー盛岡の距離に相当。
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*15 ^ 自然発生であるなら、既にSARSの10〜20倍も感染力が強かったSARS関連ウイルスである新型コロナウイルス (SARS-Cov-2) が、コウモリSARSの発生源である通関銅山から武漢までのおよそ1,600kmを、その間のいかなる人間や動物に感染させる事なくどのように移動できたのかというのがFOXニュースの指摘。
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*16 ^ 2019年秋に武漢ウイルス研究所の複数の研究者が新型コロナウイルス (COVID-19) 感染の症状を示していたと信じる理由があると、2021年1月に米国国務省が指摘している(後述)。
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*17 ^ コウモリのSARS関連ウイルスが、変異の繰り返しによってヒト間の感染力を獲得する事が出来るか?というのが、そもそもファウチ氏主導で武漢ウイルス研究所に委託された研究だったが、一方で、新型コロナウイルス (SARS-Cov-2) と96.2%の一致を示し、元来ヒト間での感染力が認められなかったコウモリSARS関連コロナウイルス「RaTG13」を、既に持っていた世界で唯一の研究所が武漢ウイルス研究所、というのがFOXニュースの指摘。(2月1日の特集第二弾で更に解説)
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*19 ^ ”The Covid-19 Origin Investigation”. Wall Street Journal, The, Jan. 22, 2021 6:50 pm ET.; 日本語版:『【社説】コロナ陰謀説広げ調査団を妨害する中国』. WSJ日本語版, 2021年1月28日 14:16JST.; 板東和正. 『コロナ起源調査は長期戦 中国が妨害か』. 産経新聞, 2021.2.9 21:27.
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