曲が必要とするならば、転がり回ってるだけでもいい──toe、アルバム『NOW I SEE THE LIGHT』
確たるそのサウンドで日本、そして世界でも活躍を続けるバンド、toe。マイペースな活動ゆえ、音源としては前作EP「Our Latest Nnumber」から6年ぶり、フル・アルバムとしては実に9年ぶり、多くのファンにとっても待望となる作品『NOW I SEE THE LIGHT』がリリースされた。アルバムには客演として児玉奈央、徳澤青弦が参加、アニメ『Sonny Boy』の挿入歌としても使用された“サニーボーイ・ラプソディ”をはじめとした全10曲を収録。佐藤健寿による灯台の写真が用いられた印象的なアートワークやアルバム・タイトルにもなっている『NOW I SEE THE LIGHT』のとおり、日々の暮らしにそっと光を照らすような優しくも力強い、エバーグリーンな作品に仕上がっている。OTOTOYでは小野島大によるインタヴューをお届け、彼らが考える“いい音源”を作るうえで目指すところとは?(編集部)
前作EPから6年ぶり、4枚目となるフル・アルバム!
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INTERVIEW : toe
toeの9年ぶりの4作目『NOW I SEE THE LIGHT』がリリースされる。揺るがぬ個性と精緻なサウンド、研ぎ済まれた音の鳴りがtoeらしさを存分に伝えながらも、しかしまるで新人バンドのような瑞々しい新鮮さも失わない、ほとんど奇蹟のようなバランスの1枚である。山㟢廣和(vo,g)と美濃隆章(g)のふたりに話を訊いた。
インタヴュー&文 : 小野島大
写真 : 太田好治
曲のなかでやりたいことが本当に10秒、5秒くらいしかなくて
──今回、スタジオ録音でのフル・アルバムは9年ぶりです。もともとtoeは寡作なバンドですが、ここまで間が空いたのは初めてです。
山㟢廣和(以下、山㟢) : 音源は出したいなとはいつも思っていて、常に作っていたりはするんです。でもどこかのレーベルに所属しているわけではないので、レーベル側からの要請とか締切とか、1年に何枚出すとかそういう契約もない。僕らがやると言わないと始まらないところもあり。それで、出したいなと思いながらも、思うだけで時間がどんどん過ぎていく……というところですね。
美濃隆章(以下、美濃) : (笑)。
──曲のアイディアや、次にやる音楽の構想みたいなものは常に頭のなかにあるということでしょうか?
山㟢 : あります。でもそのアイデアを、ワンツースリーフォーで始まって、ダンって終わるまでの、3分、4分で終わるヴォリューム、いわゆる曲みたいなものにするのに精神的な体力、パワーが必要で。やろう! と思わないとできない。アイデアはいっぱいあるんだけど、それを曲という形にちゃんとパッケージングする体力が年々落ちてきているのもあります。だから締め切りがあるとか、誰かに頼まれて、いつまでに1曲欲しいんだけど、みたいなのがあると、それに向けて頑張れるんですけど。だから(外部からの)発注モノはけっこうやっていて。自分のことは1番遅くなっちゃうんですよね。締め切りがあって作らざるを得ないっていう状況があまりないから。
──なるほど。
山㟢 : それとたぶん、僕の体感の1年の速度が、3か月くらいになってるんですよね。年々オジイサンになってきて(笑)。
──わかります(笑)。
山㟢 : (笑)。もうそろそろお盆だから、お盆が過ぎたらもう年末みたいなイメージだと思っていて。
──それは早すぎる(笑)。
山㟢 : すごく早いです、1年が。
──まあねえ。
山㟢 : だから(タームが)空いている気もしないというか。「Our Latest Nnumber」(2018年のEP)はこの前出したばっかりなのになぁ、みたいな。あっという間に5年くらい過ぎていたというか。
──常にアイデアがあるというお話ですが、最初に曲を作る、1番最初の元というか、発想の原点はどういうものなんでしょうか?
山㟢 : 家でピロピロギターを弾いていて、“あ、これ良いなぁ”とか。リフみたいなものがいっぱい携帯に入っていたりとか。ドラム・パターンだけとか。ズッズッタタッドタンみたいな、口で言ったドラムだけが入っていたりとか。あとは歌メロみたいなのを運転していてちょろっと思いついてそれを録音していたりとか。そういうのがすごくいっぱいあって。で、曲の作りかたがどちらかというと、歌メロを1から、平メロ→サビを作ってコードを作って展開を作って、みたいなことはしなくて。どちらかというと、5秒、10秒くらいのギターリフがばッと抜けてドラムと一緒に入る、みたいなのとか。その曲のなかでやりたいことが本当に10秒、5秒くらいしかなくて。そのキラッて輝いているようなポイントを、それだけだと曲にならないから、そのポイントを活かすための前後を作って10分くらいにする、みたいなイメージですね。
──5秒、10秒のために、5分、10分という曲を作る。
山㟢 : そうそう。こういうドラムが入ってこのリフが1回抜けて、ウッってなるとか、そういうテーマ、テーマというほどでもないけど、本当に何十秒かの、バンドでやったときにカッコいいじゃん思える瞬間、そういうのをやりたくて曲を作るというか。その前後のパートで凝ったことをやり始めちゃうと、そもそも見せたかったところが埋もれてしまうから、そこはうまくバランスとって。
──最初の発想の元みたいなものがスマホのなかに大量に入っていて。そのなかからピックアップして曲に育てていこうという過程がまずあるわけですね。
山㟢 : そうですね。それがけっこう大変で。膨大な、すごい量なんですよ、携帯のアレが。ずっと毎日入れているから。なにを言っているかわからないものとか、同じようなリフを違う日に入れていたりとか。ルートが違うだけで全く同じことをやっているとか、そういうのを精査して、使えそうなものをピックアップして。それでも30とか50くらいになるから。それを美濃君の家に持って行って、ふたりで話をしてまた絞っていって。フルイにかけたなかからまた曲を作る、みたいな感じですね。
──考えただけで膨大な作業ですね(笑)。
美濃 : ほんとに(笑)。
山㟢 : その作業はすごく嫌だよね(笑)。でもそれと全く関係なく普通にコードで作った曲みたいなものをそのままレコ―ディングしちゃうみたいなパターンもあったりとか。
──普通のバンドっぽく、例えばバンドでセッションをしながらなんとなくできる曲とか、そういうのはあるんですか?
山㟢 : いまはほぼないですよね。バンドやり始めのときはそういうやりかたをしていたんですけど、それってけっこう終わりがなくて。ある程度自分のなかで構成が決まっていないと良し悪しがあまりわからなくて。あと、バンドって演奏していると楽器の演奏が楽しいから、曲を作っているのに演奏の楽しさのほうが先に行ってしまうんですよね。あらかじめ決めないでやると。同じことをみんなでグルーヴ出して3分くらいやってると面白くなってきていい感じになるんですけど、それが曲として客観的にいいか悪いかは別の話といつも思っていて。作曲に関しては、どちらかというと第三者(的な目線)、編集作業が必要ですね。ロックンロール・バンドなんかは、スリーコードだけでやります! みたいなカッコよさもあると思うんだけど、僕らは入れ子構造というか。このベースが最終的にこうなって、ここにまた出てきたとか、リズムが変わってこうなったね、みたいな。バンドでアンサンブルでやってみたいというよりは、コンピューター上に配置して入れ替えたものをバンドで演奏するほうが好きで。そうなると必然的にバンドで“このリフがあるからみんなで好きなように弾いてみて”みたいな感じだと、終わらないんですよ。
──バンドとしての手癖に任せるようなやりかたではなくて、もっと工夫して新しいものをやっていきたいという。
山㟢 : 「作曲癖」があって、こういうものが好きというのは決まっているので、全く新しいものになるかはわからないんですけど、基本的には演奏することの気持ちよさみたいなものよりは、楽曲をちゃんと考えて作ることを意識しています。
──演奏をして気持ちがいいのと、聴いていていいものは違うということに気づいたのはいつごろですか。
山㟢 : どうなんだろう。でもいまのバンドをやり始めてから、曲はどうしようかっていうのはけっこう考えているかも。前やってたハードコアっぽいバンドでは、バンドで作ってたので、そこまで考えていなかったですけど。いまのバンドの1枚目くらいまではけっこうみんなで作っていたから、それ以降かな。いろいろ考えるようになりました。あとは元々はほぼインストだったので、けっこう、フィッシュとか、ジャム・バンドみたいな感じでイメージされていることも多くて。グレイトフル・デッドとか。ああいう、ずっと長く演奏するセッション・バンドみたいな。そういうのとは、自分的には真逆の音楽だと思っているので。
──いまのお話を聞いているとジャム・バンド的なありかたとは全く正反対だと思いますけどね。
山㟢 : そうですね。けっこう考え込まれたものを、これってこういう構造なんだねって見るのが好きなんです。それもなんだろう、あまり最初から難しいとことを売りにしているというか、難解ってことが最初にきちゃう曲よりも、パッと聴いてキャッチーでカッコいい曲なんだけど、よくよく聴いてみると変な拍数とか、そういうのが好きで。
──いかにも難しいことをやってますよ! っていう、これ見よがしじゃないやつですね。
山㟢 : そうそう。そこをあまり前面に出したくない、というのは曲を作っていて思っている。
──そのやりかたがアルバムを追うごとにどんどん洗練されているというか。今回のアルバムなんてその最たるものという気がすごくしましたね。
山㟢 : あ、そうですか。