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なぜ即時原発ゼロにしなければならないのか


 私がなぜ即時原発ゼロ(※)を主張するのか、その理由を簡単にまとめておきます。
※ただし、大飯原発のように電力不足回避のために稼働させることは例外として許容する。
(以下はoldmanさんとのコメントのやりとり(記事はこちら)を再構成したものです。)

Q.即時原発ゼロを主張しているが、その根拠は何か?

A.私の根拠は要約すると以下の4つです 。
① 完璧な安全性の確保は無理(どこかでわりきらなくてはならない、テロの恐怖や人為的ミスはゼロにできない)なのに事故の影響が予想できないほど甚大
② 原発は核のゴミのつけを将来世代に押しつけて現在世代がいい思いをするための道具であり倫理的に許されない
③ 福島の大事故が起こった日本では、「原発稼働」が国民にもたらす心理的な負荷は小さくない
④ どうしても原発に依存していかなければ国が立ちゆかないような状況ではない


Q.原発の安全性について、しっかりと対策を施していけば、福島のような事故はもう二度と起きないのではないか。

A.完璧な安全はありえません。テロの恐怖や人為的ミスはゼロにできません。
 加えて、政府や電力会社の主張する安全への国民の信頼がないまま再稼働されるのはごめんです。


Q.「完璧な安全性」が達成されないから原発に反対というのは、非現実的な感情論ではないか。

A.原発は事故の影響が大きすぎるため、リスクコントロールが困難です。
 確かに飛行機、車などは危険性がありながら、利便性との兼ね合いで利用されています。
 原発がそれらと違うのは過酷事故が起こった場合の影響が大きすぎることです。
 たとえば福井の原発で事故が起こって琵琶湖の水が飲めなくなるなんてことになると目も当てられません。
 妥協策として一部の経済学者が主張するように「原発に限度額のない賠償保険をかけて稼働させる」のはひとつの手かと思います。
 その場合、保険の引き受け手のない危険な原発は動かせなくなります。
 ただ、そうした保険の前例はなく、保険が成立しない可能性が高いのではないでしょうか。
 原発がそれだけ危険だということです。


Q.核廃棄物については今後長い年月をかけて対策を検討することになっている。マスコミが騒ぐほどの大問題ではないのではないか。

A.日本の国土や日本人の特性を考えると核のゴミをうみだす原発は日本に向いていません。
 日本は国土が狭く、自然災害も多いため原発の運転や核のゴミの管理に向いていません。
 また、日本人は福島の瓦礫の受け入れで大もめしていることからわかるように、繊細でリスク回避性行の強い民族です。核のゴミをうみだす原発は日本人にはそぐいません。
 さらに、現在見積もっている核のゴミの処理処分費用は今後大きく上方修正される可能性が大きくあります。
 原発は核のゴミのつけを将来世代に押しつけて現在世代がいい思いをするための道具であり倫理的に許されないと考えます。
 平成40年頃に最終処分場を建設する方針があるのは事実ですが、先送りは許されません。
 これまで生み出した核のゴミが消えるわけではありませんが、これ以上無闇に増やすべきではないでしょう。
 さらに、全量再処理という現在の核燃料サイクル方針には大きな問題があるので、今は見直しをする良いチャンスです。
 なし崩し的に再稼働をしてしまうと、見直しのチャンスを逃してしまいます。
 

Q.政治的に不安定な中東に化石燃料を大きく依存する極めて危険な現状。エネルギーの安全保障上、原発は必要不可欠では?

A.中東に大きく依存しているのは石油のみで電力への影響はわずかです。
参考資料(民間討論会事前学習資料).PDF
 これは原発が必要な理由としてよく語られる典型的なウソです。
 まず、情勢不安な中東に大幅に頼っている化石燃料は石油だけです。(参考資料35P~37P参照)
 そして、石油火力発電のシェアは10%もありません。(参考資料43P参照)
 ですから、石油が高くなっても電力は石炭火力やLNG火力の増強で十分まかなえます。
 石油がとまるとガソリンや燃料など電力以外の面で大変になりますが、それは原発で代替できるものではありません。


Q.石炭やLNGの価格が高騰する可能性もゼロではない。やはり原発はエネルギーの安全保障上、必要不可欠では?

A.エネルギー安全保障は重要ですが、危機になったときに原発を稼働させればいいわけで、それまでは原発を稼働させる十分な理由がありません。
 石炭やLNGの価格が高騰した場合は、原発稼働も考えなくてはならないでしょう。
 そのため、即時原発ゼロとしても、耐用年数を過ぎていない原発をすぐに廃炉することには反対です。
 私の主張する即時原発ゼロはゼロ稼働であって即時全原発廃炉とは違います。


Q.危機になったら原発を稼働させていいという考えは、安全や核のゴミや国民の心理的負荷は無視しており、論理的矛盾ではないか?

A.比較衡量の問題であり、論理的矛盾ではありません。
 資源価格の激しい高騰という危機が訪れた場合は、原発の欠点と比較衡量しながら原発稼働を考える必要があります。
 現状では原発の欠点の方が大きいため、原発稼働の必要性はありません。


Q.即時原発ゼロでは電気代が大幅に上がるのではないか。
 発電コストを考える場合、原発の建設はすでに完了しているのに対して、再生可能エネルギーまたは新規火力発電所はこれから新たに建設しなければならない。

A.電気代の上昇は15%程度になる可能性がありますが、原発を縁を切るためには許容可能な範囲だと思います。
 即時原発ゼロだと短期的に15%程度電気代があがる可能性があります。(本来ならどの程度あがるか政府が精査すべき。)
 中には1%でも電気代が上がるのは嫌だと思われる方もいるでしょうが、民主主義の国なので、許容範囲は最後は政治が決めるべき問題です。
 電気代が上がる理由は以下の通りです。
・原発を火力発電で代替するため、その分化石燃料費用がかかる。
・原発は稼働させなくても一定期間は償却費用などがコストとしてかかる。
・原発労働者の失業補償などの対策が必要。
 なお、電気代の高騰は短期的なもので、徐々に下がっていくはずです。
 また、原発を稼働させなければ以下の負担がなくなるため、トータルでみた負担はむしろ軽減される可能性があります。
・新たに出る核のゴミの処理処分費用(現時点では明らかになっていないが、社会的コストなどを含めると相当莫大な負担になる可能性がある)
・原発稼働による国民の心理的負担、防災準備に係る負担


Q.国家の命運を決するような重大な変化は時間をかけて実行すべき。即時原発ゼロという性急な主張は、結局は国民に跳ね返り、国民の生活を破壊することになる。

A.即時原発ゼロで国民の生活が破壊されるというのはウソ(デマゴギー)です。
 即時原発ゼロぐらいで国民の生活が破壊されることはありません。
 実際、今年もほとんど止まっていますが、生活が破壊されているでしょうか?
 影響の大きい短期に限ってみても、日本全国の年間の電気代が16兆円から19兆円になる程度の影響がでるだけです。(消費税1%引き上げと同程度の影響)
 消費税5%引き上げや円高の方がよほど影響が大きいし、国民の生活を破壊していると思います。


Q.20~30年後に原発ゼロを達成すれば十分ではないか。
 原発ゼロまで猶予期間を置き、その間に再生エネルギーや省エネの技術開発や資源問題の解決するのを待てばよい。

A.20~30年後まで原発事故リスクを残し、核のゴミを出し続けたくはありません。
 今すぐ原発をとめられるのだから、今すぐとめればよいという考え方です。(電力不足対応に必要な大飯などの原発は除く)
 原発を使うのも知恵なら使わないでやっていくのも知恵です。
 原発に頼らないとやっていけないというのは後進国的な貧しい発想ではないでしょうか。
 また、20年後のことは誰にもわかりません。
 ですから、技術的課題や資源問題がなくなっているかもしれませんし、なくなっていないかもしれません。
 長期的な計画をつくるときは楽観的に考えず、最悪のことを考えてつくるのが基本かと思います。



以上。


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テーマ : 「原発」は本当に必要なのか
ジャンル : 政治・経済

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全原発を即時廃炉にするのはまずいnoka

「全原発を即時廃炉にするのはまずい」、という考え方なんですね・・・。
原発はたしかに電力供給ができます。
しかし、国内の原子力施設すべてが電力供給できるわけではありません。

電力供給の役に立たない日本の原子力施設というと、
・高速増殖炉もんじゅ(福井)
・六ヶ所処理施設(青森)
が挙げられます。

「原発は電力供給に役立つから、全原発即刻廃炉はまずい」
この意見には、一理あります。
「電力供給のために」と原発を守るのならば、もんじゅや六ヶ所までも守る必要はないのではないですか?
「電力のためだけに」とおっしゃるなら、「原発は一時的に維持、ただし、『高速増殖炉もんじゅと六ヶ所処理施設』は即時廃炉」ではだめなのでしょうか?

Re: 全原発を即時廃炉にするのはまずいnoka

>黄朝日さま

「もんじゅ」はいち早く廃炉にすべきでしょう。
民主党や公明党のように長期的には脱原発と言っておきながら「もんじゅ」維持は矛盾していると思います。

「六ヶ所」は問題が複雑なので、単純に廃炉にすればいいとは思いません。
「六ヶ所」は核のバックエンドを担う中核基地として重要になるかもしれません。

No title

質問;原発放棄の場合、ウラン濃縮等の最恵国待遇をどのように維持しますか?
現在、米国も中国も日本を準核保有国と位置づけています。
この権利は国防上放棄できるのでしょうか?
日本の防衛の観点で、回答を期待します。

Re: No title

>渡邊さま

コメントありがとうございます。

1.日本は原発用にプルトニウムを持っている。
2.いざとなればプルニウムは核兵器に転用可能である。
3.日本は核兵器を持たないことになっているが、プルトニウムがあるため準核保有国と位置づけられている。
4.原発を放棄するとプルトニウムやウラン濃縮技術を保持する理由がなくなる。
5.そうなると、日本は準核保有国の地位を維持できない。
6.準核保有国の地位を放棄すると、日本は国防上不利になる。

整理すると、上記のようなことだと思います。

私は国防の専門家ではないので、準核保有国であることがどの程度日本の国防上役に立っているかわかりません。
本当は役に立っていないかもしれません。
おそらく渡邉さんもわかっておられなくて「そういう話もあるし、原発放棄するのは怖そうだね」という程度だろうと思います。
そこは議論の余地があるのですが、議論の前提として国防上役に立っているとしましょう。

次に考えるのは、どうすれば準核保有国の地位を保つことができるかということです。
最恵国待遇と準核保有国の関係も不明ですが、そこは目をつぶりましょう。

準核保有国の地位を保つために、50基の原発稼働が必要なのでしょうか。おそらくそうではないでしょう。

準核保有国を保つために必要な原発規模はよくわかりません。
おそらく、渡邉さんもよくわかっていないはずです。

原発は常時稼働していなくても、危機になった場合には稼働するという運用にして、原発ゼロ稼働でもプルトニウムを手放さないことだって可能かもしれません。

原発ゼロを本気で考えると言うことは、そうした可能性を探るということです。

原発ゼロ目標を宣言したとたんに準核保有国の地位が脅かされるという脅しを真に受けて、現状維持、原発50基維持を唯々諾々と受け入れる。

情けないかなそれが大人の民主党(笑)、野田(ポチ)政権の答えです。

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