待ってろドラゴン! ステーキにして食ってやる! 1月発売にして、今年最大の注目作『ダンジョン飯』の第1巻が発売されました。
ほぼ月刊誌『ハルタ』に14年2月から連載開始。作者の九井諒子作品としては『ひきだしにテラリウム』以来、約2年ぶりの単行本発売となります。
それは小さな村からはじまった
ある日 小さな地鳴りと共に地下墓地の底が抜け
奥からひとりの男があらわれた
男は1千年前に滅びた黄金の国の王を名乗る
かつて栄華を誇ったその国は狂乱の魔術師によって
地下深く今なお捕らわれ続けているという
「魔術師を倒した者には我が国のすべてを与えよう」
そう言い残すと男は塵となって消えた・第1話 水炊きというのが、この物語の基本設定。主人公・ライオス(人間の戦士)率いるパーティーもダンジョン探索に挑み、深い階層で炎竜(レッドドラゴン)と対峙していた。しかし、空腹が原因で全滅寸前のピンチに。ここは妹のファリンの魔法によって難を逃れたものの、当のファリンは炎竜に喰われていたので、取り残される形に。救出を決意するライオスと仲間のマルシル(エルフの魔法使い)とチルチャック(ハーフフットの鍵師)は、装備の質を落とさず迅速に迷宮を進むために『倒した魔物を食べる』ことを決意する。というわけで、まずは大サソリと歩きキノコを、迷宮内に住み着き魔物食を研究しているセンシ(ドワーフの戦士)の助けを借りて鍋にすることに。細かな調理方法はもちろん、大サソリの捕獲方法やスライムの構造解説など、ファンタジー世界に現実的な説得力を持たせるのは、作者の得意とするところ。全体的にも面白いのだが『妹を食べたドラゴンを自分たちが食べるというのは、問題ではないのか?』と疑問を持たせるオチも素晴らしい。
ブレイクダンス風に嫌がるマルシルかわいい。・第2話 タルトサクサクと地下2階に到達。地下深くにある黄金城の尖塔を降りる形で、ダンジョンを進んでいく。マルシルの希望に沿い、人食い植物(人間を食べるわけではない)のタルトを作ることに。一概に『人食い植物』と言っても、養土型、依存型、捕獲型など、様々なタイプがいるというのが面白かったし、魔物に殺された冒険者を生き返らせて謝礼をもらう『死体回収屋』とか、木の洞の中が冒険者が使いやすいように整えられていたりするという世界観の細かさがイイ。
受け身が取れないマルシルかわいい。・第3話 ローストバジリスク栄養バランスのいい食事を摂れていないことを嘆くセンシの発案で、バジリスク(鶏+蛇)を狩ることに。「どれも栄養価は豊富な食材だが足りていないものがわかるか」とセンシに聞かれて「常識」と答えるマルシル。バジリスクの肉をローストするのに、唯一の武器である長柄の斧を利用するセンシ。毒が体に回っているのに、しっかりと料理の感想を言う新米冒険者(その相方のエルフの魔法使いがカワイイ)と、面白い個所が満載のコメディ色が強いエピソード。しかしライオスとセンシは、出会って2日目でもうコンビネーションを使えるようになっているのか。
バジリスクの卵を探すマルシルかわいい。・第4話 オムレツ今後、魔物が少ないルートを通るので、食材としてマンドラゴラを確保しておくことに。ここまで足を引っ張っている形になっているマルシルが、ライオスたちを見返してやろうと大蝙蝠を使った独自の方法を試みる。マンドラゴラの叫び声を聞いて、意識が混乱したマルシルにかけるライオスとチルチャックの言葉が良かった。料理は、前回ゲットしたバジリスクの卵と合せてオムレツを作ります。あと、バジリスクの本体が蛇の方だと解明したドラーフ博士とは何者なんだ!?
泣き顔のマルシルかわいい。・第5話 かき揚げチルチャックが主人公のエピソード。自分の指示に従わずトラップを作動させまくるセンシと対立しながらも、最終的にはそれぞれの『領分』を学ぶという形で和解する。作ったのは、かき揚げ。大蝙蝠、マンドラゴラ、バジリスクの卵と、これまでにゲットした食材を有効活用しているのが良かった。それから、チルチャックは第1話では弓を持っているけど、ダンジョン再突入以降は武器らしいものを持っていない。もし、ガチ戦闘になったらどうするんだろう?
・第6話 動く鎧 ‐1‐この話では、料理をしません。ライオスが初めて殺された因縁の相手・動く鎧の群れに遭遇。走り抜けてやり過ごそうとするものの、行方を遮られてしまう。彼らを操っている何者かが隠れているであろう奥の部屋にライオスが単身突入するが、そこにも別タイプの動く鎧が。しかし、その行動の違和感から実は『生物』であったことを見抜く。ただ、いくら人数が減っているとはいえもっと下層まで行ったのなら、動く鎧くらい簡単に倒せても良さそうなのに。特にマルシルは魔法を使わずに杖で殴りかかっているじゃないか。
戦闘態勢のマルシルかわいい。・第7話 動く鎧 ‐2‐動く鎧の正体が、貝のような軟体生物の集合体(それぞれが筋肉の役割を担っている)であるということを、ライオスが突き止める。鎧を解体して中身を確かめるところとか、それをマルシルらに説明するところとかは、とても主人公には思えないサイコパスっぷり。センシが部位ごとに、炒めもの、蒸し焼き、スープ、焼きものと4種類の料理を作るが、チルチャックが「アイツ魔物の話になると早口になるの気持ち悪いよな……」と言ったり、マルシルが杖の先をライオスの頭に引っかけたり、一口目を食べたライオスを見て「死んだか」とリアクションしたり、小ネタ部分も面白い。そしてライオスは、動く鎧の幼体を隠しペットとしてゲットする。
ライオスが死んだと思うマルシルかわいい。・モンスターよもやま話 ‐1‐今回食べたモンスターたちの、細かい追加解説といった内容。主に、ライオスのモンスターマニアっぷりが暴走しています。個人的には、パーティーメンバーのレベルとか装備品、ステータスなんかを紹介してほしいところなんだけど、今回が『1』とついているということは、次巻以降もこのコーナーはあるということか。
先行掲載された予告編は無理にしても、モーゲンハルタで描かれた『デパ地下探訪編』は、どうにか収録されないものか。
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