【転載】東京都の朝鮮学校への補助金不支給決定への抗議声明
当会も賛同団体に入っている「朝鮮学校への公的助成を求める連絡会・東京」より、以下のような呼びかけがあったので転載します。なお、問題となっている東京都の措置について、当会では独自の声明を出していますので、そちらもご参照ください。
【以下転載】
東京都が2010年度から「凍結」していた朝鮮学校への補助金の不支給を決定するとともに、いたずらに2年もかけて行った朝鮮学校に対する「調査」について公表しました。批判の抗議声明をお知らせするとともに、東京都への抗議を呼びかけます。
私たちが指摘する東京都の問題点は、
1.「私立学校の自主性」を踏みにじり、教育内容にまで踏み込んでいる。また、結論ありきの調査である。調査自体が不当だ。
2.朝鮮学校を狙い撃ちにする差別だ。
3.朝鮮学校が「朝鮮総連の影響」を受けることは、歴史的経緯から、また他の民族学校と比して不当なことではない。
4.仮に財産管理に問題があったとしても、いきなり補助金不支給というのは異常だ。
5.子供の教育を受ける権利、民族教育を受ける権利を無視した措置である。様々な負担を背負いながら子どもを学校に通わせている保護者の存在を全く無視している。
ぜひ、みなさんも、それぞれの考えや立場から、東京都への批判の声を上げてください。
東京都のHP
http://www.metro.tokyo.jp/
などから、ご意見、抗議を送れます。HPの右や下の方の「都民の声」から送れます。
朝鮮学校への公的助成を求める連絡会・東京(代表:長谷川和男)
[email protected]
下記ブログに同じ内容を掲載
http://okketonmu.seesaa.net/
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東京都の朝鮮学校への補助金不支給決定への抗議声明
猪瀬直樹東京都知事は、去る11月1日、2010年度から「凍結」していた朝鮮学校10校への補助金(私立外国人学校教育運営費補助金)について、「調査」に基づいて最終的に不支給にすると発表した。この決定に対し、私たちは以下の理由から厳重に抗議する。
1.私立学校法のルールに反する「調査」
朝鮮学校は私立学校として認可された学校である。私立学校法第1条には「私立学校の特性にかんがみ、その自主性を重んじ、公共性を高めることによって、私立学校の健全な発達を図る」とある。そして、「私立学校の自主性を尊重するため、所轄庁(この場合は知事)の権限を国公立の学校の場合に比べて限定する(同法5条)とともに、所轄庁がその権限を行使する際にも、大学設置・学校法人審議会又は私立学校審議会の意見を聞かなければならないこととし・・・」(文科省HPより)。今回の「調査」はこのルールに反していないか。
都は、朝鮮学校が在日コリアンの児童生徒の教育に関して重要な役割を果たしていることにかんがみ、補助金を支給してきたのではないだろうか。釜山の国際映画祭の受賞作「ウリハッキョ(私たちの学校)」の監督で韓国人の金明俊氏は、「在日朝鮮人として日本の地に住みながら、自分のアイデンティティを維持させてくれる教育機関は朝鮮学校しかありません。朝鮮学校が完璧な教育機関とは誰もいいません。しかし、子どもたちに朝鮮学校は自分が誰であるかを教え、この地で朝鮮人として生きていく方法を教える唯一の学校です。これは日本の学校では絶対にできないことです。日本の学校ができないことを朝鮮学校がしているのです」と述べている。
都は、教育内容を「調査」したようだが、それ自体不当なことである。神奈川新聞の社説はいみじくも次のように指摘している。「アメリカン・スクールで原爆投下はどう教えられ、中華学校の教科書に南京大虐殺はどう記されているか。それらが問われないのは、価値観や歴史認識が異なるからといって、教育内容に政治干渉をすべきではないとの大前提があるからだ」と(2013年2月2日)。また、朝鮮学校を狙い撃ちにすることは許されない差別だ。
2.朝鮮学校が「朝鮮総連の影響」を受けることがなぜ問題なのか
戦後、在日コリアンは、奪われた言語、文化、歴史、民族性の復権という難事業に取り組んだ。日本各地に国語講習所が生まれ、それはやがて民族学校へと発展していった。しかし、それらはすべて自力で営々と進められたのである。そして、1948年9月に生まれた朝鮮民主主義人民共和国は、これらの学校を支援してくれる唯一の存在となった。ひと頃ほどではないが、今も教育援助金を、朝鮮総連を通じて送ってきているという。
例えば、キリスト教系の学校では、教団から派遣された宣教師が一部科目の授業や礼拝、生活指導を担当し、理事や評議員として運営に参画することは珍しくない。それは「特定団体の運営・教育への影響」といえよう。また、特定の科目、すなわち民族科目は、自由権規約及び子どもの権利条約により保障される民族的マイノリティ教育であり、独自性を有するのは当然である。
「特定の団体の運営・教育への影響」があるからといって、そのことが、教育に対する公的助成からの除外を正当化できるものではない。それが問題だというなら、ミッション系の学校へは公的助成をすることができなくなり、さらに社会権規約に保障されている「私立教育の自由」(同規約第13条<教育に対する権利>の3号、4号)をも侵かすことになる。都が補助金を支給している東京韓国学園の理事長は、大韓民国民団の団長がその任にあるごとく、民族団体との密接な関係をもつことは、むしろ自然なことなのである。
3.施設、財産の管理運用の問題
都の「調査」によると、施設の管理運用に一部不適正な部分があるという。日本の一部の私立学校は、それなりの公的助成を受けているが、各種学校である外国人学校への助成は皆無に等しい現状にあり、学校運営が多くの困難をかかえていることは都も充分承知しているであろう。私立大学でも、資金運用を誤って大きな損失が出たことが報道されたこともある。
問題があれば、指摘して改善を求め、それが果たされなければ、そこで補助金を減額するなりカットする方法がある。それをいきなり「凍結」し、いたずらに2年もかけて「不支給」にするのは、通常の手法でないことは明らかである。「調査」も、結論ありきの調査ではないか。
4.結び
都の「調査報告書」は異様なものに見え、それは公安当局の調査かと思われるほどである。「私学行政課」のものとしては著しく“偏向”したものというほかない。
日本政府は、高校無償化からの朝鮮学校除外を断行した。今年4月30日、国連・社会権規約委員会が日本政府報告を審査した際、朝鮮学校差別が問題となった。日本政府代表は、「拉致問題に進展がない、朝鮮総連と密接な関係にある」と懸命に弁明したが、審査後の「総括所見」では、「委員会は、差別の禁止は教育の全ての側面に完全かつ直ちに適用され、全ての国際的に禁止される差別事由を禁止の事由に包含することを想起し、締約国[日本]に対して、高等学校等就学支援金制度は朝鮮学校に通学する生徒にも適用されるよう要求する」(外務省訳)と勧告された。日本政府の弁明は通用しなかったのである。また、東京都の調査報告書には、「朝鮮人学校の資格助成問題に関する人権救済申立事件調査報
告書」(日本弁護士連合会人権擁護委員会が平成9年12月発表)からの引用があるが、この日弁連報告書は、朝鮮学校などの外国人学校ヘの公的助成を、「日本国として国庫及び地方財政から支出すべき」であるとするものである。
東京・町田市教育委員会が朝鮮学校生だけに「防犯ブザー」を支給しないとしたのは今年4月のことである。さすがに撤回されたが、それを受けたジャパン・タイムスの社説は次のように結んでいる。「今回の町田市の問題は、この国全体に吹き荒れる非常に不穏な動きの一部である。いくつかの地方自治体は朝鮮学校への補助金を停止した。今年2月20日、安倍内閣は朝鮮高校を「高校無償化」制度から除外した。これらの決定は撤回されるべきである。生徒たちを政治的な人質として利用することは間違っている。生徒たちを利用すれば、日本における朝鮮人差別を煽るだけである」(金優綺訳)と(4月12日)。それが新大久保のコリアン排撃デモを指していることはいうまでもない。
「東京オリンピック」を主催する東京都における朝鮮学校差別が、国際社会で容認される余地があるとは思えない。朝鮮学校で真剣に学んでいるあの子どもたちの顔をいま一度思い起こして、猪瀬知事に、政策の再考を強く求める。貧しさを憂えず、等しからざるを憂うというではないか。
2013年11月19日
朝鮮学校への公的助成を求める連絡会・東京(代表:長谷川和男)
[email protected]