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2024-12

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≪ ハイゼンベルグの顕微鏡;石井 茂 (著) ALL 黒体輻射は、なぜ黒体でなければならないか ≫

熱力学の基礎

総合評価:5
お薦め度:5
レベル :これから熱力学を学ぶ人~大学院生レベルと幅広く
コメント:熱力学を理解したいという人は一読も二読もすべし


以前田崎晴明著の熱力学(「熱力学=現代的な視点から」)を読みふけっているということを書いて多少その内容を紹介しました。それは私が持っていた熱力学に対する偏見「難しく、経験則だけであまり面白くない学問」という考えを、「奥が深く、そして楽しい」へと180度変えてくれました。それは非常によく整理された形で熱力学を提示してくれる田崎先生流の視点と、物事を「原理、定理、仮定…」でしっかりと区別して読者に丁寧に説明してくれる書き方が良かったのだと思います。

それ以来、敬遠していた熱力学にも非常に興味がわき、先月は清水明著「熱力学の基礎」を購入して読みました。これは熱力学=現代的な視点から」に勝るとも劣らない出来の教科書ではないかと思います。以下にちょっとその紹介をしたいと思います。

http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-062609-5.html まず、熱力学の定式化のスタイルで言えばスタンダードなものであるという印象です。但し、その明確な論理展開という意味では類を見ない教科書だと思います。

最初に多少の数学的な準備と平衡状態についての解説があった後に、エントロピーが導入されます。ここでエントロピーとは何か?ということに関してはあまり議論されません。これは理論の出発点であって、その物理的な意味はこの出発点によって構成された熱力学の体系をもって理解してほしいという立場です。一見不親切だと思うかもしれませんが、究極的にはエントロピーが何かということを説明するには熱力学を説明するしかないわけで、これは解析力学で言うところのラグランジアンに対応します。解析力学では、ラグランジアンとその最小作用の原理を与えることで力学を定義しますが、熱力学ではエントロピーとその性質としての最小エントロピーの原理を出発点にする立場です。これは熱力学の構成について色々と考えた挙句にたどり着いた結論ではないでしょうか。エントロピーから出発するのがもっとも自然で、すっきりした構造になるのだと。


清水先生(東大教授)は本の中で何度も何度も、「読者自身の言葉で、同じ結論を得る論理ステップを構成する事」を要求しています。本を読み知識を得るだけではその本当の意味は理解できないという事を、多くの学生を見て知っているのでしょう。やはり凡人は物事は自分の頭で考えないと、身につかないということなのでしょう(世の中にはごく限られた数の天才がいて、一を聞いて百を知る事もあるでしょうが、それは統計誤差でしょう、大数の法則にしたがって揺らぎは小さくなりそうです)。

読み終わった後に、私も自分の頭で多少は考えてみましたが、エントロピーとその最小原理からスタートするこの立場は非常に分かりやすいものだと思います。但し普通の教科書ではあまり議論されない、エントロピーの凸関数としての性質を徹底的に、そして一貫して使っており、これが非常に大事なのだと思います。また適宜高度な知識や陥りやすい考え違いを正すためのコメントが非常に有用だと思います。これらの箇所を読むだけでも十分意味のある教科書だと思いました。量子力学や場の理論まで踏み込んだコメントもあり、これらは大学院生でも一読の価値があると思います。

この本を読む前の楽しみでもあった、田崎流の定式化との比較もしました。二人の著者がどのような視点で、複雑な熱力学を学生や読者に定式化してくれるのか、これが私にとって読書後の楽しみでもあったわけです。今現在(趣味は時間と共に変わりえますから)の私の感想としては、「熱力学=現代的視点から」も非常に面白かったけれど、どちらかと言うと標準的な「熱力学の基礎」の方がわかり易く、特に初めて熱力学を学ぶ人には良いのではないかと思います。好みの問題もあるでしょうが、熱力学の核心でもあるエントロピーとその最小原理を出発点にしたほうが方が素早く熱力学的な思考に慣れることができると思うからです。こういった各個人の趣向に関して、二者択一の議論をしても意味がないのですが、少なくとも初学者にとっては、深く理解すること以上に、早い時期に全体を見渡すということは大事だと思います。そういった意味で、学生の人には「熱力学の基礎」清水明著(東京大学出版会)を特にお勧めします。もちろん田崎晴明著の「熱力学=現代的視点から」も是非是非読んでほしい本です。

つまりこの二冊はどちらも買って読んでくださいということです(笑)。こんなに丁寧で良く書かれた本がたった3800円(「熱力学=現代的な視点から」はもう少し安い)で手に入るなんてお買い得です。今時映画館に2回行けばこれくらいのお金はかかりますから。とは言え映画もレンタルの時代ですから、この比較はほとんど意味がなくなりつつあるのでしょう。映画好きの私にとっては寂しい事です。話をもどして、総合評価もお勧め度も私の感覚では5つ星です。兎に角お勧めです!

コメント

中心極限定理の肝

 すばらしいお話ですね。ハイゼンベルグの不確定性原理を有する、一種の振動した粒子同士の衝突を考えると、数回衝突すると等確率性が出てくると思われるが、そういった発表をする物理学者がいない。等確率の原理の確定こそが、量子力学と熱力学を分断させようと楔を打つ発言がネット上でも散見されている。だれかこのへんを研究してくれませんか~。あと、熱力学と量子力学を分断する意図をもった圧力団体の正体をしっていれば教えてほしい。

とどめはハイゼンベルグの不確定性原理

 熱力学を難解にしているのはニュートン力学との対比で学問の導入を行わないことに起因している。
同じ質点系の力学なのになぜにこんなに違うのかをわかり易く述べる必要があるのに、それを歴史的発展経緯と法則を押し付ける形がとられるのが普通であり、ここでこの学問が何をいっているのかわからなくなる人が多く出る。
 また、経験から積み上げた印象を十分作り上げた後、すこし遅れて、その背後にある数理を「統計力学」として説明し始めるが大多数のファン獲得に失敗した後なので、その数理に追いつく人間が減少する。
 あるいは物質化学で執拗に出てくるexp(-Q/RT)といわれる、アレニウス式(ボルツマン因子)をまたへんてこなラグランジュの未定乗数法で導出しようとするが、こんなものは大気の高度に対する圧力分布の依存性をモデルとして導出するほうがわかりやすい。
 意図的に学問をわかりにくくさせている原因は、国威発揚や宗教的信念を学問に持ち込んでいることにあるのかもしれないが、もしもそうであったら合理性はない。
 ニュートン力学と違うこの質点系の力学はやたらと天文学的に多い質点の挙動を運動量や位置ではなく圧力、温度で語るのだが、何故そうなっているのかを初学者に語るわかりやすいコンセプトが欠落しているのは間違いない。
 それは等確率の原理というコンセプトを導入するしかないと思っている。これはニュートンの明快な確実性の原理と対極な不確実性の原理であり、簡単に言うと未来の運動挙動がまったくわからない粒子群でも、多大な集合体であれば、数学の技法で無限大で漸近する関数群を用いて統計量として予測が可能になるのが物質(原子の甚だ多数の集合体)や統計処理的な人間社会などの基本的性質だという話である。
 等確率の原理は、まさに一瞬先は闇と思える状態を、見事に予測できるシステムに描き出すこともできるし、統計学で中心原理とみなされる、正規分布は等確率の原理から導出される拡散方程式の解であるという金科玉条主義を破壊することができるし、さまざまな産業で日々苦戦するエンジニアの主要課題の一つであるバラツキの原因の本質が理解でき、変な確率密度関数も信じないし、だからといって正規分布に強制的に当てはめることもない合理的なバラツキの制御の態度を身につけたエンジニアができる。そのとっかかりが等確率の原理なのだ。

すべってなんぼ

 熱力学を難解にしているのはニュートン力学との対比で学問の導入を行わないことに起因している。
同じ質点系の力学なのになぜにこんなに違うのかをわかり易く述べる必要があるのに、それを歴史的発展経緯と法則を押し付ける形がとられるのが普通であり、ここでこの学問が何をいっているのかわからなくなる人が多く出る。
 また、経験から積み上げた印象を十分作り上げた後、すこし遅れて、その背後にある数理を「統計力学」として説明し始めるが大多数のファン獲得に失敗した後なので、その数理に追いつく人間が減少する。
 あるいは物質化学で執拗に出てくるexp(-Q/RT)といわれる、アレニウス式(ボルツマン因子)をまたへんてこなラグランジュの未定乗数法で導出しようとするが、こんなものは大気の高度に対する圧力分布の依存性をモデルとして導出するほうがわかりやすい。
 意図的に学問をわかりにくくさせている原因は、国威発揚や宗教的信念を学問に持ち込んでいることにあるのかもしれないが、もしもそうであったら合理性はない。
 ニュートン力学と違うこの質点系の力学はやたらと天文学的に多い質点の挙動を運動量や位置ではなく圧力、温度で語るのだが、何故そうなっているのかを初学者に語るわかりやすいコンセプトが欠落しているのは間違いない。
 それは等確率の原理というコンセプトを導入するしかないと思っている。これはニュートンの明快な確実性の原理と対極な不確実性の原理であり、簡単に言うと未来の運動挙動がまったくわからない粒子群でも、多大な集合体であれば、数学の技法で無限大で漸近する関数群を用いて統計量として予測が可能になるのが物質(原子の甚だ多数の集合体)や統計処理的な人間社会などの基本的性質だという話である。
 等確率の原理は、まさに一瞬先は闇と思える状態を、見事に予測できるシステムに描き出すこともできるし、統計学で中心原理とみなされる、正規分布は等確率の原理から導出される拡散方程式の解であるという金科玉条主義を破壊することができるし、さまざまな産業で日々苦戦するエンジニアの主要課題の一つであるバラツキの原因の本質が理解でき、変な確率密度関数も信じないし、だからといって正規分布に強制的に当てはめることもない合理的なバラツキの制御の態度を身につけたエンジニアができる。そのとっかかりが等確率の原理なのだ。

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