2014年10月5日未明、最終電車が走り去った東京・渋谷のJR山手線。真夜中にスズムシの声が響くなか、JR渋谷駅から南に700mほど離れた場所に架かっていた旧東急東横線のトラス橋が、一晩で線路上空から姿を消した。
トラス橋は1927年8月から2013年3月まで、渋谷と横浜方面を結ぶ東横線の鉄道橋として86年間にわたって使われてきた。「複線下路鋼構桁」と呼ぶ形式で、支間長は31.699m、重さは123.3トン。約63度の角度でJR山手線を斜めにまたぐ。
トラス橋は東横線の渋谷―代官山駅間に位置する。同区間は開業以来、主に高架だったものの、13年3月に地下化。役目を終えた橋は、撤去されることになった。
橋の所有者は東急電鉄(東急)だが、JRの線路と交差する部分の工事は特別な安全管理などが求められる。そこで、東急は東日本旅客鉄道(JR東日本)に工事を委託。JR東日本から工事を受注した鉄建・鹿島・大林組JV(共同企業体)が撤去作業を担った。
鉄建JVが採用した撤去方法は「工事桁を使った吊り上げ引き出し工法」だ。