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Best Albums Of 2024

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年末恒例の年間ベストアルバム。”今年の10枚”は以下の通り。




※ABC順に紹介しています。作品に順位はありません。



Adrianne Lenker 『Bright Future』

Adrianne Lenker "Free Treasure"

USインディー・シーンの至宝、Big Thiefのフロントウーマンの6作目のソロ・アルバム。生ギター弾き語りを基調としたフォーマットは丹念に磨きこまれて余分なものが何一つない。まるで透き通った水のように美しく、どこまでも優しい味わい。エイドリアンの歌い手としての非凡なイマジネーションが迸る様は圧巻だ。




Billie Eilish 『Hit Me Hard and Soft』

Billie Eilish "LUNCH"

ミドルティーンでデビューして瞬く間に時代を掌握したビリー・アイリッシュ。現在もまだ23歳の若さだが、その表現は早くも熟しつつある。詰め込みすぎの感もあった前作の反省を踏まえて今回は全10曲で収録時間43分とすっきりコンパクトに。アイデアが整理されたぶん楽曲に引きの強さが生まれ、妖艶なヴォーカルはより一層魅力が増した。




The Black Keys 『Ohio Players』

The Black Keys "Beautiful People (Stay High)"

オハイオ州アクロン出身のガレージ・ロック・デュオの12作目。ベックやノエル・ギャラガー、グレッグ・カースティンら超一流どころが曲作りに参加しているのが最大のトピック(なかでも7曲に関わったベックの存在感が大きい)。強力なフックを装備したバラエティ豊かな楽曲は聴き応え十分。『Ohio Players』という表題も示唆に富む、ゴキゲンなダンス・アルバム。




English Teacher 『This Could Be Texas』

English Teacher "The World's Biggest Paving Slab"

英リーズ出身のポストパンク・バンドのデビュー・アルバム。ギクシャクしたリズムを刻むアンサンブルはソリッドな切れ味で、紅一点のシンガーのコケティッシュな歌声が耳を引く。なにしろ新人らしからぬスケールの大きな世界観が見事だ。マーキュリー・プライズを獲得して今後への期待が高まる新世代の旗手。




Fontaines D.C. 『Romance』

Fontaines D.C. "Starburster"

瀕死のロックンロールを救ったのは、やはりこいつらだった。アイルランド・ダブリン出身の5人組が放った入魂の4作目。もはや説明は要らない、聴けばわかる。そう言いたくなる問答無用のカッコよさ。世界中のティーンエイジャーの人生を変えたに違いないね。それにしてもここまでアンセムが揃ったロック・アルバムはいつ以来だ?




King Hannah 『Big Swimmer』

King Hannah "Big Swimmer"

英リヴァプール出身のインディー・フォーク・デュオの2作目。ラフでざらついた手触りの歌やサウンドは押しつけがましさのない上品な味わい。それは日本特有の美意識である「侘び寂び」にも通じる。とりわけギタリストのセンスは光るものがある。謙虚なイギリス人の奏でるブルースはゆっくりと、しかし着実に聴き手の心を侵食する。




Kings Of Leon 『Can We Please Have Fun』

Kings Of Leon "Mustang"

もしかしたら世間が彼らへ寄せる期待の大きさはかつてほどではないのかもしれない。実際のところチャート・アクションはだいぶ落ち着いたが、それは作品の質とイコールではない。この南部出身の3兄弟+従兄は「俺たちにできることをやるだけだ」と言わんばかりに己のロックンロールを研ぎ澄ませる。それを矜持と呼ばずして何と呼ぶ。




Pearl Jam 『Dark Matter』

Pearl Jam "Waiting For Stevie"

90sから活躍するベテラン。近年も別に停滞していたわけではないので「復活」とは言いたくないが、そんな言葉を使いたくなる気持ちもわかるくらい今作はすこぶる出来が良い。硬軟織り交ぜた楽曲は粒より。歌も演奏も溌溂としたエネルギーに満ちている。30年以上も最前線で戦ってきた男達はグランジがとうに死語になった時代に奪われたものを取り返しにきて、それをやってのけたんだ。



The Vaccines 『Pick-Up Full of Pink Carnations』

The Vaccines "Heartbreak Kid"

英ロンドン出身のロック・バンドの6作目。彼らといえばデビュー当時のメディアの喧騒を「俺たちに何を期待してるの?」と煙に巻いたのが実に痛快だった。肝の座りっぷりはその後のマイペースな歩みをみれば明らかだ。ひたすら腕を磨いてきたソングライティングがThe RamonesやBuzzcocksといった先達にも肩を並べる、円熟の3コード・ロックンロールを堪能すべし。




Vampire Weekend 『Only God Was Above Us』

Vampire Weekend "Hope"

USインディー・ロックの申し子の5作目。中心人物のエズラ・クーニグは生活の拠点をLAに移したみたいだけど、このアルバムを聴くとやっぱりNYのバンドだなぁと思う。都会的でウィットに富んでいて、優雅でスマートなのに茶目っ気たっぷりのポップ。文頭で「USインディー・ロックの申し子」なんて書いちゃったけど、彼らはもうそんな足枷から解かれて自由になったんだよね。



積極的に情報をチェックするなんてことは最近はもうなくなって、SNSやらなにやらでキャッチした新譜を聴く、みたいなスタンスでやってます。音楽誌のレビューを目を皿にして読みこんではCDを買ってた時代が遠い昔のよう。もうそんなことはしなくていいんだよね。今はそういう時代だから。

たとえば10年、20年、もしくはそれ以上。長くやり続けてきた連中が見舞った意地の一撃みたいなアルバムが心の拠り所になった1年でした。世間の注目度とか人気とかセールスとか、そういう意味での”旬”は過ぎたかもしれないけど、実はそこからが本当の勝負なんだよと。代表格はやっぱりPearl Jamですね。他にもKings Of LeonだったりVampire Weekend、The Black KeysやThe Vaccines。さすがにしぶとく生き残ってきただけあって、みんな強かった。なんだか勇気をもらいましたよ。

そう、まだまだこれからなんだよな。私事で恐縮ですが、今年もまた何度目かの転職をしました。本ブログでも過去に報告したことがあるので、「この人、何回転職すれば気が済むんだろう」なんて思われてるかもしれません。別に好きで転職してるわけではなくて、今回こそは本当に最後のつもりです。でも不思議なもので何度も職場を変えてるうちに労働環境はかなりマシになってきたのもたしかで。ノーストレスなんてことは全くないんだけど、少なくとも前職よりはずっとマシ。ビートルズの曲じゃないけどGetting Betterです。

あとこれもどうでもいい話ですが、来年はPCを買い替えないといけないので、出費を抑えるためにライヴやフェスは当分控えます。年始のロッキンオンソニックも2月から3月にかけての怒涛の来日ラッシュも、再結成Oasisのドーム公演も、フジロックもサマソニも指をくわえて見る所存。歯がゆいけどこればっかりは我慢するしかない。しっかりお金貯めなきゃ。

それにしても、思えば遠くへ来たもんだ。いつの間にか自分もすっかりいい年齢になって、一般的な価値観でいうところの幸せってやつはもう掴めない(そもそもそんなに欲しくもないし)。そこそこ長く生きてきたのに財産みたいなものは何一つないけど、たくさん失敗して学んだおかげで最近はわりと上手く立ち回れるようになった気がする。相変わらず人生へたっぴ、それでもそれなりに。今夜もこうして最高の音楽を聴きながら美味い酒を呑めてる俺は幸せではないかもしれないが、ラッキーだとは思う。ラッキーだったら上等だよ、人生なんてものは。たぶん。


The Verve "Lucky Man"







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