線路のパネルを並べて都市を結び、貨物輸送を行って資金を確保する、産業革命時代の鉄道会社をテーマにしたドイツゲーム(ボードゲーム)が公開されています。
『スチーム:富へのレール』公式版」です。 原題は「Steam:Rails to Riches」。

このアプリは昨年末に公開されていたのですが、メッセージが英語のみ、ルールも複雑だったので、紹介は後回しにしていました。
のちに日本語でも遊べることを知ったのですが、チュートリアルの出来が悪く、事前にゲームを知っていないと理解できないような説明で、やはり解りにくかったので再び後回しに・・・

その後、アップデートで遊びやすいゲームモードが追加され、オリジナル(アナログ版)の日本語マニュアルを PDF で読めることも解り、ようやく理解することが出来ました。
現在セール中ですし(9/25 時点)、いい加減扱っておきたいと思います。

同じ産業革命時代の輸送路建設を扱っている Brass(ブラス)と似ている部分がありますが、解ってしまえばルールはブラスほど複雑ではありません。
しかしパズル性の高い内容で、「うーん」と考え込んでしまうほどの思考性を持ちます。
ゲーム展開も毎回変わり、よく考えられたゲームですね。

この Steam:Rails to Riches は、Age of Steam(蒸気の時代)から続くスチームシリーズの第三版のようです。
スチームの初版は 2002 年の公開で、Rails to Riches は 2009 年。
大きなドイツゲームの表彰は受けていませんが、新バージョンがいくつも出ていることから解るように、コアな人気があるようです。

定価は 600 円。 買い切りゲームなのでスタミナや広告などはありません。
追加マップを購入する課金がありますが、無課金でも2つのマップでプレイできます。

スチーム 富へのレール 公式版 Steam Rails to Riches
やや解りにくいゲームなので、レビューと言うより、ルールの解説をメインとします。
そこから内容を感じ取って頂ければと思います。

まずはゲームの参加人数と対戦相手の選択。
参加人数は画面右下の「+」ボタンで増やします。
また、ちょっと気付きにくいのですが、歯車ボタンで AI の種類を変えられます。
最初に選ばれているのは最弱キャラなので、ゲームに慣れたら強い相手に変更しましょう。

スチーム 富へのレール 公式版 Steam Rails to Riches

ゲームが始まると、いきなり「入札」を行うことになります。

これは「自分の順番」の入札で、一番高額を提示した人が1番になります。
もちろん落札額のお金を支払わないといけません。

スチーム 富へのレール 公式版 Steam Rails to Riches

続いて、「アクション」を選ぶフェイズ(段階)になります。
アクションは7つあり、以下のような効果を発揮。
1番の人から順に選び、他の人が先に選んだものは取れません。

1・#1:次のターンは1番になる
2・優先輸送:次の輸送フェイズで最初に行動
3・エンジニア:そのターン、線路を置ける数+1
4・優先建設:次の建設フェイズで最初に行動
5・都市成長:都市に貨物を追加できる。$2 必要。実行された事のある都市に再実行はできない
6・機関車:機関車レベル+1。最大6。4+機関車レベルの費用が必要
7・都市化:町(村)を都市にできる。貨物も置ける。$6 必要

スチーム 富へのレール 公式版 Steam Rails to Riches

数字が大きなものほど有用ですが、次の順番は数字が小さい人からになります。
つまり入札で順番を決めるのは(ベーシックゲームの場合)最初だけです。

全員がアクションを選んだら、「建設フェイズ」になります。
ここでは3つの線路タイルを置いて、都市と都市を繋げます。

線路タイルは画面下に並んでいて、ドラッグで引っ張り出せ、任意の場所に置いて再タップで設置。
再タップ前に外側をスライドすると回転させることができます。

スチーム 富へのレール 公式版 Steam Rails to Riches

設置には費用がかかります。 川や丘に作ると少し高額に。
ただ、お金がなくなっても(ベーシックゲームは)自動的に収入が -1 され、代わりに資金が +5 されます。
これは銀行からの借り入れを表わします。
ブラス もそうでしたが、このゲームは収入をどんどん削って開発費に充てていく、資本運営的借金ゲーです。
借金が -10 になって資金が尽きたら破産ですが。

アクションフェイズに町を都市にする「都市化」や、都市に貨物を置く「都市成長」を選んだ人は、それも実行することもできます。
ただ、貨物には限りがあり、なくなったら追加できません。

全員が建設フェイズを終えると、次は「輸送フェイズ」です。
ここでは都市にある貨物を、同色の都市に運んで利益を得ます。
赤い貨物は赤い都市に、青い貨物は青い都市に運ばなければなりません。

スチーム 富へのレール 公式版 Steam Rails to Riches

都市の貨物を選択すると、どの線路を使って移動させるかを選べます。
それが自分の線路なら自分に利益が、他の人の線路ならその人に利益が出ます。
よって出来る限り自分の線路で運ばなければなりません。

また、機関車レベルが1の時は、隣の都市にしか運べません。
しかし機関車レベルが2になれば、2つ先の都市に運べます。
それはつまり、2本の線路を使うということになり、それによって利益も2倍になります。

機関車レベルは機関車のボタンを押すことで、輸送を1度パスしてアップさせられます。
輸送フェイズは2回行動できるので、1回機関車をパワーアップして、1回輸送するということが可能です。
ただし2回連続で機関車レベルを上げることはできません。

得た利益は収入アップと、勝利点獲得のどちらかに使えます。
まずは収入をプラスにする必要がありますね。 収入に余裕ができたら勝利点を増やしていきましょう。

スチーム 富へのレール 公式版 Steam Rails to Riches

貨物は最初の同色の駅に降ろされます。 1度の輸送で同じ駅は2度通過できません。

なお、輸送にかかる距離や時間は無視されます。
例えば、すぐ隣の駅に運ぶと利益は1ですが、ぐるーっと回り道をして、4つの町を巡ってから隣の駅に運ぶと、利益は5になります。
とんでもないぼったくりタクシーみたいですが、利益が最大限になるルートの構築がこのゲームのポイントなので、深く突っ込まないようにしましょう。

輸送フェイズが終わったら、収支の計算が行われてターン終了。
プレイ人数によりますが、7~10 ターンでゲームは終わります。

勝利点がもっとも高い人が勝利ですが、都市に繋がっている線路1本あたり1点、収入 $2 あたり1点になり、借金は $-1 あたり減点2となるため、最後の集計が行われるまで順位は解りません。

スチーム 富へのレール 公式版 Steam Rails to Riches

最初は原っぱのボード上も、ゲームが進むと迷路のように線路が張り巡らされ、そのうちどのルートを使ってどういう風に運べば利益が最大になるのか、頭を悩ませることになります。
そこにアクションカードの「都市化」「貨物追加」などが加わり、選択肢が豊富でますます悩むことに。
線路と一緒に、利益を上げる方法も絡み合っていくのがゲームの面白さですね。

また、ルートが増えて鉄道レベルが上がるほど利益を得られるため、後半になるほど収益が増します。
序盤に負けていても逆転可能で、長期的な輸送戦略も必要になります。
とは言え、線路と貨物の取り合いも起こるため、計画通りにいくとは限りません。

ここまでに述べたのは、「ベーシックゲーム」と呼ばれる遊びやすくアレンジされたルールです。
本来のルールは「スタンダードゲーム」で、ベーシックとは以下の違いがあります。

・ターンの最初に収入を減らして、銀行からの借り入れを行う。
 ・建設中にお金が尽きても自動で借りられなくなる。
・順番は毎回「入札」で決める。
 ・#1のアクションは「次の入札で1回パスできる」になる。
 ・アクションの実行に費用はかからない。
・機関車にレベル分の維持費がかかる。

スタンダードゲームは出費がかさみやすいルールで、借り入れも自分で行わないといけません。
借りすぎると収入が減ってムダになりますが、終盤までは入札と建設のため、十分な資金を調達した方が良いですね。
入札に参加せず切り詰めていく方法もあり、「リスク」の低い AI はその戦法を取ります。

スチーム 富へのレール 公式版 Steam Rails to Riches
※こちらはマップ選択画面。 現時点(2016/9)で初期マップが2、有料追加マップが4あります。
追加マップには特殊ルールが付加されています。


重量級のボードゲームと言えますが、プレイ時間やルールの複雑さではなく、思考性の高さで「重い」という感じのゲームでしょうか。
やればやるほど、理解すればするほど、ボードと睨めっこしながらあれこれ考える時間が増えていきます。
もちろん、それが楽しさでもありますね。

AI も上位のキャラはなかなか手強く、複雑な線路の中から最適なルートを判断して来ます。
コンピューターが強くなりやすいゲームでもあるでしょうか。

ややマニア向けの、ドイツゲームのファンなら押えておくべき作品だと思います。

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