海外で人気の「基本無料+課金型」ゲームの特集、3回目。
今回は世界的に定番のパズルゲーム「ビジュエルド」のクローン(模倣作)の1つである、キャンディを消していくマッチ3ゲームを取り上げたいと思います。
Candy Crush Saga」です。

※現在はアプリ名が「キャンディークラッシュ」に変わっています。

このゲームは日本でも人気ですから、ご存じの方が多いでしょう。
世界各国の無料アプリランキングで上位を維持しており、おそらく現時点で、世界で一番ダウンロードされているアプリだと思います。

正直ゲームとしては、目新しい点は何もありません。
ゲームシステムは一般的な「マッチ3ゲーム」であり、付け加えられている要素も既存のものばかりです。

しかし定番のシステムをそのまま使ってるからこそ、無難に遊べるというのもあります
それは日本のソーシャルゲームユーザーが、俗に言う「ポチポチゲー」を延々とやり続けているのと似ています。
水戸黄門の如く、やはり定番は強いってことですね。

Candy Crush Saga

ズーキーパービジュエルドのような、一般的な「マッチ3ゲーム」です。
任意のキャンディを1つ上下左右に1マスだけ動かして、同じ色のキャンディを縦か横に3つ以上並べると消すことが出来ます。 消せない場合は動かせません

ズーキーパーやビジュエルドと違うのは、まず(一部のステージを除き)時間制限がないこと。
じっくり考えながらプレイして構いません。
ただしステージごとに「移動回数」が決められていて、この回数以内でクリアしないとやり直しになります。

もう1つはステージクリア型のゲームであり、クリア条件がステージごとに違うこと。
ゼリー(色の付いたマス)でキャンディを消し、画面内のゼリーを全て消したり、上から落ちてくるフルーツを画面下まで落として回収するなどの条件があります。
クリア評価は★1から★3まであり、スコアによって付けられますが、★1以下のスコアしか取れなかった場合はクリア条件を満たしていてもやり直しとなります。

キャンディを4つ並べると一列をすべて消すスペシャルキャンディが現れ、T字やL字に消すと爆発して周囲のキャンディを消すスクロールが、5つ並べると任意の色のキャンディを全部消せるカラーボールが出現します。
4つ消しや5つ消しを見逃さないのがゲームのポイントですね。

内容としては、クリア条件があること以外は、まんま「ビジュエルド」です
ズーキーパーのようなアクティブ連鎖(コマが消えている最中でも連続して動かせるシステム)はないし、クリア条件なども Call of Atlantis など、今までにもあったものに過ぎません。

クリアすると残っているスペシャルキャンディがまとめて破裂し、さらに移動回数が多く残っているとスペシャルキャンディが追加されたり、ランダムにキャンディが消えて大連鎖が起こるなどのしかけがあって、それは爽快感があって良いのですが、クリア後のボーナスであり、ゲーム自体に影響するものではありません。

Candy Crush Saga
※クリア時に残っていたスペシャルキャンディがまとめて炸裂!
クリアの達成感が高まるし、「スペシャルキャンディが残ってたのにもったいない」みたいな感じがなくなるので良いですね。
スペシャルキャンディとスペシャルキャンディを合わせると複合効果が発動するオリジナル要素もあります。
右はステージマップの画面。 ペーパークラフトのようなデザインが非常に雰囲気があって良いです。


ゲームとしての難点は、ハッキリ言って「運ゲー」なこと。
ビジュエルドズーキーパー型のマッチ3ゲームと言うのは「コマを1マスしか動かせない」「消せないとコマを動かせない」というシステムのため、動かせるコマが限られています。
それでコマの配置がランダムですから、「任意のマスで消したい」という場合、そこに消せるようにコマが出てくれないとどうしようもありません

それなのに動かせる回数に制限がありますから、コマの配置によってはクリア不可能だったりします
最初のうちはかなり簡単なのですが、ステージ 20 ぐらいになると、何度もやり直さないとクリア出来ないようなステージが増えてきます。

ただ、「運ゲー」であるからこそ、運が良いとあっさりクリア出来ることもある訳で、この辺はライトユーザー向けのゲームとしては「うまい」部分と言えるかもしれません。
クリア出来そうで出来ないぐらいの移動回数になっているため、思わずクリア出来るまで繰り返してしまいますし、移動回数を増やす課金アイテムも使いたくなります。 この辺の誘導もうまい印象です。

課金要素はかなり多く、一時的なアイテムの購入や、永続的なパワーアップの購入、エリアのアンロック課金などがあり、ゲームオーバーごとに課金アイテムを勧められたりもします。
しかも永続的なパワーアップはビックリするぐらいの高額で販売されています。
加えてミスするごとにライフが減っていき、なくなるとしばらく経つまでリトライ出来なくなります
ライフは 30 分で1回復、最大値は5のため、全部なくなると2時間半ほどはプレイできなくなります。

ただ、このゲームの場合は無課金でも普通に遊べるので、こんなに課金要素があっても「課金ゲー」という印象をまったく受けません
前述したように難関ステージでも運次第でクリア出来るし、マッチ3ゲームとして相応のパズル要素があり、さらにじっくり考えながらプレイするためプレイ時間も相応に長く、ライフが少なく感じることもあまりありません。

「無料でこれだけ遊べれば十分」というぐらいに遊べて、そのうえで課金があるので、「いやらしさ」のようなものが少なく、これも人気の理由の1つだと思います。

Candy Crush Saga
※課金アイテムは使い捨ての割には結構高い。 ただ、何度もリトライしていればそのうちクリア出来たりするので、必須なものではありません。
グリーやモバゲーみたいにガツガツした宣伝文句を並べてこないので、その点でも遊びやすい印象を受けます。
右はある程度ステージが進むと出現する新エリアをアンロックするためのクエスト。
しかしこのクエスト、1つ進めるのに 24 時間が必要で、それを3つやらないと達成になりません。
85 円の課金か Facebook のフレンド紹介ですぐアンロック出来るのですが、さすがに 72 時間制限ってのは・・・ これさえなければなぁ。


ゲーマーの私としては、このゲームは斬新なアイデアもなければ運の要素も強すぎで、「ゲームとしては」あまり評価できません。

ただ、定番のゲームを定番の形を崩さずに、じっくりと遊べるものにしているところが、大ヒットの要因なのだと思います。
実際、自分もずっとやり続けてるんですよね。 なにか無難に遊べる楽しさがあるというか・・・
ヒマになったら起動したくなる、そんなアプリです。

Candy Crush Saga (iTunes が起動します)


※以下の文章は 2013 年時点の状況を元に書いている文章なので、ご了承下さい。


最後に、このゲームがヒットしているもう1つの理由で、また世界でヒットしているアプリの紹介の総括として、これらのゲームに共通して言えることは・・・
演出やグラフィック、サウンドなどのクオリティーが、基本無料のアプリとしては高いことでしょう。
このゲームはクオリティが特別高い訳ではありませんが、「スマホレベル」とは言えます。

日本ではまだガラケーのブラウザをベースにしたものや、ガラケーインターフェイスを踏襲したアプリなどが存在していて、「時代はガラケーからスマホのネイティブアプリに変わりつつ・・・」とか「いや、ガラケーブラウザ型もまだいける」とか言われてたりしますが、そもそも海外にはガラケーアプリの時代なんて存在しません

欧米の携帯ゲームアプリが本格的にスタートしたのはスマホからな訳で、ガラケーのような旧世代のシステムのゲームでそこに打って出ようというのは、まさにスーファミやプレステの時代にファミコンのゲームで勝負をかけるようなもの。

加えて日本の(ポチポチ型の)ソーシャルゲームはガラケーでも遊べるゲームとして作られていて、それが定番化した訳ですが、欧米はスマホや PDA(スマホ以前の PC 端末)からスタートしているため、スマホレベルのゲーム性が普通になっています。
つまり一般のユーザーが基準として考えているクオリティが、海外の方が一世代上

スマホレベルのゲーム性に慣れた人の地域に、今更ガラケー時代のゲーム性のアプリを売り込んでも、そりゃ通用しないよね、そんなものは定番化しないよね、って話です。

中国は携帯機器の普及自体が遅かったこともあり、今年に入ってソーシャルゲームが(戦慄を覚えるほどに)大流行していますが、欧米では日本のソーシャルゲームは、日本のスタイルのままでは厳しいだろうなという印象です。
さらに中国に関しては、中国製のソーシャルゲームがもの凄い勢いで出ているので、そこに日本のメーカーが入り込む余地はないと思われます。

結局のところ、日本の携帯電話は「ガラパゴス携帯」と揶揄されていましたが、そのガラケーの中で育ったゲームも「ガラパゴスゲーム」なんだろうなと思います。
ガラケーが世界に普及しなかったように、ガラゲーも世界に普及することはない気がしますね。