ゲッサンにて連載中の島本和彦「アオイホノオ」通算３４回目です。

激動の１９８０年が終わり、怒涛の１９８１年へ――。
作者である島本和彦が８２年の２月にデビューしている事から考えても、焔燃にとってこの１年はかなり重要な意味を持って来るはずです。
その彼が通っている大阪府は阪南地区にある大作家芸術大学・映像計画学科。
ここには一体何を計画したらいいのか今一つはっきりしない学科を専攻する者たちがおり、ここを卒業したら何になれるのか、教師にすら分からない状況にあるらしい。
そんな中、「卒業」をタイムリミットに設定する焔。
「卒業までに！！」
「ここを出られなければ俺はおそらく終わり…」
まるで信用がない大学の講義（笑）。

一方、山賀・庵野たちの住む下宿にＯＢが帰って来た様子。
そのＯＢはここの出世頭で、何とＴＶ局で働いていると言うのです。
そんな夢の様な話にうっとりする山賀博之。
早速そのウワサのＯＢの話を聞く為に、みんなで部屋に押しかけたのだが…！？

「やっぱり大変だけどね。やり甲斐はあるよ！」
ＴＶのスターなんかにも「当然毎日アレよ！」と自慢する鳴上先輩。
そんな彼の作品も週に１、２回ＴＶに出るのだと言う。
“スーパー先輩”と呼ばれているというこの先輩。
実はＴＶの字幕スーパーを書いている人だった！？

「超」の意味のスーパーだと思って聞いていた山賀たち。
実は「アレよ」とは廊下ですれ違うという意味だった様子。
かなりトーンダウンしてしまい先輩の話を聞く事も辞退する一同。
「俺の出世頭のイメージと違う！」
「ああ、僕も…ＴＶ局はスゴいけどな！！」
そんな先輩がこの大学の出世頭？
「俺は正直今――あの大学にいたらヤバイ気がしてきたんだが！」
焔同様、大学に居続ける事に危機感を感じる山賀たち。
対する庵野は“きっと俺達の知らない出世頭も沢山いるんだよ”とは言うのだが…！？

そんな庵野秀明や島本和彦を輩出する事になるこの大学。
結局、その彼らこそがこの大学の出世頭という事になるのでしょうか…？



そんなある日の授業で映画の試写会の招待券を受け取る焔たち。
何でもその映画を観て分析したレポートを３枚以上書くのが今回の課題らしい。
課題に相応しいテーマが深そうな邦画を観る事になった焔たち。
だが、その焔はアニメはともかく普通の邦画を深読みするのは今一つ自信がないと言うのです。

高校時代、映画マニアの塾講師からクロサワ映画を語るのを聞かされてもついていけなかった焔燃。
その彼にジョウという友人が、つっかかって来る事に。
「お前に…わかるかな？この映画…」
そんな彼の言葉に“確かに自分は感動出来ないかも知れない”と自覚する焔。
だが！？
「その時は俺の勝ちだ！」
予想外の答えを聞かされ訳が分からなくなるジョウ（笑）。

感動出来ない自分に問題があるのではなく、あくまでも感動させられない作品の方に問題があると主張する焔燃！
こういうのは感覚の問題だけに、強要すればケンカにしかなりません。

実はこの２人、一緒に映画を見に行って一度もめていた様子。
作品はマイケル・ダグラス主演の「ランニング」で、同じ父親マラソン映画として「マイウェイ」の方が上だと感じた焔はあまり感動出来なかったらしい。
対するジョウは感動でボロ泣き状態。
この時も彼は涙を流せないのは焔の方に問題があると主張していたのです！

「マイウェイ」は曲がいいだけで騙されているとまで言うジョウ。
「何も知らんくせに！！」
実は高校３年間陸上部で頑張った彼から見て、高校１年の時だけ陸上部にいた焔は全てが中途半端だと言うのだ！
映画に泣けなかったと言うだけで、これまでの人生すら否定される焔（笑）。

しかし…こういう感覚というのは分からなくはないですね。
これまで自分が頑張って来た「陸上」に関する映画ならそれだけで他のジャンル以上に思い入れが出来るはず。
自分がこれほど感動したというのに横でしらけた様な顔をされれば言いたくない様な事も言いたくなるというものです。
とはいえ、対する焔の感覚も分かるんですよ。
昔、映画好きな友人の付き合いで映画を見に行った時、あきらかに興奮していた彼に対して自分はもうひとつな感じがしていました。
つい「あそこがもうちょっとなあ」とか言っちゃったけど、今にして思えば相手を不愉快にしただけで言うべきではなかったと反省しております（苦笑）。

そんな課題の試写会に行った焔。
学校が招待券を用意しただけに試写会に来ているのは同じ大学のいつもの面子だった様子。
こういうのは映画会社と大学側で何か取引みたいな事があったりするのかな？
その試写会で衝撃を受ける焔。
何と、そこで「さよなら銀河鉄道９９９」の予告編が流れたのだ！

前作で完全に終わっているはずなのに続編が出るという衝撃！
これは自分も当時感じましたね。
何がどうなって続編なんて出来るのか、と。
当時、テレビシリーズが続いている中映画第１作が登場し、原作でもどういう結末になるのか分からないうちにオチが発覚するという事態になっていました。
その為当時の自分はＴＶシリーズのオチが見えた感じがしてしまい、アニメが原作不足でオリジナルをやるようになってから時々しか見なくなっちゃったんですよ。
当時何で続編を最初に知ったのかは忘れましたけどＴＶで見た予告から察したのは原作のその後の世界。
原作が終わるのが８１年で、当時の自分も作者の松本零士がこの「さよなら～」を漫画として描くとは思ってはいませんでした。
（結局、原作のラストが惑星大アンドロメダと言う事で、内容は第１作でありながら「さよなら～」の方も多少フォローする形になりました。）

その「さよなら銀河鉄道９９９」といえば印象的だったこのエンディングです。
第１作のゴダイゴもかなりインパクトがありましたけど、このエンディングもまた「９９９」を代表する歌になっていると思います。

と言う事で、結局、課題邦画を観る前に予告編で舞い上がってしまった焔（笑）。
そんな焔がデビュー作に動き出すのはいつだ！？

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