Webではバジェット勝負より、機動力&継続力の勝負
特にWebそのものが単にプロモーション以上の役割を果たすビジネスモデルの場合はそうだといえます。わかりやすいところではAmazonだったり、マネックス証券みたいなところもそうでしょう。これはWebで何かブランディングなりマーケティングなりを行っていく予算がそれほど超大手企業でなくてもどうにか手が届く予算であり、かつその予算の使い道もマスマーケティング的なスポットに発生するものではなく、きちんとやればちゃんと蓄積されるものであるという性質もあることが関係しているのでしょう。
そのため、特別大きなバジェットをもつ企業が有利というよりも、素早く的確な施策を行い、かつ継続的な姿勢でWeb戦略に取り組む企業のほうが有利になるという傾向を反映してのものでしょう。
こういう傾向があるからこそ、恐竜並みに巨大かつ動きが散漫な大企業よりは、比較的身軽で、かつある程度の長期的なマネジメント力をもった企業がWebブランディングにおいては有利な立場に立てるのだと思います。
差が開く仕組み
Webブランディングに限らずですが、人の認知が勝負に関わるものの場合、差が開く仕組みは結構単純だったりします。例えば、初期段階では同じ10点の持ち点をもつプレイヤーAとBが、それぞれ同じゲームで点数を稼ぐ行動をとったとします。このゲームでは持ち点10点につき、行動1回当たり1点プラスされることにしましょう。その際、AとBでは、行動を起こすスピードが2:1で、Aは1ヶ月に4回行動を起こし、Bは1ヶ月に2回しか行動できません。
さて、最初の月が終わると、Aの持ち点:14点に対し、Bの持ち点は12点と差がつき始めます。さらにもう1月たつと、A=19.6点に対し、B=14.4点となります。これが5ヶ月すぎると、A=約53.8点、B=約24.9点と大きな差となります。
これが1年経つとどんな差になるかわかりますか?
なんと、A=約566.9点、B=約89.2点ととんでもなく差が開くわけです!
2年後には、約32142:約795と、もはや天と地ほどの差になります。
この効果がどれほど強烈かわかりますよね。
実はこれが施策の効果が加算的に蓄積され、かつ施策実行スピードが差を生むWebブランディングやマーケティングにおいて、差が開く仕組みです。
よく言われる先行有利性だったり、先に述べたような老舗と新興企業の差が縮まる仕組みもこんな形で実現されていると理解してよいと思います。
アルファブロガーと呼ばれるような古参のブロガーが多くの注目を浴びるのもこういう仕組みが関係しているといえます。
量と速度
もちろん、先の算数では、AとBが常に同じ速度で、同じゲームの仕組みに従って点数を加算していくという単純な例をみましたので、現実はもうすこし複雑なゲームの仕組みがあると思います。それでも、加算的かつ蓄積的、そして、それゆえにスピードと継続性がものをいうという点では、それほど間違ったロジックではないと思います。株式会社ホットリンクが2006年9月4日に発表した「企業サイトに対する消費者の書き込み意識調査」によると、「どのような企業サイトであればより信用できるか?」という問いに対する回答として、
●どのような企業サイトであればより信用できるか?-「情報量が多いサイト」77.7%、「更新頻度が高いサイト」69.9%
どのような企業サイトであればより信用できるかを質問したところ、「情報量が多いサイト」、「更新頻度が高いサイト」との回答が多かった。ついで、「製品・サービスの利用者の意見(口コミ)が載っている」(64.1%)との回答であった。
という結果が出ています。
これなんて、量と速度が思いっきり、信用という質に変換されている良い例です。
当然、ブランドには信用がつきものですから、これはかなり考えさせられる調査結果だったと思います。
実は、こういう部分があまりWebに慣れていない企業のWeb担当者やマーケティング部門の方、ブランド室の方には、理解されていない部分なのかなと思ったりします。
蓄積され、加算され、それゆえにスピードと継続性が要求される。Webでは情報も、リンクも消えずに蓄積されることが多いですし、ブログやSNSの流行などみてもわかるようにスピードと継続性の重要性はどんどん増してきています。
でも、それが普段、Webに関わっていない人にはなかなか体感的にはとらえにくいのかもしれませんね。もちろん、それが一般の人であればいいのですが、企業でマーケティングやブランディングを担当されている方で、かつ自社のWebに関する何がしかの責任をもたされている方なら、ちょっと問題だと思います。
また、ご自身では十分それがわかっていても、なかなかそれを社内に伝えていくことがむずかしいといった問題もあるのでしょう。
そうなると、いま動いているところと、まだ動けていないところの差はどんどん広がっていくのだろうなと思います。
初期値のほんのちょっとした差があとでとんでもない差になる世界ですので。
そういうカオス的なところだからこそ、ブランドが意味をなすということだったりもするわけです。
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この記事へのコメント
GOTTi
私自身、この部分を検証できるようなデータも知識も持ち合わせていませんが、感覚としては、確かに「複利」的な差の開き方になっている気もします。
tanahashi
私も明確にこれを裏付けるデータを持っているわけではありませんが、自分のこのブログの数字(アクセス数、ブックマーク数)だったり、お仕事で手伝わせていただいてる企業のサイトの数字を見たりすると、数字が伸び始めると、その伸びの速度が速くなる傾向は感覚的にもみることができたりします。
なので、マルコム・グラッドウェルの『なぜあの商品は急に売れ出したのか』だったり、お金持ちほど豊かになるといったパレートの法則などと比べてみて、きっとここで書いたような傾向はあるのだろうなと思います。
GOTTiさんのいうとおり、パレートの法則なんかはまさに複利的な法則性をもつものだったりしますので。