ゼノシリーズとファイナルファンタジー・18年の見えない相克 XenobladeXリリース記念エントリ
ドラゴンクエストとファイナルファンタジーが上手く競い合い、日本ならではのRPGの歴史を作り上げていた最良の時代は今振り返ればファミコンからスーファミまでの時代までではないだろうか。
いまでもちょっとしたライバル関係みたいに持ち出されるが、実際両者が影響しあってたのはPS時代の手前くらいまでだと思う。スクウェアとエニックスが合併して以降はできあがったライバル関係を装っているが、もはや交わることのないすれ違いを感じる。
ではPS以降のファイナルファンタジーとある種対となり、影響関係を感じられる存在は誰もいないまま、その映像技術やグラフィックス、そしてゲームメカニクスの相反するデザインを邁進しつづけていたのか?というとそうではない。いたのだ。それは同スクウェアから始まった現モノリスソフト・高橋哲哉のゼノシリーズだ。
単なるブランドや売り上げのパワーバランスからすればピンとこないかもしれない。ゲームメディアにしたってこぞってこの対立を取り上げたりはしない。だがゼノギアスが裏・FF7と言われ戦略的にリリースされた縁は、奇しくも現在に至るまで続いているかのようだ。それはオープンワールドを謳うFF15に対して、WiiUにて発売される新作「ゼノブレイドクロス」に至るまで。
ファイナルファンタジー7の表と裏
7以降のファイナルファンタジーシリーズと、ゼノシリーズ。それはPS以降の2つのAAAクラスのRPGで、水面下に存在していたのではないか?と見える対立。ふたつの発展や逡巡はシングルRPGとしてグラフィックやゲームメカニクスを変貌させてきた部分だけではない。現実に似通った目的や方法を持ちながら制作しているスタジオの経緯に至るまで、まるでコインの表と裏だ。
「FF7」によってネクストレベルに達したFFシリーズは、野村哲也を筆頭に豪華なグラフィック・キャラクターデザイン、そしてムービー演出によってシリーズを進歩させていく。そこには毀誉褒貶があったとはいえ、現スクウェア・エニックス内でも重要な位置に付き、ビデオゲームシーンのなかで高い評価と地位を得た。
一方裏・FF7として売り出されもした「ゼノギアス」そして高橋哲哉は、その構成からその後の経歴に至るまで綺麗なくらいに裏側を進むことになる。FF7がキャラクターはリアルタイム・背景はプリレンダ2dという当時ならではの3dの構成だったのに対し、ゼノギアスはキャラクターはドット2Dでマップがリアルタイム3Dという構成、そしてムービーはアニメを使用。ニーチェやユングの引用による衒学的なストーリーテリングなどなど演出の方向性は同じだがその方法は対照的だ。
やがて高橋哲哉のチーム自体もFF7のチームが通った栄光と対照的に、独自の経歴を歩むことになる。「ゼノギアス」の販売本数が目標に満たなかったとのことから続編は見送られた他、スクウェアの経営方針と反する形で独立することになる。(近い時期に「聖剣伝説レジェンドオブマナ」を制作したチームもブラウニーブラウン(※現在は1UPスタジオ名義)として独立した。)
このあたりのちょっとした兄弟関係に関してはゼノシリーズを追いかけてるブログ「贖罪のトラジェディ」さんがまとめている。 両作品のフロントマンである野村哲也と高橋哲哉に関しての見立てがおもしろいが、ともあれ2000年を過ぎてからの日本のシングルRPGにおいて可視化されていないライバル関係なのではないか。
そしてFFシリーズとゼノシリーズの紆余曲折ある相克
気持ちが悪いくらいにFFとゼノシリーズの見えない相克関係は振り返れば随所に存在している。「FF10」によっておそらくは「アンチャーテッド」のような鮮やかなムービーの歩みとゲームプレイの連動を実現した極致に行った。一方、ナムコがパブリッシャーとなったモノリスソフト第一作「ゼノサーガ」はもはやなりふり構わない、一回10分を超える膨大なムービーの連続や、後の海外AAAタイトルのやり口みたいな3部作エピソード制、ニーチェの引用をはじめとした衒学的な構成などなど…膨大なファクターの闇鍋だ。だがそれは「ゼノギアス」の2枚目のディスクと同様に破綻をきたす。
この時点での対立はFF7とゼノギアスのデザインの方向を突き詰めた末の結果のようだ。FF10は洗練された映画的進行とゲームプレイを混ぜ合わせた完成系を見出している一方、ゼノサーガは搭載したい要素を引き算することなくぶちこみ、制御することがままならないでたらめなカオスだった。栄光と悲惨はこの時点では分かれることになる。
だがしかし過剰なムービー演出やキャラクターにゲームデザインの主導権を預けた進歩の方向から、追従する形になっていただろうゲームメカニクスの方面にて変化が訪れる。そう、MMORPGのメカニックのシングルRPGへの接続だ。
やはり「FF11」がまず思い浮かぶが、それも含んだ前史としてソニーオンラインエンターテイメントによる1999年の「エバークエスト」 が以降のFFにもゼノシリーズにも大きな影響を与えている。という。こう書くのはオレがやってないからで申し訳ないんだが、リンク先を読んでもらえればフルレンダリング3Dによって息づく世界の中で数々の種族とのイベント、そしてヘイトシステムなどなど・・・
シングルRPGとして「FF12」は存分にMMO式の生きた世界としてイヴァリースを描く。そして遅れながら2010年の「ゼノブレイド」は圧巻である。巨神と機神の残骸の下で暮らす人類みたいな絵面が素晴らしいのはもちろんだが、ここにある意味で「ゼノギアス」から培われてきたモノリスソフトのある特性が完全に発揮されているからだ。
そしてFFとゼノシリーズの相克の果ての現在
それはリアルタイムレンダリングで広大に広がる幻想的な風景の凄まじさだ。FFがキャラクターにグラフィックスのウェイトを裂いているのと対照的に、ゼノシリーズは「ゼノブレイド」まで自覚的ではなかったにせよゼノギアスの頃から広大な風景の中を疾走するメカニックという幻想的な風景を見せてきた。バベルタワー~天空都市シェパトあたりのデザインは当時のPSのマシンスペックであろうと それがMMOスタイルを得たことで水面下で持っていた特性を爆発させることになったと思う。
90年代の何でもぶちこめたマルチメディアのカオスも超え、その後のMMOも、オープンワールドというデザインのパラダイムも通過した現在はクリエイティビティの純度は上がっているとも言えるかもしれない。
FFは究極的にはストーリーも世界観もどうだっていい、キャラクターデザインとグラフィックスの美麗さが担保されていればそれはそれで気持ちよく間違ってはいない。「FF15」はオープンワールドトレンドに乗っ取ったとのことだが、ゼノシリーズと比較して10数年前とある意味で逆転したかのようだ。野島一成をはじめ世界観を締め上げる人間はいなくなったせいなのか、ファッションRoen、新宿登場、突然モンスターハンターの如き草原を高級車でドライブ。闇鍋だ。「龍が如く」が如くカオスだ。FF7から18年、FF7というクリエイティビティの純度を上げた結果かもしれない。
ゼノシリーズは当初こそカオスからスタートしたのに対し、むしろ水面下に持っていた広大で幻想的なイメージの風景や世界を存分に生かすことが可能なスタイルへと純度を増していった。いよいよリリースされる新作「ゼノブレイドクロス」はその風景の広大さはもちろん、そこを駆け、飛び回るメカニックの美しさは「ゼノギアス」のバベルタワーを上るときや、そして「ゼノサーガEP3」でE.Sに乗りメルカバの幻覚的な内部を飛んでいた記憶と直列だ。
FF7、そしてゼノギアスから18年。日本のRPGはその間に数々のパラダイム変更に出くわしたが、それらをクリアしながら未だ何らかの前進を見せようとしてる2つの相克だ。ただ一つ、どっちにせよ主人公デザインかっこわるいことを除けば。
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コメント
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しかしこうやって見ると日本のRPGの世界観はかなり独特な物が多い気がする
ロードオブザリングやスターウォーズの規律に囚われないというか
投稿: 鍋にタラは絶対入れる派 | 2015年4月20日 (月) 05時09分
野村哲也と高橋哲哉って、そういえばどっちも「てつや」なんですね(笑)。
何だか限りなく相似でありつつ、正反対であるところに宿命染みたものを感じます。
表と裏でありつつ、最新作で「オープンワールド、自動攻撃、特徴的な主人公の武器」など、結果として同じような境地に収束していってるのは、一種の感慨を覚えますね。
(あーでも野村哲也さんはキングダムハーツをFF7の系列上に考えてる節があるから、KH3とゼノブレイドXを比較するのも面白いかもしれません……?)
投稿: 灯油 | 2015年4月20日 (月) 16時31分
最後の一文にはちょっと首を傾げてしまいますね。FF15は固定の主人公でゼノブレイドクロスはプレイヤーの手で生み出すアバター制ですし
主人公に重点を置くと土俵が違う気がします
投稿: ANIMA | 2015年4月21日 (火) 13時59分
ちなみにスターオーシャンの新作のキャラデザもなんか気持ち悪く思うんです。
ゼノブレイドXの背景ってアニメSAOにも似てるしこっちが日本のRPGの王道的ですよね。FF15はまだほかにも色んなマップがあるのかもしれませんが、体験版の限りだとまさに「観光名所から外れた何もない場所」のリアリティがありました(笑
そういえば「二ノ国」はプレイされたんでしたっけ?PS4で続編なんて噂もありますけど、好きだったし出るといいなぁ
投稿: saboo | 2015年4月22日 (水) 00時06分
野村哲也がデザインしたFF15のキャラはこっちですね
http://livedoor.blogimg.jp/bpfz/imgs/1/7/172bb6c2-s.jpg
今のデザインはよりFF15の設定に近づけたって感じですね
ドクロをモチーフとしていたり、メインキャラ全員が黒服だったり
ファッション性を語る前にキャラクターの在り方を調べることをおすすめします
投稿: (命名)トホホ人生くん | 2015年6月 3日 (水) 15時28分