2007年 04月 11日
窮地に立つパレスチナ挙国一致内閣:糸口さえ見出せぬまま遂に5週目に入ったBBCガザ特派員誘拐事件を追う
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現在入手可能な限りの各種情報を総合すると,3月12日パレスチナのガザ地区で発生した英国人ジャーナリスト誘拐事件の概要はほぼ以下のようなものであると考えられる.
ハマスとファタハ両武装勢力間の抗争の激発とイスラエルからの絶え間のない越境攻撃・経済活動の妨害によって著しく治安の悪化したパレスチナのガザ地区において,欧米のメジャーなメディアから派遣され現地に常駐して取材する外国人ジャーナリストの最後の一人となっていたBBCガザ特派員アラン・ジョンストンは3年間の任期終了を間近に控え,現地からの最後のルポルタージュの仕上げに入っていた.このルポはこの3年間で急速に勢力を伸ばしたハマスの実像を傘下のフットボールチームメンバーに焦点を当てて探るという内容のものだった.ジョンストンは事件当日,BBCのエルサレム支社で番組担当のプロデューサと打ち合わせを行った後,ガザに戻り(歯医者の予約があった?),ガザ市中央のBBCガザ支局に立ち寄ってから午後5時頃,起亜社製のレンタカーを運転して自宅に戻るところだった.
一部イスラエル系の新聞はジョンストンが独身であることに注目して,彼のこの朝の行動をエルサレムからの「朝帰り」であったかのようにほのめかしている(笑).イスラエル系の新聞にはこの事件の報道に関しても一貫してプロパガンダのネタにしようという悪意を感じられるところがあり,たとえば,当初はこの事件をジョンストン記者自身が自作自演するお芝居であると断定していた.誘拐を偽装する動機としてBBCから不本意な帰国を命じられたことを挙げ,状況証拠として現場に車を止めて犯行グループが現れるのを15分ほど待っていたとしている.これは事実関係としても誤認であると思われるが,仮に彼が現場で待ち合わせをしていたというのが事実であったとしても,それをもって直ちに自作自演と結論付けるのはかなり幼稚な作文である.彼は報道記者であるのだから,たとえば,電話で未知の人物から情報提供を持ちかけられれば,落ち合う場所まで自分の足で出向くということは当然考えられるからである.中には,最近頻発する誘拐事件には外国人ジャーナリストに仕事を奪われることを恐れたパレスチナ人ジャーナリスト(特にカメラマン)が関わっているという珍説まで広く流布されている.
BBCガザ支局から100メートル足らずのサエド・アラー通りに出たところで,彼の車は銃器を手にした4人の覆面の男たちによって停止させられ,教会中東公会ビルの辺りから車で連れ去られたものと見られる.犯行グループは白のスバルで逃走した.記者の車が放置されていた路上には彼の名刺が落ちていた.また,車中にあった車のレンタル契約書などからもBBC記者の誘拐が確認された.BBCガザ支局とジョンストンとのコンタクトは午後3:30頃に切れたという報道もあるので,事件当日のディテールはまだ,必ずしも確定したものではない.
現在もっとも有力な情報は,ガザ最大の閥族(clan)であるダグマシュ一族(Dagmash or Dagmoush)の屋敷に監禁されているというものである.ガザ警察は早期にこの情報をつかんでいた模様だが,一族は犯行を否認しているとされる.パレスチナの閥族の実態は血縁関係で結合した暴力集団(以下マフィア)であるが,その勢力は強大で25000人ほどの治安部隊を擁するパレスチナ自治政府もほとんど手が出せない存在になっている※.これらのマフィアはハマス,ファタハなどの政治武装勢力にも浸透し,それらに戦闘員を供給する母体となっている.かれらのシノギは武器その他禁輸品の密売や誘拐である.モントレイ・ヘラルド紙によれば,最近ダグマッシュ一族が関わった犯罪だけで15000件に上るとされる.マフィアがこれまでにパレスチナ政府から調達した身代金総額は200万ドルにも上るものと見込まれる.これまでの外国人誘拐事件はイスラエル兵士誘拐の場合を除きすべてごく短期間で解決しているが,いまだかつて一度も犯人グループが法的処罰を受けたことがないというのがパレスチナの現状である.
Tal'at Dagmoush, a leader of the influential Gaza Strip family, addresses reporters in Gaza City to deny that his family has played any role in the kidnapping of BBC correspondent Alan Johnston.
昨年の12月にハマスと地回りの別のマフィアの間で起きた抗争の手打ちにからんで,ダグマシュ一族の身内の者2名(ファタハ寄り)がハマスのガンマンによって射殺されるという事件が起こった.この事件をきっかけにハマスとファタハの対立は決定的なものとなり,2,3週間のうちに数百人の死傷者を出すまでに拡大した.この最悪の事態を調停し和解に持ち込んだのはサウジアラビアのアブドラ国王である.2月8日王は両者をメッカに招き,仲介の労を取って停戦協定の締結を斡旋し,ここにようやく挙国一致内閣の成立を見た.奇妙なことにハマスとファタハの間で停戦協定が結ばれた後も,ハマスの戦闘員が何者かによって銃撃され死傷するという事件が断続的に発生し,人々はこれをダグマシュ一族のハマスに対する『報復』と考えた.今回のBBC記者誘拐事件はその延長上にあり,一族は人質の身柄と引き換えにハマスに親族殺害の実行犯としてハマス軍事組織に属する兵士10名(18名とも)の引渡しを要求しているという見方が広まっている.なるほど,これが事実であるとすれば交渉の難航も理解できる.
オブザーバー紙のミッチェル・プロセロは2月にダグマッシュ一族の幹部アハメド・ダグマッシュにインタビューを試みた.殺された2人のうちのひとりはアハメドの兄弟であり,もうひとりは彼の従兄弟である.アハメドは記者の問いに答えて,「もし,兄弟がハマスとファタハの戦闘中に死んだのなら私は復讐しない.兄弟は兵士なのだから.しかし,これは違う.これは単なる『殺人』だ.正義が確立されるまで誰であれハマスの構成員は見つけ次第殺す.」ダグマッシュ一族は当初犯人たちの逮捕をパレスチナ政府に求めたが,治安当局を指揮する内務大臣に拒否された.ハマスはパレスチナ連立政府で内務大臣と法務大臣を押さえている.内務大臣のアブ・ムタナはオブザーバー記者に次のように語った.「もし,私は何かとお尋ねなら,私は警察力を有する内務大臣だとお答えしよう.重ねて尋ねられるのなら,私はガザの警察官だとお答えする.もし三度尋ねられるのであれば,友よ,私はハマスであり,ハマス以外ではない.」
シナイ半島の北東部,東地中海に面するガザ地区(Gaza Strip)は,パレスチナ自治区の一角をなす360 km²ほどの狭い地域(東京23区の約6割)に140万人の人々が居住している.このうち90万人は難民である.ガザ市の人口は30万人,ダグマッシュ一族の縄張りには15000人程度が居住し,そのうち2千~3千人程度が構成員であると推定される.ガザにはまだイスラム原理主義者の拠点はないと考えられているが,ダグマッシュ一族が最近発生したいくつかのアルカイダ系国際テロ組織が関わっているとされる誘拐事件に関与しているとの情報が流れている.アルカイダはCIAがソ連のアフガニスタン軍事侵攻に対抗して育成した軍事組織であり,911の謀略に直接関わるグループであることを考慮すると,この事件をローカルなマフィアが惹き起こした私憤によるイスラム法的『報復』と見ると事態を見誤ることになる.
この事件の4日後には国連のマークを付けたガザ難民プログラムのSUV(Sports Utility Vehicle)が銃撃され,ディレクタのジョン・ギングらが辛うじて難を逃れるという事件も発生している.パレスチナ連立政府はまさにこれら不可解な事件が連続する渦中の3月15日に辛くも樹立された.明らかにこれら一連の事件はパレスチナ連立政府の瓦解を願い,パレスチナを混乱の坩堝に陥し込もうとする明白な意図を持って企てられた国際謀略の一環であると見るのが妥当である.パレスチナ挙国一致内閣はこの危機を乗り切ることができるだろうか?
幸いにもイランは英国海軍の領海侵犯の挑発に乗ずるという愚を冒さなかったが,現在3隻の航空母艦が遊弋しているペルシャ湾海域にさらに一艘が向かっているとの情報もある.上・下院でイラクからの米軍撤退期限付き予算案を突きつけられているブッシュ政権が,イラン空爆を決行する危機はやや遠のいているが,まだ安定には程遠いものがある.ガザ地域から外国人記者を排除することはこの地域が国際監視の目の届かない暗黒地帯に変じることを意味する.もしそれが意図的に行われる謀略の一環であるとすれば,世界終末戦争の危機は依然として目の前にある.戦争によって利得を得るものが存在する限り,この状況は変わらない.
【補遺,2007-04-12】CFR(Coucil on Foreign Affairs)の2005年10月の調査によると,パレスチナ自治政府の治安部隊(Security Forces)は当時のアバス改革以前の数字で20部門4万人で構成される.警察力に該当するものとしては15000人の重武装した兵士からなるNSF(Natinal Serurity Forces)と10000人の軽武装した警官からなる文民警察がある.NSFはパレスチナ政府の国軍に近い存在で,防衛と警察の両機能を持ち,パレスチナ自治区の境界線侵犯のパトロール・検問所の監視・イスラエルとの合同巡視などを担当する.主にPLA(Palestinian Liberation Army)を再編した部隊と地域で新たにリクルートした要員からなる.その制服の色からBlue Police とも呼ばれるCivil Police(文民警察)は日常的な警察活動を行い,犯罪者の逮捕・交通整理・治安維持などに従事している.この中には紛糾した事態に備えるために特殊訓練された700名の機動隊が含まれる.ファタハの武装勢力のメンバーは実質的にこれら治安部隊と相当重複するものと想定されるが,その程度は分からない.ハマス,ファタハなどの独立した政治勢力が擁する軍事部門を統合しこれら国軍・警察力に一元的に組み入れてゆくことがパレスチナ政府の達成すべき困難な課題となっている.
【続きを読む】,【最初から読む】,【前回に戻る】
Missing in Gaza: Whereabouts of kidnapped reporter remain a mystery
(THE INDEPENDENT, 2007-04-12)
Feuding clan holds key to kidnap riddle(Guardian, 2007-04-08)
Palestinians discuss BBC reporter(BBC NEWS, 2007-04-08)
We can't stop Gaza kidnap gangs: minister(Telegraph.co.uk, 2007-04-07)
Powerful, unchecked clan surges in Gaza(Herald.com, 2007-04-05)
Palestinian Solidarity Strike to Secure Release of BBC Correspondent(JOURNALIST IN DANGER, 2007-04-04)
Mystery still surrounds Johnston's kidnap(THE INDEPENDENT, 2007-04-02)
Clan chief may have abducted BBC reporter(TIMESONLINE, 2007-04-01)
Sliding toward Somalia in Gaza(HAARETZ.com, 2007-03-27)
BBC reporter begins third week as captive in Gaza(Newswatch.in, 2007-03-26)
Gaza is turning into another Baghdad(The Australian, 2007-03-19)
BBC Journalist kidnapped in Gaza(WOOLY DAYS, 2007-03-13)
Gaza area has seen 15 journalists abducted since 2004: CPJ research(newswatch.in, 2007-03-13)
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ハマスとファタハ両武装勢力間の抗争の激発とイスラエルからの絶え間のない越境攻撃・経済活動の妨害によって著しく治安の悪化したパレスチナのガザ地区において,欧米のメジャーなメディアから派遣され現地に常駐して取材する外国人ジャーナリストの最後の一人となっていたBBCガザ特派員アラン・ジョンストンは3年間の任期終了を間近に控え,現地からの最後のルポルタージュの仕上げに入っていた.このルポはこの3年間で急速に勢力を伸ばしたハマスの実像を傘下のフットボールチームメンバーに焦点を当てて探るという内容のものだった.ジョンストンは事件当日,BBCのエルサレム支社で番組担当のプロデューサと打ち合わせを行った後,ガザに戻り(歯医者の予約があった?),ガザ市中央のBBCガザ支局に立ち寄ってから午後5時頃,起亜社製のレンタカーを運転して自宅に戻るところだった.
一部イスラエル系の新聞はジョンストンが独身であることに注目して,彼のこの朝の行動をエルサレムからの「朝帰り」であったかのようにほのめかしている(笑).イスラエル系の新聞にはこの事件の報道に関しても一貫してプロパガンダのネタにしようという悪意を感じられるところがあり,たとえば,当初はこの事件をジョンストン記者自身が自作自演するお芝居であると断定していた.誘拐を偽装する動機としてBBCから不本意な帰国を命じられたことを挙げ,状況証拠として現場に車を止めて犯行グループが現れるのを15分ほど待っていたとしている.これは事実関係としても誤認であると思われるが,仮に彼が現場で待ち合わせをしていたというのが事実であったとしても,それをもって直ちに自作自演と結論付けるのはかなり幼稚な作文である.彼は報道記者であるのだから,たとえば,電話で未知の人物から情報提供を持ちかけられれば,落ち合う場所まで自分の足で出向くということは当然考えられるからである.中には,最近頻発する誘拐事件には外国人ジャーナリストに仕事を奪われることを恐れたパレスチナ人ジャーナリスト(特にカメラマン)が関わっているという珍説まで広く流布されている.
BBCガザ支局から100メートル足らずのサエド・アラー通りに出たところで,彼の車は銃器を手にした4人の覆面の男たちによって停止させられ,教会中東公会ビルの辺りから車で連れ去られたものと見られる.犯行グループは白のスバルで逃走した.記者の車が放置されていた路上には彼の名刺が落ちていた.また,車中にあった車のレンタル契約書などからもBBC記者の誘拐が確認された.BBCガザ支局とジョンストンとのコンタクトは午後3:30頃に切れたという報道もあるので,事件当日のディテールはまだ,必ずしも確定したものではない.
現在もっとも有力な情報は,ガザ最大の閥族(clan)であるダグマシュ一族(Dagmash or Dagmoush)の屋敷に監禁されているというものである.ガザ警察は早期にこの情報をつかんでいた模様だが,一族は犯行を否認しているとされる.パレスチナの閥族の実態は血縁関係で結合した暴力集団(以下マフィア)であるが,その勢力は強大で25000人ほどの治安部隊を擁するパレスチナ自治政府もほとんど手が出せない存在になっている※.これらのマフィアはハマス,ファタハなどの政治武装勢力にも浸透し,それらに戦闘員を供給する母体となっている.かれらのシノギは武器その他禁輸品の密売や誘拐である.モントレイ・ヘラルド紙によれば,最近ダグマッシュ一族が関わった犯罪だけで15000件に上るとされる.マフィアがこれまでにパレスチナ政府から調達した身代金総額は200万ドルにも上るものと見込まれる.これまでの外国人誘拐事件はイスラエル兵士誘拐の場合を除きすべてごく短期間で解決しているが,いまだかつて一度も犯人グループが法的処罰を受けたことがないというのがパレスチナの現状である.
Tal'at Dagmoush, a leader of the influential Gaza Strip family, addresses reporters in Gaza City to deny that his family has played any role in the kidnapping of BBC correspondent Alan Johnston.
昨年の12月にハマスと地回りの別のマフィアの間で起きた抗争の手打ちにからんで,ダグマシュ一族の身内の者2名(ファタハ寄り)がハマスのガンマンによって射殺されるという事件が起こった.この事件をきっかけにハマスとファタハの対立は決定的なものとなり,2,3週間のうちに数百人の死傷者を出すまでに拡大した.この最悪の事態を調停し和解に持ち込んだのはサウジアラビアのアブドラ国王である.2月8日王は両者をメッカに招き,仲介の労を取って停戦協定の締結を斡旋し,ここにようやく挙国一致内閣の成立を見た.奇妙なことにハマスとファタハの間で停戦協定が結ばれた後も,ハマスの戦闘員が何者かによって銃撃され死傷するという事件が断続的に発生し,人々はこれをダグマシュ一族のハマスに対する『報復』と考えた.今回のBBC記者誘拐事件はその延長上にあり,一族は人質の身柄と引き換えにハマスに親族殺害の実行犯としてハマス軍事組織に属する兵士10名(18名とも)の引渡しを要求しているという見方が広まっている.なるほど,これが事実であるとすれば交渉の難航も理解できる.
オブザーバー紙のミッチェル・プロセロは2月にダグマッシュ一族の幹部アハメド・ダグマッシュにインタビューを試みた.殺された2人のうちのひとりはアハメドの兄弟であり,もうひとりは彼の従兄弟である.アハメドは記者の問いに答えて,「もし,兄弟がハマスとファタハの戦闘中に死んだのなら私は復讐しない.兄弟は兵士なのだから.しかし,これは違う.これは単なる『殺人』だ.正義が確立されるまで誰であれハマスの構成員は見つけ次第殺す.」ダグマッシュ一族は当初犯人たちの逮捕をパレスチナ政府に求めたが,治安当局を指揮する内務大臣に拒否された.ハマスはパレスチナ連立政府で内務大臣と法務大臣を押さえている.内務大臣のアブ・ムタナはオブザーバー記者に次のように語った.「もし,私は何かとお尋ねなら,私は警察力を有する内務大臣だとお答えしよう.重ねて尋ねられるのなら,私はガザの警察官だとお答えする.もし三度尋ねられるのであれば,友よ,私はハマスであり,ハマス以外ではない.」
シナイ半島の北東部,東地中海に面するガザ地区(Gaza Strip)は,パレスチナ自治区の一角をなす360 km²ほどの狭い地域(東京23区の約6割)に140万人の人々が居住している.このうち90万人は難民である.ガザ市の人口は30万人,ダグマッシュ一族の縄張りには15000人程度が居住し,そのうち2千~3千人程度が構成員であると推定される.ガザにはまだイスラム原理主義者の拠点はないと考えられているが,ダグマッシュ一族が最近発生したいくつかのアルカイダ系国際テロ組織が関わっているとされる誘拐事件に関与しているとの情報が流れている.アルカイダはCIAがソ連のアフガニスタン軍事侵攻に対抗して育成した軍事組織であり,911の謀略に直接関わるグループであることを考慮すると,この事件をローカルなマフィアが惹き起こした私憤によるイスラム法的『報復』と見ると事態を見誤ることになる.
この事件の4日後には国連のマークを付けたガザ難民プログラムのSUV(Sports Utility Vehicle)が銃撃され,ディレクタのジョン・ギングらが辛うじて難を逃れるという事件も発生している.パレスチナ連立政府はまさにこれら不可解な事件が連続する渦中の3月15日に辛くも樹立された.明らかにこれら一連の事件はパレスチナ連立政府の瓦解を願い,パレスチナを混乱の坩堝に陥し込もうとする明白な意図を持って企てられた国際謀略の一環であると見るのが妥当である.パレスチナ挙国一致内閣はこの危機を乗り切ることができるだろうか?
幸いにもイランは英国海軍の領海侵犯の挑発に乗ずるという愚を冒さなかったが,現在3隻の航空母艦が遊弋しているペルシャ湾海域にさらに一艘が向かっているとの情報もある.上・下院でイラクからの米軍撤退期限付き予算案を突きつけられているブッシュ政権が,イラン空爆を決行する危機はやや遠のいているが,まだ安定には程遠いものがある.ガザ地域から外国人記者を排除することはこの地域が国際監視の目の届かない暗黒地帯に変じることを意味する.もしそれが意図的に行われる謀略の一環であるとすれば,世界終末戦争の危機は依然として目の前にある.戦争によって利得を得るものが存在する限り,この状況は変わらない.
【補遺,2007-04-12】CFR(Coucil on Foreign Affairs)の2005年10月の調査によると,パレスチナ自治政府の治安部隊(Security Forces)は当時のアバス改革以前の数字で20部門4万人で構成される.警察力に該当するものとしては15000人の重武装した兵士からなるNSF(Natinal Serurity Forces)と10000人の軽武装した警官からなる文民警察がある.NSFはパレスチナ政府の国軍に近い存在で,防衛と警察の両機能を持ち,パレスチナ自治区の境界線侵犯のパトロール・検問所の監視・イスラエルとの合同巡視などを担当する.主にPLA(Palestinian Liberation Army)を再編した部隊と地域で新たにリクルートした要員からなる.その制服の色からBlue Police とも呼ばれるCivil Police(文民警察)は日常的な警察活動を行い,犯罪者の逮捕・交通整理・治安維持などに従事している.この中には紛糾した事態に備えるために特殊訓練された700名の機動隊が含まれる.ファタハの武装勢力のメンバーは実質的にこれら治安部隊と相当重複するものと想定されるが,その程度は分からない.ハマス,ファタハなどの独立した政治勢力が擁する軍事部門を統合しこれら国軍・警察力に一元的に組み入れてゆくことがパレスチナ政府の達成すべき困難な課題となっている.
【続きを読む】,【最初から読む】,【前回に戻る】
Missing in Gaza: Whereabouts of kidnapped reporter remain a mystery
(THE INDEPENDENT, 2007-04-12)
Feuding clan holds key to kidnap riddle(Guardian, 2007-04-08)
Palestinians discuss BBC reporter(BBC NEWS, 2007-04-08)
We can't stop Gaza kidnap gangs: minister(Telegraph.co.uk, 2007-04-07)
Powerful, unchecked clan surges in Gaza(Herald.com, 2007-04-05)
Palestinian Solidarity Strike to Secure Release of BBC Correspondent(JOURNALIST IN DANGER, 2007-04-04)
Mystery still surrounds Johnston's kidnap(THE INDEPENDENT, 2007-04-02)
Clan chief may have abducted BBC reporter(TIMESONLINE, 2007-04-01)
Sliding toward Somalia in Gaza(HAARETZ.com, 2007-03-27)
BBC reporter begins third week as captive in Gaza(Newswatch.in, 2007-03-26)
Gaza is turning into another Baghdad(The Australian, 2007-03-19)
BBC Journalist kidnapped in Gaza(WOOLY DAYS, 2007-03-13)
Gaza area has seen 15 journalists abducted since 2004: CPJ research(newswatch.in, 2007-03-13)
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by exod-US
| 2007-04-11 02:36
| BBC炎上:WTC7解体予告編事件