水島治郎編『ポピュリズムという挑戦』
水島治郎編『ポピュリズムという挑戦 岐路に立つ現代デモクラシー』(岩波書店)をお送りいただきました。ありがとうございます。
https://www.iwanami.co.jp/book/b496853.html
かつて周辺的な位置にあったポピュリスト勢力は、今日世界各国で議会政治に参入し、存在感を増している。ヨーロッパ、アメリカ、そして日本で民主主義への挑戦を続けるポピュリスト勢力の現在を詳細に分析し、政治の行方を展望する。
水島さんの『ポピュリズムとは何か』は世界各地のポピュリズムの見取り図を与えてくれる本でしたが、それをそれぞれの諸国の専門家がより詳しく解説してくれる本と言えます。
はじめに……………水島治郎
第Ⅰ部 ポピュリズムとは何か
第1章 「主流化」するポピュリズム?――西欧の右翼ポピュリズムを中心に……………古賀光生
第2章 中間団体の衰退とメディアの変容――「中抜き」時代のポピュリズム ……………水島治郎
第3章 遅れてきたポピュリズムの衝撃――政党政治のポピュリズム抑制機能とその瓦解?……………今井貴子
第Ⅱ部 揺れるヨーロッパ
第4章 「ドイツのための選択肢(AfD)」の台頭 ……………野田昌吾
第5章 フランス選挙政治――エマニュエル・マクロンとマリーヌ・ルペンの対決 ……………土倉莞爾
第6章 イタリアにおける同盟の挑戦――「主流化」をめぐるジレンマへの対応 ………………伊藤武
第7章 オーストリアにおけるクルツ政権の誕生――主流政党のポピュリズム化とポピュリスト政党の主流化 ……………古賀光生
第Ⅲ部 民主主義への挑戦――ローカルからグローバルへ
第8章 地方選挙での苦悩―― 二〇一八年オランダ自治体議会選挙で自由党はなぜ負けたのか ……………作内由子
第9章 直接民主主義(国民投票)とポピュリズム――スイスの事例で考える ……………田口 晃
第10章 革命と焦土――二〇一七年フランス大統領・下院選挙の衝撃 ……………中山洋平
第11章 トランプ時代のアメリカにおけるポピュリズム ……………西山隆行
第12章 地域からのポピュリズム――橋下維新、小池ファーストと日本政治 ……………中北浩爾
おわりに……………水島治郎
こうしてみると、やはり欧米風のポピュリズムが大阪維新や都民ファーストという地域レベルにとどまっている日本の特殊性が目立ちます。いや、国政レベルも実はすごくポピュリスティックではあるんですが、その現われ方がなぜ異なるのか。
・・・このようなトレード・オフは、保守系首長を党首とする新党である以上、自民党が大きく分裂し、例えば安倍や石破など有力議員を取り込むことができた場合には、弱まったはずである。しかし、そうした切り崩しは実現しなかった。・・・結局のところ、農村部に安定した支持基盤を持ち、公明党と緊密に連携する自民党の優位は、国政では堅固であった。大阪、東京という大都市から生じた新自由主義ポピュリズムは、その分厚い壁に跳ね返されたのである。
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