[読書] 笑いを愛した吉本せい - 吉本興業創業者の波乱万丈記 (洋泉社) 感想
朝ドラ『わろてんか』のヒロインのモデルが「吉本せい」
「吉本せい」とは、2017年10月から放送中のNHK総合・連続テレビ小説『わろてんか』の主人公・藤岡てんのモデルとされる人物。知る人ぞ知る “「お笑い帝国」とも称される吉本興業の創業者” だ。「吉本せい」は山崎豊子氏の小説『花のれん』にも登場するが、『わろてんか』のヒロインとはだいぶ異なる。
そこで、「吉本せい」とはどんな人物だったのか興味を抱いたので、早速入門書として買ってみた。
本書だけで「吉本せい」の魅力を知るのは無理!
本書のサブタイトルに『吉本興業創業者の波乱万丈記』とあるが、これをどう捉えるか?によって本書の評価が大きく変わる。まず、ハッキリ言う。所謂「吉本せい自身についての記述」を多く求める人には向かない。
本書に於ける「吉本せい」は、吉本興業の創業に大きく関わる中心人物として描かれる。また、「吉本せい」が生きた60年間の日本の社会や政治や芸能などとの関わりを描く部分が多く、時代と共に大局的な見地で書かれている。
従って、本書1冊で「吉本せい」の人となりを知ることや、人物自体の魅力を知ろうとするのは無理。まずそのことを知って頂きたい。
如何に脚本が "事実の無責任なつまみ食い" なのか分かる!
なのに、なぜ私が星4つ(★★★★)を点けるのか? それは、朝ドラ『わろてんか』の(主に)脚本家の思考回路を覗き見るのにとても役に立つからだ。前述の通りに「藤岡てん=吉本せい」ではない。当然『わろてんか』の様々な登場人物や設定も「吉本せい」の環境とはかなり違いがある。
それ自体はフィクションだから一向に構わないのだが、『わろてんか』が放送され既に半分の3か月間が過ぎようとしている(執筆)時点は、私の評価では脚本の雑さが目に余っている。もちろん演出も問題アリアリだが、設計図である脚本、特に人物設定に難アリと考えていた。
「事実はこうだったのか」と納得するのにお勧めの1冊!
そこで読んだのが本書。本書を読むと、「この人があの登場人物に置き換えられたのか?」と思う文脈が次々と出て来る。そして、脚本家が如何に “事実の無責任なつまみ食い” で脚本を書いてきたのかが面白いように分かるのだ。従って、ドラマの脚本の種明かしや「事実はこうだ」と言う読み方なら十分に満足できる。
あとがき
「吉本せいの偉人伝」を期待するなら他の本を読みましょう。本書は「吉本せい」の生き方や生き様と生き抜いた時代背景が半々に書かれています。ですから、ドラマの脚本の種明かしや「事実はこうだ」と言う読み方なら十分に満足できます。写真も多いので、当時の時代を知る資料としても面白く読めます。
今度は、『吉本せいと林正之助 愛と勇気の言葉』を読んでみようと思います。吉本せいさんを知ることで『わろてんか』への興味が繋がると良いのですが…
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吉本せいと林正之助 愛と勇気の言葉 坂本優二
吉本せい 笑いを商売に変えた吉本興業創業者の波乱の人生 (三才ムックvol.967)
吉本せいの生涯 (別冊宝島)
吉本せい お笑い帝国を築いた女 (中経の文庫) 青山 誠
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