NHKドラマ10「宙(そら)わたる教室」 (第6話・2024/11/12) 感想
NHK・ドラマ10『宙(そら)わたる教室』
公式リンク:Website、X(旧Twitter)
第6話〈全10話〉『コンピューター室の火星』の感想。
なお、原作(小説)となった伊与原新『宙わたる教室』は未読。
学会で発表する研究テーマを「火星クレーターの再現」に決めた科学部。再現実験は校内で最も天井の高いコンピューター準備室で行う必要があると分かる。顧問の藤竹(窪田正孝)は全日制のコンピューター部の部長・要(南出凌嘉)に部屋を使わせて欲しいと相談するが、要は頑なに部屋を譲ろうとしない。一方、要との意外な接点を見つけた岳人(小林虎之介)は、要を説得しようと声をかけるが…。
------上記のあらすじは、公式サイトより引用------
原作(小説):伊与原新『宙わたる教室』第70回「青少年読書感想文全国コンクール」課題図書・高等学校の部に選出)
脚本:澤井香織(過去作/夜ドラ「ユーミンストーリーズ」 (第3週/最終週「春よ、来い」,特集ドラマ「むこう岸」)
演出:吉川久岳(過去作/猫探偵の事件簿,ドキュメンタリードラマ「猫探偵の事件簿」)」 第1~4話
一色隆司(過去作/大河ドラマが生まれた日,育休刑事) 第5話
山下和徳(過去作/映画「スペシャルアクターズ」) 第6話
音楽:jizue(過去作/下剋上球児)
主題歌:Little Glee Monster「Break out of your bubble」
制作統括:橋立聖史(過去作/猫探偵の事件簿シリーズ,だれかに話したくなる山本周五郎日替わりドラマ)
神林伸太郎(過去作/ユーミンストーリーズ)
渡辺悟(過去作/卒業タイムリミット,ミワサんなりすます)
※敬称略
前回がイントロだっただから振り返る必要ない! ってこと
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―――ここまで、ごあいさつ―――
前回の感想で、前回(第5話)が「第二章」のイントロダクションだと書いた。
で、お気づきになっただろうか?
前回は特に秀逸だった、毎回の冒頭に必ずあった “これまでの振り返り” が今回になかった。
そう、前回がイントロだっただから振り返る必要ない! ってことなのだ。
このことからも、私の解釈が間違っていなかった(と思う)のはお分かりいただけるはずだ。
今回も、私の心に引っかかった、響いた、残ったセリフをいくつかピックアップして感想を展開してみる。
かつて科学部の全員が、「こんなところに」と思っていた
というわけで、冒頭は「第一章」を受けて。
当初は、読み書きが苦手なために中学から不登校になり、不良となった柳田岳人(小林虎之介)が、岳人の努力と周囲の協力でできるようになった読み書きによって、コミュニケーションが取れるようになっている “新設定” からスタートだ。
この辺も、「第一章を見た人だけ」が分かる展開であると同時に。
それを知らなくても楽しめる内容になっているのが、今作が「今からでも見てほしい」と願う思いが伝わってくる。
全日制のコンピュータ部の顧問・津久井宏和(水橋研二)と、定時制科学部顧問の藤竹叶(窪田正孝)とのやりとりだ。
津久井「本来の自分は
こんなところにいるはずじゃない。
そう思ってるんでしょうね」
藤竹「本来の自分ですか?」
このやりとりこそが、今回、のちに登場するキーパーソン、全日制高校2年の丹羽要(南出凌嘉)の “いまのおもい” であると同時に。
第1話から脈々と受け継がれて描かれている “定時制に通う生徒たち” の、ある意味での “過去のおもい” につながっているという仕掛けだ。
岳人に限らず…
四十歳を過ぎ、夫と娘の後押しを受けて東新宿定時制の高校生になった越川アンジェラ(ガウ)。
オーバードーズとアムカ(リスカ)を続け、保健室登校を続ける1年生の名取佳純(伊東蒼)。
青年時代高校に通えず、病床の妻のためにも学び直しするべく定時制に入学した長嶺省造(イッセー尾形)。
科学部の全員が、当初は「こんなところに」と思っていたのだ。
だからこそ、のちの展開で、藤竹と科学部4人が丹波要に寄り添うわけだが。
藤竹先生の繊細で素早い気づきが、生徒たちの心を揺さぶる
今回で、意外? と “ドラマ” として効果的だったと思うセリフが次の藤竹のひと言だ。
藤竹「いや… すいません。
僕が誤解させてしまったかもしれません」
岳人たち科学部4人と要がうまくいきそうな感じになっているところに、藤竹が割り入ってしまい、空気感を悪くするくだりだ。
もしも、この場面がなかったら。
藤竹がいなくても、それなりに「定時制と全日制の生徒の交流秘話」として成立したと思うのだ。
しかし、お分かりのように。
今作は、あくまでも、生徒の伸びしろを信じる藤竹と、その藤竹を信頼する生徒の交流を科学、科学部を通して描く作品だ。
だから、絶対に、藤竹の存在感を際立たせる必要がある。
その役割が、この藤竹の繊細で素早い “気づき” なのだ。
この人並外れた察知力、観察力、洞察力が、何よりも説得力もって、相手にいい意味で押し寄せ、圧(の)し掛かる。
そう、それくらいやらないと、翻(ひるがえ)らない強者を相手にしているのが藤竹なのだ。
そのことを、中盤の前半で提示したことで、次の岳人の言葉も輝いて聞こえるのだ。
岳人「でも 俺たちだって真剣なんだよ。
生まれて初めて真剣なんだよ」
要に協力してほしいと、繫華街の地べたに土下座をして願い出る場面だ。
科学部員たちが “生まれて初めて真剣” とまで他人に言わせるまでにできるのが、藤竹の生きた授業ってことなのだ。
岳人「誰かを傷つけたいんじゃない。きっと その逆だ」
今回で、一番、胸にグサッと刺さって、えぐられたのが、後半で要の弟が暴れた直後に岳人が言ったセリフだ。
岳人「だから自分を守るためにも
代わりに物をぶっ壊すんだ。
(中略)誰かを傷つけたいんじゃない。
きっと その逆だ」
家族を守りたいから、物をぶっ壊す。
自分を守りたいから、物をぶっ壊す。
「感情を物にぶつけるのは良くない」と、よく言われる。
諸説あるが、例えばこんなことだ。
物に当たっている間は、自分をその怒りの対象に釘付けにしているのと同じです。何かに「バカヤロー!」と叫び、ドアをバタンと閉める前に、この事をぜひ心に留めておきましょう!
出典:怒って物に当たると逆効果 | 【公式】日本アンガーマネジメント協会
確かに、物に当たっているときは、思考が停止するのは実感だ(汗)
しかし、いろんな思考が頭を蔓延して、自分でもやってはいけないことをやりそうな際の、最終手段が、大切な人や自分を守るために物に当たるのは、やむを得ない脱出手段のような気もする。
今回のエピソードでは、要も自分の心地よい居場所を守るために、藤竹や科学部に当たったわけだが。
この岳人の言葉で、要が何かを感じ悟ったのは、間違いない。
定時制高校を舞台にした学園ドラマらしい描写
そして、今作が秀逸な学園ドラマであることを感じさせたのが、終盤の岳人と要のやりとりだ。
要「今って 通信制の高校とか
いっぱいあるのに
何で わざわざ定時制高校何ですかね」
岳人「ああ…。
単純に来てえからじゃねえか? 学校に。
不思議なとこだよな 学校って」
かく言う私も、定時制高校が併設されている全日制普通科に通っていた。
だから、同じ教室、同じ廊下、同じ机を共有している感じは、とてもよく分かる。
教室の内外に、定時制用の掲示物があって、“いないのに、いる” というのを、とても不思議に思ったものだ。
今回の主人公である要も、夜の校舎を見てつくづく実感したのではないだろうか?
これこそが、定時制高校を舞台にした学園ドラマらしい描写として心に残るのだ…
あとがき(その1)
部員たちの「エンカウントかな?」に対して、「あいつらのこと お前たちが笑うな」も、なかなかシュールと言いますか。
並みの学園ドラマなら「あの人たちのこと」だと思うんですよね。
でも、要は「あいつら」と上から目線で呼んだ。
やはり、弟と同様に、そんなに人間は簡単に変わらない、変われないってことですね。
と同時に、少しずつは変われるし、変わる可能性があるってこと。
なかなか、いい言い回しだと思います。
あとがき(その2)
丹羽要を演じておられた南出凌嘉さん〈19〉。
朝ドラ『あさが来た』(NHK/2015年度後期)で、‘新次郎はん’こと白岡新次郎(玉木宏)の幼少期を演じたたり。
朝ドラ『らんまん』(NHK/2023年度前期期)では、竹雄(志尊淳)の少年期を演じておれました。
身内でもなんでもないですが、「大きくなったなぁ」と感慨深かったです。
当ブログは、引き続き今作を応援します!
★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/19271/
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