八丁堀の河原、お読みいただき、また、いいねや拍手をありがとうございます。
喜んで書いたところを喜んでいただけたので嬉しかったです。
近日中に1から順番に入れ替えます。
入れ替えました。
読んでる途中の方には読みにくいかもしれませんが。
どうかよしなに。
朝の不連続ツイッター小説。
今回は、リンク貼りではなく、オールアップできたので嬉しい。
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予告
ドックン・なびく女の髪。
「八巻ぃい!陸ぅう!」
ドックン・もつれる足
「もっちゃん、待ってぇ」
ドックン・釣り上がる眉毛
「南町奉行所与力、河原将吾と知っての狼藉か?」
ドックン「ま、まさか?お、お前が?!」
ビシュッ
佇む地蔵に飛び散る血
光る丸い黒い石
「く、黒い石……」
「見ちゃったんだよ、あれって……ふふふ」
「日高屋ぁ陽斗ぉー」
「こ、この人は、み、身内なんかじゃないです」
「そんなに命を粗末に扱いてぇんなら、俺がてめぇを今から地獄に送ってやるぜ」
「南町奉行所である!おとなしく縛につけ!」
世界観は人情捕物帳の決定版「八丁堀の七人」をベースに、天国と地獄のストーリーが展開。登場人物が大暴れします。
ひらたま版二次創作「八丁堀の河原」
4月、近日公開!
※なお、台詞はイメージです。
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八丁堀の河原
同心部屋1
南町奉行所の同心部屋は、重苦しい雰囲気に包まれていた。
「まだ日高屋の陽斗は尻尾を出さねぇ…か…」
与力の河原将吾がつぶやく。
同心たちは、越後屋殺しを追っていた。
日高屋の手ぬぐいが落ちていた事から、同心たちは日高屋の主人・陽斗を調べにかけた。
「私が下手人だとして、そんな手ぬぐいを落としますか?」
日高屋陽斗は涼しい顔で答えた。
強面でしつこい取り調べで「蛇原」と揶揄る河原の前でも陽斗は動じず、彼は逆に、笑みを浮かべた。
寄り合いのその後の裏が取れず、彼の行動には疑念があったものの、同心たちは彼を泳がせるしかなかった。
部屋では、皆、沈黙していた。
河原が持つ扇子の音だけが部屋に響いていた。そのゆっくりとした音の刻みは、彼の苛立ちを表していた。
「……お前ら、何日経ってるって思ってるんだ」
「はい、五日か……いや、六日でしたっけ?ね、ね、五十嵐さん」
同心の八巻英之助が、首を捻りながら口を開いた。
「や、八巻……河原様はそう意味で聞いてるんじゃないっ」
筆頭同心の五十嵐公十郎はひれ伏したまま、小声で八巻を諌めた。
「日高屋を再度引っ張りましょう。そして、吐かせましょう!この筆頭同心、五十嵐公十郎の仕置にかかれば、日高屋ごとき、すぐに吐きますよ」
「ほほぅ、そうかい?おいらも相当あいつを、しめあげたんだがなぁ」
河原がつぶやく
五十嵐は、はっとして、振り上げた拳を下ろした。
「新田、何か似たような事件はねぇのか」
新田翔右衛門は、盗人の帳面を前に、
「ありません。金目の物は奪われておりませんし、盗賊のたぐいとは違うのかもしれません」
と応じる。
「幅、だったらさっさと動いたらどうなんだ!」
幅は怒声に、身体縮めた。
「はい、怨恨ってことで、越後屋を恨みに思う者たちを、もう一度あたってみます」
「よし、行こう!」
幅健太郎、湯浅和之新の二人が立ち上がった。
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#天国と地獄
#八丁堀の七人
#二次創作
八丁堀の河原
二人が出るのと入れ違いに袴姿の女が入って来た。
「八巻、いる?手も足も出ないらしいって聞いたわよ。だったら、暇なんでしょ。剣術の相手でもしてもらおうと思って来たんだけど」
河原は舌打ちをし、女を睨んだ。
が、五十嵐は揉み手をしながら女に近づく。
「彩さま、今日もご機嫌麗しく。ささ、ここへどうぞ、お茶でもお入れいたします」
この女、望月彩。
南町奉行所望月の娘である。
次期与力の座を狙う五十嵐は、彩に取り入ろうと、毎度必死である。
「彩様、先月の事件ではお世話になりました。あの名推理と太刀さばき、この五十嵐、感服いたしました」
「五十嵐殿、私は当然のことをしただけです」
彩は笑みを浮かべた。
河原は敵意に満ちた目で彩を見る。
「生憎だな、じゃじゃ馬のじゃじや殿、いや、彩殿。越後屋の件で、こちとら暇じゃァないんだが。」
「あら、そうでしたか。『南町またまた失態。無罪の日高屋、蛇原の拷問に屈せず』なんて瓦版に書かれてたから。難儀してると思って来てみたのですが」
憤怒の形相の河原に、彩は笑みで返す。
河原の顔は、怒りで赤みが増したが、黒光りした顔に隠されている。
「誰が蛇原だって?蛇、蛇、言うんじゃねぇ」
「お、お茶はご勝手に。で、では、私めは、城中聞き込みに行ってまいります」
「わ、私も」
五十嵐公十郎と新田将右衛門は、こそこそと逃げ出した。
「もっちゃん、お茶、ご勝手にって。飲む?あ、みて。胡桃餅もあるぅ。では、私、八巻がいただきま……うぐぅ」
「八巻……」
口を開けた八巻の顎を河原が掴んだ。
「八巻ぃ……」
「は、はい。わ、私も行ってまいります」
そこへ望月家の中間で岡っ引きの陸が飛び込んで来た。
#天国と地獄
#八丁堀の七人
#二次創作
同心部屋に、陸が飛び込んで来た。
「河原様、また殺しです。桔梗屋の主人が!」
「何っ!」
「湯浅様と幅様には、お伝えしました。今頃はもう現場に到着されてるかと」
「桔梗屋!」
八巻は手にした胡桃餅を懐に押し込み、飛び出した。彩もその後を追う。
「あ、彩様、お待ち下さい」
陸は、河原に頭を下げ、彩を追った。
彩、陸、八巻の三人は桔梗屋を目指し全力で走った。
八巻はいつの間にか陸に抜かされている。
陸は息切れしながら彩に懇願した。
「彩様、お父様が毎度、毎度、心配されております。事件にはもう首を突っ込むな。と、心配されております」
彩は顔色も変えずに答える。
「陸、桔梗屋の場所はわかるから、もう帰っていいよ。岡っ引きの仕事は終わり、望月家の中間の仕事もいっぱいあるんでしょ」
「もっちゃん、待ってー」
その言葉に、彩は仕方なく立ち止まり振り返った。
「やめてよね、そのもっちゃんって言うの」
「いいじゃないですか。子供の頃からもっちゃんだったんだから。ずっともっちゃんの後、追っかけてたんだから」
彩は不機嫌そうな顔をするが、八巻は続ける。
「だいたい私は英之助って名があるからひでのすけならわかるけど、何故に八巻なんですか?」
「それは……。父上がそなたの父上のことを八巻が八巻が。って言ってたから、ついついそなたのことも八巻。と呼ぶようになったのだよ」
「彩様、お願いですから、危ないことはお控え下さい」
「大丈夫。危ないことはこの八巻が担当するから」
「八巻様、ではお頼み申し上げる。お父上にはそのように」
「えっ!危ないことは苦手なんですが」
八巻の声は無視して陸は素早く身を翻した。
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