河野談話の作成過程を検証するんじゃなかったの?

河野談話を撤回できない腹いせに、その「作成過程」にケチをつけようというプロジェクトの報告書が先週末に出たわけですが、タイトルが「慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯〜河野談話作成からアジア女性基金まで〜」となっております。あれあれ? アジア女性基金? 河野談話の作成過程と関係ないじゃん。しかもこれ、アジア女性基金の事業の評価に関わるようなことまで、一方的に日本政府(と基金)の視点から記述してある。「問題が解決しなかったのは韓国の支援団体のせい」というメッセージを国内向けに伝えるという狙いであることは明白です。
また報告書タイトルの「日韓間のやりとりの経緯」も「慰安婦」問題をひたすら日韓間の問題として矮小化してきた日本政府の(そして日本の右派の)パースペクティヴを忠実になぞっているわけですが、その結果として、河野談話の作成過程で日本政府がサボったこと――代表的なのが、フィリピンやインドネシアでの調査をやらなかったことですが――については、完全になかったことにされてしまっています。韓国で行われた調査にしても、「日本側においては当初、元慰安婦からの聞き取り調査を始めると収拾がつかず、慎重であるべきとの意見もあった」(7ページ)などとされています。当時の日本政府の調査がとことん「公文書中心主義」に染まっていたことをうかがわせる一節です。