「完全否定」なんてブチあげていいの?

 安倍晋三首相は8日午前の衆院予算委員会で、第1次政権時の平成19年4月に行ったブッシュ米大統領(当時)との首脳会談で、慰安婦問題を「謝罪した」と報じられた問題について「この問題はまったく出ていない。事実関係が違うということだけは、はっきりと申し上げておきたい」と述べ、事実関係を完全否定した。民主党の辻元清美氏に対する答弁。

ホワイトハウスでの当時の記者会見では次のように述べています。

PRIME MINISTER ABE: Well, in my meeting with the congressional representatives yesterday, I explained my thoughts, and that is I do have deep-hearted sympathies that my people had to serve as comfort women, were placed in extreme hardships, and had to suffer that sacrifice; and that I, as Prime Minister of Japan, expressed my apologizes, and also expressed my apologizes for the fact that they were placed in that sort of circumstance.
(......)
PRESIDENT BUSH: The comfort women issue is a regrettable chapter in the history of the world, and I accept the Prime Minister's apology. I thought it was very -- I thought his statements -- Kono's statement, as well as statements here in the United States were very straightforward and from his heart. And I'm looking forward to working with this man to lead our nations forward. And that's what we spent time discussing today.
(http://georgewbush-whitehouse.archives.gov/news/releases/2007/04/20070427-6.html)

なるほど、当時の安倍総理が "apologizes" を表明したのはアメリカの議員団(安倍自身のことばでは「議会関係者」)との会合においてである、とされています。「慰安婦」問題に関する下院決議の正否が話題になっていた時期ですからね。しかしその "apolozies" は当然ブッシュ大統領(当時)にも伝わり、"I accept the Prime Minister's apology" という発言につながったわけです。そうするとこれは「完全否定」などという勇ましいものではなく、「部分否定」にしかならないはずのはなしではないでしょうか?
もちろん、「誰に対して表明したか?」が決定的に重要な意味をもつ文脈というのはあり得るでしょう、一般論としては。しかし辻元議員が追及しようとしていたのは、安倍総理が「慰安婦」問題に関して、国内向けと国外向けの二枚舌を使っていることだったわけで、「大統領に対してか、議会に対してか?」は大した意味をもつ違いではありません。