「どっちもどっち」なんてことが言えるのは…

最低でもロールプレイで「ネットの否定派を史料に基づきことごとく論破できる人間」と「ネットの虐殺=あった派を史料に基づきことごとく論破できる人間」の双方をきちんとこなせるようになってから、「どっちもどっち」なんてことは言ってください。


追記:「水掛け論」と論評するのも、同様なロールプレイをできるようになってからにしてください。


さらに追記
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20080103/p6

そこはしょうもない穴だと思った。むしろ、元記事でfromdusktildawn氏がいう「差分」のところに明快な説明をこころみることが、深い理解につながるのだとはおもう

だ・か・ら・さ、「差分」がどうたらとか賢しげなことを言うまでに、一体何冊本を読んだんだよ? ってことを問題にしてるんですが。

あ〜そうですか

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://b.hatena.ne.jp/entry/http://fromdusktildawn.g.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080103/1199312777

fromdusktildawn 自分がほとんど知識も興味もない問題について、議論が成立するものなのかどうか、やってみたかった、というのが主な動機。

だそうですよ。「やってみたかった」んなら最後までちゃんとやろうな。「○○事件」をでっちあげて見事歴史教科書や歴史学事典や外務省のHPに載せてみせてくれ。それができないんなら、「ほとんど知識も興味もない問題」に首つっこんでもできることはゼロに等しい、という当たり前の結論が確認されるだけのはなしですな。


上の「差分」云々だけど、「私個人としては、南京事件は実際にあったことだと思っている」けどその実「あくまで、素人としての印象の話」で、「専門知識があるわけじゃないので、実際の所はどうなのかは知らないし、そんなに時間をかけて知ろうと思うほど興味があるわけじゃない」にもかかわらず、抽象的に「差分」が問題になると考えることができるのはなぜなのか、さっぱりわからん。というのはレトリックで、それこそ歴史修正主義の欲望そのものだろ。ノルテだってそんないい加減な相対化で仲間面されたら「迷惑だ」っていうんじゃないか。


追記
こりゃなんだ?
http://d.hatena.ne.jp/yousanotu/20080103
かまってほしいのか?

理系とか関係ないですから

http://anond.hatelabo.jp/20080104052304

周知の通り、はてな界隈には(俺を含め)情報技術者とか理系大学生が結構いるのだけど(アーリーアダプタ(笑)だからね)、南京事件に関する議論に対して「どっちもどっちだ」という反応を顕著に見せているのは恐らくこの層だろう。自然科学的方法論に毒された人間がこの問題を眺めると、そういう結論にならざるを得ないんだよ。自然科学では手続きの妥当性によって客観的な正当性が担保されるから、相手の人格否定に重きを置くような論者同士の意見には優劣を付けられない。主張の内容レベル以前の問題で。だから、「どっちもどっち」は「主張の内容のレベルが同程度だ」という意味じゃなくて、単純に「手続きのレベルが同程度だ」という意味でしかない。

そりゃ「理系」だからでも「手続きのレベル」に重きを置いてるからでもなく、単に他人事としてながめてるからだよ。インテリジェント・デザイン論者の相手をネットで1年でも2年でもしてみれば考えは変わるから。以前にもここで紹介したけど、「前線の兵士が日記なんて書くはずがない」なんて驚天動地の前提までもちだして南京事件を否定しようとする人間がいるんだから。しかも「書くはずがない」という根拠は否定派の旧軍人の証言。「命令で捕虜を殺した」って兵士の証言はウソと決めつけるのにさ。こういう風に、まさに「手続き」の点で否定論はデタラメなのよ。さすがにここまで露骨なのは少数派だけど、活字メディアに載るものにだって「都合の悪い証言は具体的な根拠なしに否定、都合のよい証言は鵜呑み」という誤った「手続き」を使ってるものはいくらでもある。例えば「バターン死の行進」に関して日本軍を免罪しようと目論んだ、笹幸恵の「「バターン死の行進」女一人で踏破」(『文藝春秋』、2005年12月号)とかね。
ま、この当人も実は「しばしばおかしなシンパが現われて話をかき回すから話がややこしくなるけど。。。」と認めているわけだが、要するにこれって、疑似科学批判者の中の気の短い(あるいはその手のキャラをつくっている)人間を「おかしなシンパ」として切り捨ててるだけ。そんなことしていいなら、こっちも同じように口の悪い人間を切り捨てればお上品な「歴史修正主義」批判者ばかりが残るざますよ。ちなみに否定論者がどんな「人格否定」を行なうかを知りたければ、ここなんかをご覧になってはどうでしょうか。これで「どっちもどっち」と言われるのは心外ですなぁ。

いやだから…

ろくに知ろうとしたことのない事柄について評論家になる人間が多すぎる、ってのが問題だというのがわかりませんか。
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://fromdusktildawn.g.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080104/1199397671

ああ、そうそう、こんな感じこんな感じ。「いわゆる歴史修正主義者」達はこの"差分"の部分に疑問を持っているわけで。"土台"のところまで否定していないのに、対抗して一生懸命"土台"部分の資料を作っちゃう人がいる。

いるよ。「"土台"のところまで否定」する人間。藤岡信勝とかさ。

「南京事件」はあったと、「南京大虐殺」はあった、の間に(主に政治的に)すごい違いがあると思うし、前者を否定する人を(私は)見たことがないけどな

そりゃあんたが見たことない、ってだけのこと。「南京の真実 情報交換掲示板」でもどうぞ。


つ〜かさ、われわれが「日本軍の軍紀は厳正だった、虐殺や強姦なんてするはずがない」って信仰告白をどれだけ目にして来たか、知らんでしょ?

じゃ、3分で読めるようにまとめましょう

「三十分で読めるサイト」がお望みだと某所で聞いたので、30分と言わず3分で読めるように「差分」をまとめてみましょう。

  • 捕虜殺害についての秦郁彦の推定(幕府山のことだけを考えても明らかに過少だけど)を採用したとして、短期間に3万人もの捕虜を殺害したという事例は、近現代の戦争史において特筆に値する。投降してくる兵士を捕虜にせずに殺してしまう、というのはたしかに多くの軍隊に見られる現象だが、武装解除していったん兵舎に収容した捕虜を万の単位で殺害する、などということはそうそうあることではない。
  • 南京の日本軍は、少なくとも師団レベルで組織的に捕虜を殺害している。上海派遣軍参謀だった長勇が「ヤッチマエ」と命じたという証言が正しいとすれば(そしてこれについては偕行社の戦史も事実だろうと認めている)軍のレベルで収容した捕虜の殺害を組織的に行なったことになる。いずれにしても近現代の戦争史において特筆に値する。
  • 略奪について。日本軍は仮にも一国の首都だった都市を攻略するのに、最初から物資を「現地調達」するつもりだった。経理部が機能しなかったこととあわせ、まさに軍くるみで略奪を“公式に”おこなったわけだが、これは近現代の戦争史において特筆に値する。特に農村部での非戦闘員の殺害はこの組織的略奪と密接に関連しているが、これについては全体像を描くにはデータが足りなすぎる。
  • 強姦について、ベルリンでの性暴力との対比で。ロシア軍によるベルリンでのレイプは軍上層部の取り締まりにより南京の場合よりずっと短期間で終熄したとされている。また、口封じのために殺害するケースは少なかったともされている。ベルリンでのレイプは長い戦争の最終盤、しかもドイツに攻め込まれて多数の死者を出しつつようやく反撃に成功した戦争の最終盤で発生しているが、南京でのレイプは事実上の戦争開始からわずか半年で起こっている。この点で、南京における日本軍の振る舞いは近現代の戦争史において特筆に値する。さらに、強姦予防のために軍が公式に慰安所をつくった、というのも近現代の戦争史において特筆に値する。

ちなみに、以上すべては(記憶にまちがいがなければ)全部このブログで書いたことのあることばかりだ。


ついでだが、

中国政府は、「南京事件」における、

「他のよくあるレイプ・虐殺とは一線を画す差分」の部分を非難しているわけです。
(http://fromdusktildawn.g.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080104/1199397671)

というのも理解が不十分(つまり、議論の前提が間違ってる…とまで言わないにしても偏ってるということ)。もし「差分」の顕著さを基準に選ぶのなら、中国が最も重視すべき旧日本軍の戦争犯罪とは華北における燼滅掃討作戦(三光作戦)ということになる。期間が違うので犠牲者の規模は単純には比較できないが、200万人以上が殺害されたと言う推定がある。なにより、こちらの場合「敵性ありと認むる住民中十六才以上六十才迄の男子」を「殺戮」するという方針を北支那方面軍が立てている。高度分散配置をとると憲兵の目など届かなくなるから、女性を誘拐して強姦し親に身代金を要求する…といった事例まであった。規模はずっと小さいけど東南アジアでの華僑虐殺も質的には十分な「差分」がある。どちらもローカルなジェノサイドと言って過言でないケースである。
第二に、現在の中国政府が南京事件を強調するようになったのは、日本に否定論者がいることを知ったから…というのは論争史の基本中の基本。
第三に、中国が南京事件を「シンボル」にしていることはそれが東京裁判で裁かれた犯罪である——それゆえ、サンフランシスコ講和条約を介して日中戦争、アジア・太平洋戦争の国際的な戦後処理の前提として法的に認定された事実である——ことと切り離して考えることはできまい。
ちなみに、以上すべても(記憶にまちがいがなければ)全部このブログで書いたことのあることばかりだ。


追記:ブクマコメントより

fromdusktildawn 超GJ! おお、ありがとうございます。じつにすばらしい。ぼくが元記事で書いたのはこの「差分」の部分がなんなのかを明確にしてくれ、ということなのだが、それが伝わるまでに、なんでこんなに時間がかかるんだろう?

自意識過剰もいいとこだよ。伝わる・伝わらないの問題ではなくて、3分とか30分とかで読めるような「まとめ」にはなんの意義も見いだせないからやらなかったんだよ。こんなの否定論者のブログにコメントしたところで全然効果ないんだからさ。これで「わかった」なんて言ってる「超GJ! 」なんてタグつけてるようじゃ、否定論者のよくできたコピペにだって同じように「わかった」て言っちゃう「超GJ! 」なんてタグつけちゃうんじゃないの?
「3分で読めるまとめになんて意味はない」ことを示すためにあえて書いた、ってことでよろしく。人は自分が払うコストにみあった情報しか得られない…。