減収減益が続くグリー。2011年には海外展開を急ぎ、一時は世界9カ国まで海外展開を広げた。だが、2013年夏には中国、イギリス、オランダ、ブラジル、ドバイの拠点を閉鎖し、現在、海外の開発拠点として残るのは米国、カナダ、韓国のみだ。

 だが、選択と集中を進めた結果が少しずつ実を結び始めているようだ。米国、カナダを統括するグリーインターナショナルCEO(最高経営責任者)の青柳直樹氏に話を聞いた。

(聞き手は原 隆)

グリーインターナショナルの青柳直樹CEO(最高経営責任者)、撮影:Koichiro Hayashi

国内が減収減益が続く中で、海外売り上げが好調のようだ。

 米国ではブラウザー上で動くウェブアプリではなく、米アップルのiPhoneや米グーグルのAndroid搭載スマートフォンに直接インストールして遊ぶ「ネイティブアプリ」に絞って開発を進めている。グリーが米国に進出して3年目になる。当初、日本で展開してきたものをそのまま持ってきてうまくいくのか全く分からなかった。実際、米国市場は思った以上にハードルが高く、ようやく様々な答えが見えてきたところだ。

 2012年の春、日本のノウハウを生かして米国市場向けにゲームを作るのが最も筋が良さそうだという確信を深めた。2年目はその確信を持ちつつ先行投資を続け、3年目に入った2013年、ようやく結果として見え始めてきた。米国の市場規模は日本市場よりもはるかに大きい。まだまだ伸びると確信している。

具体的にはどのような結果が見え始めてきたのか。

 例えば今年の1月3日時点において、米アップルのアプリ販売ストア「App Store(アップストア)」のすべてのアプリを対象とした売り上げランキングは「Modern War(モダン・ウォー)」が5位につけている。ランキングは日々変化があるものの、ピーク時には必ずトップ5に入る実力だ。2013年にリリースした「Knights and Dragons(ナイツ・アンド・ドラゴンズ)」も米グーグルのアプリ販売ストア「Google Play(グーグルプレー)」において、1月3日時点で12位。堅調に伸び続けている。

 モダン・ウォーは2012年5月に買収した米ファンジオがもともと展開していたゲーム。これに日本のノウハウを注入したことで劇的に伸びた。公開してから2年経つが、この1年で売上高は3倍にも伸びている。こちらのゲームも手を加えていけば、伸び続けることを実証した形だ。

 現在、月商の売上高が億単位を超えているゲームは6つある。月間売上高がおおよそ20億円ほどだ。最もよいタイトルで5億円以上の売り上げを上げている。日本のネイティブアプリで月商を1億円超えるのは難しい。ネイティブゲームの市場規模がまだ小さいからだ。米国ではトップ50にランクインすると、たいてい億単位の売上高になる。それだけマーケットサイズが違うと言える。これこそがグローバルマーケットの魅力だ。日本市場を飛び出したメリットが出てくる。

交流型プラットフォーム事業を展開していた米オープンフェイントを2011年4月に買収したが、翌年12月にはサービスそのものを終了させた。これは誤算だったか。

 オープンフェイントの買収は、米国市場におけるグリーの知名度向上には確実に結びついたと思う。法人そのものは残しているが、事業戦略の変化とともに、もともと手掛けていたプラットフォーム事業から我々が作っているゲームの共通機能やデータ管理、サーバー管理などにシフトさせた。今でも社員の半分くらいが残って活躍してくれている。

 米国でのプラットフォーム事業が厳しいと判断したのは2012年の前半だ。当初、「ZombieJombie(ゾンビジョンビ)」などいくつかのゲームをリリースしたが、グリーや買収したオープンフェイントのプラットフォームに頼って集客するだけではこの米国市場では勝てなかった。力点をプラットフォーム事業からゲームそのものの開発に移さなければならない。そう判断してのサービス終了だった。これは僕たちにとって学びでもあった。最終的に山に登れるならば、どこからでもいい。

どうせいつか日本に帰るだろうと思われていたはず

 グリーが最初に米国に進出したとき、本気で出てきたと思っている人は少なかっただろう。どうせほかの企業と同様、いつか日本に帰るのではとも思われていたと思う。だが、大きな買収を手掛け、現地採用を進め、時間こそかかったものの売り上げがようやく上がってきた。現在、社員は400人に上り、日本からの赴任者は6人だ。日本国籍を持つ社員が約12人で、残りはすべて現地採用だ。パフォーマンスだけを優先して採用していった結果、このような社員構成になった。

 いい人材も採れるようになっている。あえてグリーを選んで入社する理由があるのかという疑問を持たれるかもしれないが、英語圏においてグリーはいいポジションを築いている。例えば、売上高ランキングでグリーよりも上位にあるのはガンホー・オンライン・エンターテイメント、スーパーセル、キングなどの会社だ。このうちスーパーセルはフィンランド、キングは英国に本社を構える欧州の会社だ。シリコンバレーに本社があるトップゲーム企業で働こうとすると、売り上げ順に見ると、エレクトロニック・アーツ(EA)かグリーしかない。ある程度、自分の裁量でスマートフォンやタブレット向けのゲーム開発に携ろうとすると、選択肢は限られてくる。

 3年前は日本人だけだった。そういった意味ではこの領域においてプレゼンスを作り出し、ローカル化に成功したと言える。

 ようやく、だ。この会社に勤めても大丈夫だと思われるようになった(笑)。2年半くらいの赴任で、小さい実績を丹念に積み上げ、ようやく信頼してもらえるようになった。

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