キリンビバレッジが4月に発売した、特定保健用食品（トクホ）の「キリン メッツ コーラ」が爆発的なヒットを記録している。売れ行きなどの概要については、別記事「トクホのコーラが売れる事情」で触れたが、このコラムでは主に肝心の効果について書きたいと思う。

　メッツコーラを飲めばやせられるのか？　その答えは商品パッケージに書かれている。

　「食事の際に脂肪の吸収を抑える」。これがメッツコーラに認められたトクホのキャッチコピーだ。関与成分（体の調子を整える働きのある成分）は「難消化性デキストリン」という食物繊維の一種。裏面を見ると、さらに具体的に「本品は、食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて排出を増加させる難消化性デキストリン（食物繊維）の働きにより、食後の中性脂肪の上昇を抑制するので、脂肪の多い食事を摂りがちな方、食後の中性脂肪が気になる方の食生活の改善に役立ちます」と記載されている。

　これを読めば分かる通り、メッツコーラはあくまでも食事に含まれる余分な脂肪の吸収を抑えるためのもの。体内に蓄積された体脂肪を減らす効果はなく、「飲めばやせる」とはどこにも書かれていない。食事と一緒に飲まなければ、その効果は全く期待できない、ということになる。

　メッツコーラがトクホのお墨付きを得るために実施した臨床試験の内容を見てみよう。中性脂肪値が正常高値域からやや高めの被験者90人をA、Bの2群に分けて、全員が同じハンバーグ、フライドポテト、バターロール（総脂質量41.2g）を食べながら、片方のA群はメッツコーラと同等の成分の飲料を飲み、もう片方のB群が難消化性デキストリンが入っていない飲料を飲むというもの。1週間後には、逆にA群が難消化性デキストリンなし、B群がありの飲料で試す。どの群がどちらの飲料を飲んでいるのかは、被験者も担当する医師も分からない「二重盲検クロスオーバー法」という、トクホの臨床試験では一般的な方法だ。

　被験者は飲食後2、3、4、6時間後に採血をして、血液中の中性脂肪値などの上昇度合いを比較。その結果、メッツコーラを飲んだ群のほうが、飲まない群より中性脂肪値の上昇が緩やかだった。試験内容を見ても、体脂肪を減らせるかどうかを調べるためのものではないことは明確だ。

　ちなみに体脂肪を減らしたい人が飲むべきトクホは、花王の「ヘルシア緑茶」や味の素ゼネラルフーズ「ブレンディ」ブランドのトクホなど。商品パッケージには「脂肪を消費しやすくする」あるいは「体脂肪が気になる方に」などと書かれている。これらは12週間にわたる長期臨床試験で、体脂肪の低減を確認したものだ。

　サントリー食品インターナショナルの「黒烏龍茶」はどうか。商品パッケージには「脂肪の吸収を抑える」とあり、一見すると体脂肪なのか中性脂肪なのかは分からない。ただ裏面を見ると、「食後の血中中性脂肪の上昇を抑える」とある。つまり、これもメッツコーラと同様、食事と一緒にとらなければ意味がないトクホだ。このように同じトクホでも、どの効果を期待するのかによって、選ぶべき商品は変わる。

中性脂肪値には“2種類”ある

　健康診断の結果を見ると「血圧」「コレステロール」などと並んで、「中性脂肪」の欄がある。数値を見て一喜一憂した経験のある人も多いだろう。

　この場合の中性脂肪は「空腹時の中性脂肪値」を指す。慢性的に中性脂肪値が高ければ、血管などへの負担となり生活習慣病のリスクが高まるといわれ、気にすべき数値ではある。

　では、メッツコーラや黒烏龍茶に書かれている「食後の血中中性脂肪」とは何か。これは空腹時の値とは異なり、毎食の食事などに含まれる脂肪分が消化され、血中を流れている中性脂肪のことだ。

　中性脂肪値はコレステロール値などとは異なり、食事のたびに数値が乱高下しやすい。例えば焼き肉などをたらふく食べた後には、一時的に数値が跳ね上がる。毎日のように高脂肪食を食べ続ければ空腹時中性脂肪値も徐々に高まるだろうが、「一度の食事による中性脂肪値の上昇で大騒ぎすることではない」（医学関係者）という。毎食後の数値よりも空腹時の中性脂肪値を気にすべし、というのが一般的な考え方だ。

　では空腹時の中性脂肪値を下げるトクホはあるのか。該当するのは、日本水産の「イマーク」や不二製油の「リポスルー」など。長期臨床試験で、空腹時中性脂肪値の推移を追跡し、数値の減少を確認できたトクホになる。

　イマークやリポスルーのパッケージに書かれているキャッチコピーは「中性脂肪が気になる方に」というもの。健診結果の中性脂肪値を下げたいのであれば、メッツコーラや黒烏龍茶ではなく、こちらを飲むのが正解になる。「気になる方に」なのか、「上昇を抑える」なのか。パッケージの記載を読み解いていけば、「何に効果があるのか」が分かるため、トクホ選びの参考になるだろう。