木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

ご質問について

これまでに、たくさんのご質問、コメントを頂きました。まことにありがとうございます。 最近忙しく、なかなかお返事ができませんが、頂いたコメントは全て目を通しております。みなさまからいただくお便りのおかげで、楽しくブログライフさせて頂いております。これからもよろしくお願い致します。

宇奈月温泉事件

2012-07-31 21:52:02 | ã¡ã‚‡ã£ã¨ä¸€è¨€
ひさびさに民法判例百選を読みましたるが、
宇奈月温泉事件、どうも腑に落ちないなあ。

給湯管の撤去認めると、温泉街がツブれる。
だから、権利行使は認められん、と。

うーん、イメージとしては継続的な緊急避難があって、
被告の行為の違法性が欠けるという感じだろうか。

そんな気もする。

馬鹿にしているのか?

2012-07-30 20:25:22 | æ†²æ³•å­¦ã€€æ†²æ³•ä¸Šã®æ¨©åˆ©
先日、制度について書きましたところ、
制度的保障についてご質問いただきました。

制度的保障というのは、もともと、
憲法典制定以前に、歴史的に形成された制度を、
憲法典を作るときに、
「いやー、この制度(教会、一部の貴族の家など)、
 ○○の憲法原則(政教分離や人権保障、身分制廃止など)に
 反するんだけど、
 いきなりやめられないから、特別に残して憲法上の保障与えとくか」
といった考慮で作られた条文を説明する概念なわけで、

「これこれは制度的保障です」っていう解釈論は

「これこれは不合理かもしれないけど
 歴史的な経緯でやめられなくて、残しときました」

っていう意味の解釈論になるんですね。はい。

そんなわけで、「日本国憲法の地方自治の保障はいわゆる制度的保障であって」
とか言うと、全国の自治体から、「お前俺のこと馬鹿にしているのか?」と
言われてもしょうがないわけであります。
長谷部先生の教科書に、そう解説されているので、
お持ちの方は是非チェックを!

ちなみに宮沢先生の地方自治についてのエッセイで、
そう言われてもしょうがないような地方自治論、見たことありますが。ははは。

システムの訳語、藤井システムの和訳

2012-07-29 20:27:00 | ã¡ã‚‡ã£ã¨ä¸€è¨€
今月号の法学教室、石川先生の連載で
「システム」の訳語が話題になっています。

システム、ええと、ラフには
ある機能や目的のために統合された部分の総体を
表現する言葉なわけで、
日常用語では、制度とか組織とか、
そういう訳も可能かなという感じです。

ただ、ドイツ法学を勉強しますと、
レヒツシステムというと、
パンデクテンの体系みたいな、
理性的に作られた体系をいうことが多いので、
自然とシステムを体系と訳す癖がつくのですよね、と言うお話です。

ついでに、組織や制度と比べますと
体系というのが、人間が知恵を絞って
作りだし整理したものというニュアンスが強くて、
制度、になると、時間をかけて歴史的に形成されたもの、
組織、になると、法人や団体の内部の役割分担とその総合の方法
といった感じになって、
それぞれ、システム、インスティテューション、オーガニゼーションに対応と
こんな感じでしょうか。

で、そんな中、塩野先生がシステムを「仕組み」と
訳して、ああなるほど、といったお話が紹介されていました。


さて、石川先生のご指摘を読んでいて、
ふと疑問に思ったのが、
「藤井システム」と「森下システム」です。

これは「藤井体系」や「森下体系」と訳すと
ちょっと違う気もします。

全く、システムというのは訳しにくい言葉ですねえ。

藤井システム、上手く日本語に訳せた方はご一報ください。


ï¼°ï¼³
ついでに、ゴキゲン中飛車の英訳をご存じの方は教えて下さい。

夏はプールだ

2012-07-28 20:22:38 | ä½œå“æƒ…報 「憲法学再入門」
法学教室8月号発売です。

今月は立法権と行政権をテーマに
プールでお話してみました。

河童の川流れ役を快諾してくださった
ツツミ先生に感謝いたします。

来年の司法試験は、
例年通りの憲法訴訟系事例が4頁、
参照条文3ページにつづけ、
「それはさておき、法の支配の構想について論じよ」
と出題される統治の一行問題らしいので
統治強化しましょう、統治。


というわけで、公法系の記事盛りだくさんの
法学教室8月号、皆様よろしくお願いいたします。

「正義に反する」ことの意味

2012-07-27 20:30:58 | ã¡ã‚‡ã£ã¨ä¸€è¨€
学部時代に、法哲学好きの人とよく正義論を巡って議論しておりました。

法哲学をかじった人って、
「生活保護法はリバタリアン的正義に反する」とか、
「この法律条項は功利主義に反し不正だ」とか、
言うわけです。

当時、私は最終講義で立場を変える前の
碧海純一先生のファンでしたので、
よく
「『正義に反する』ことの効果って、何なの?」と
聞いてみたりしておりました。

実定法学徒としては、
正義に反する実定法は無効だ、という
イケイケドンドンの自然法論者なら、
これはかなり真剣に相手をせねば、ということになります。

ただ不思議と、そこまで言う人は少なく、
「いや、無効っていうわけじゃないけど、
 正義に反するからあってはならないんだよ」と、
このような歯切れの悪い解答を頂くことが多く、
うーん、正義論って何のための学問だろう?と
思ったりしてみたこともあったわけです。

そんなわけで、当時の私は、
どうもロールズ先生やサンデル先生の議論に触れても
「正義に反すると、どんな効果が発生するんだろう?」
というところが気になって、素直に納得できなかったり
したわけです。

そんな中、当時の私を納得させてくれたのが
学部時代の友人Aくんの
「正義に反することの効果」の説明でした。

私が、「正義に反すると、どうなるの?」と聞いたところで
A君の回答が次の通り。

A君「・・・。正義に反すると・・・僕が、悲しいんです(ぼそ)」