Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

外資系企業で成功する人、失敗する人

2009-05-21 10:37:54 | æ›¸è©•
外資系企業で成功する人、失敗する人 (PHP新書)津田 倫男PHP研究所このアイテムの詳細を見る



以前、どこかの勉強会で話をした時、某外資系エコノミストの方に
「びっくりしました。仕事しないマネージャーなんて、ホントにいるんですか?」
と聞かれて僕もびっくりしたことがある。
いや、大企業の場合、そっちの方が多いという意見もありますが。
少なくとも、向こうのカルチャーではそういう人は稀らしい。

そういう意味では、本書はとてもバランスが良い。
日系・外資双方に勤務経験のある著者が、どちらかというと日本人目線で外資の作法を
解説してくれる。

著者は「外資はけしてドライではない。むしろドロドロした面は日本企業以上だ」
と述べる。
確かに、絶対的人事権を握る上司への露骨なゴマすり、ピーアールしなければ手柄と
認められず、ばれなければ失点とされないカルチャーは、一見すると日本企業よりも
ウェットだと感じる人もいるだろう。

ただし、やはりそれはドライなのだ。
職場という日常空間において、すべて目に見える形でドラマが進行するのだから。
本当のドロドロは、表には出ない裏に溜まるものだ。

日本企業では人事権の所在が曖昧であり、評価の基準は誰にもわからない。
人事部が一定の人事権を握っていることは事実だが、彼らはどちらかというと評価の分布を
作ったり、「10年目で昇級は○割」という内規を作ったりするだけで、個人の顔は
わからない。

つまり一従業員からすると、なんとなく勤続年数に応じて給料が上がり、30代のどこかで
幹部になる人なれない人の分岐点が訪れる世界だ。
それはとても閉鎖的で、ウェットな空間である。
たとえば、雇用調整の際。
アメリカ人に
「やあケンジ、君の仕事が無くなってしまったよ。まあ次の会社でも頑張れよ」
と言われるのと、上司から
「自己都合で辞めてくれ。断ると山口支店に行って貰うよ」
と言われるのと、どっちがドロドロだろうか?
そんなもんである。

著者は本書を読んで、合わないと思った人は外資への転職は控えたほうが良いと総括する。
その通りだろう。
ただ、今後は望む望まないに関わらず、日本企業自体もドライな方向に進むだろう。
ドロドロは、年功序列という暗黙ルールの下、終身雇用というひどく風通しの悪い空間に
溜まったよどみだ。それらが崩れていく中で、徐々に湿気も失せていくと思われる。

そういう意味では、転職リトマス試験紙というよりも、
若手にとってはキャリア必読書というべきなのかもしれない。