Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

労働者を受け入れるということ

2009-05-11 10:13:21 | ãã®ä»–
虚栄の帝国ロシア―闇に消える「黒い」外国人たち中村 逸郎岩波書店このアイテムの詳細を見る


本日、テレビタックルに録画インタビューで出演予定。
テーマは移民だ。問題の構造については以前書いたとおり。移民議論の前に労働市場の
流動化、効率化が必要だという話。

さて、直接移民問題とは関係ないのだが、外国人労働者に関する書籍を一冊紹介。
労働問題を考える上で、示唆の多い一冊だ。

移民にしろ出稼ぎ労働にしろ、受け入れ側には一定のコストが発生する。出稼ぎ労働者の
未就学児童など放置していた日本も、帰国費用の負担など一定の配慮はみせている。
そういうコストを一切切り捨てた国がロシアだ。
02年、ロシアは旧ソ連邦諸国の労働者が合法的に就労する手続きを意図的に厳しくし、
結果的に彼らが不法就労せざるをえないように法改正した。
理由は、彼らに社会的なインフラを与えないためだ。
ロシアに滞在する出稼ぎ労働者は1500万人以上、なんとその9割が不法就労である。
あのアメリカで不法滞在がだいたい一千万人強だというから、ロシアは事実上の
不法就労数No1国家になったわけだ。

こうしてロシアは、労働法の枠外で安く使え、失業給付も医療保障も負担する必要がなく、
さらには不況時にはとっとと追い出せる便利な労働力を手に入れることとなった。
仕事はロシア人が嫌がる低賃金の重労働。怪我をして働けなくなったら追い出し、死んだら
こっそり埋めに行く。もうメチャクチャである。
いや、そういうところで働かせてもらわざるをえない旧ソ連邦諸国の経済状況もメチャクチャだが…。

さらにロシアは、こうして囲い込んだ“奴隷”に対し、国はもちろん社会全体でたかるのだ。
警察は摘発のかわりに毎週巡回して袖の下を集め、雇い主はピンハネし、市民は彼らに
名義を貸す。そうやって元同国人にたかって復興したロシアは虚栄の帝国に過ぎないと
著者は断言する。
不法就労という形をとることで合法的に負担をパスしているわけだ。
タジク人からみれば悪魔かもしれないが、ロシア人からすればプーチンは名君なのだろう。

同様のケースに中国がある。
中国は都市と農村部の戸籍を分け、教育や医療と言った社会インフラを(都市部では)後者
には与えず、農民工として労働力だけを使い捨てている。ロシアがやったことを、自国内で
やっているようなもので、そりゃ暴動も頻発するわけだ。

「やはり共産圏は民度が低い」と思った人もいるかもしれない。
でも、自国民を正規と非正規雇用にわけて、後者を使い捨てに
している日本も、あまり他国のことは笑えない。


人の振り見て我が振り直せだ。
移民を入れる前に、最低限、労働市場の流動化と同一労働同一賃金くらいは
実現しておくべきだろう。