Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

東南角部屋二階の女

2009-05-08 11:03:26 | ãã®ä»–
テレビにありがちな浮世離れした職場も、生活感の無いだだっぴろいマンションも
出てこない。現代日本の“普通”を描いた作品だ。

メインとなる登場人物は3名。若手のサラリーマンとその先輩、そしてひょんなことから
知り合いとなった女性一人。彼らはそれぞれ、違った現実に直面し、様々な閉塞感を
抱いて生きている。
ふとしたきっかけで、3人は取り壊し寸前のボロアパートで共同生活を送ることになる。
さあ、3人とアパートの運命やいかに、というのが大まかなストーリーだ。

ここまでなら、テレビドラマでもありそうな話ではある。
ただ、3人の閉塞感と言うのが、実に実に等身大かつタイムリーなのだ。
会社内に未来が見出せない若手社員、仕事と現実の板ばさみになる女性、
三十路に入り、個人の意思を超えた責務を前にして逡巡する青年。

これらのいづれにも覚えが無いよという人は、少数派なのではないか。
いや、昔は結構いそうな気もするが、レールが崩れてしまった今となっては
各自で進み方を考えないといけないわけだ。

そういう意味でも、それぞれの結論もあくまでも等身大に徹している。
ここでは直接触れないが、あえて一人だけあげるとすれば、加瀬亮演じる若手の出した結論
が一番好きだ。
はっきりとはイメージできないけれど、書きなぐっているうちに
綺麗な絵になるかもしれない。

そんな生き方である。

「恋人にしろ仕事にしろ、彼はすべてを失ったじゃないか、やっぱり何はさておき
辞めない事こそ肝心なのだ」
なんて言う人もいるかもしれない。
でも、本当にそれがクレバーな選択なのだとすれば
今の日本はもう少し明るい社会であるはずだ。


今ふと気づいたのだが、もう一つの軸として、ボロアパートとそこに関係のある老人たち
という存在があるように思う。
彼らは昭和そのものではあるが、けして昭和的価値観に染まって生きてきたわけではない。
劇中、主人公(西島秀俊、加瀬亮)以外にも、組織で昭和的に生きる人が何人か登場するが
彼らはみな追い詰められたギリギリの雰囲気を漂わせている。
その点、老人や畳屋のオヤジといったアウトサイダーたちは、対照的なまでに朗らかだ。
今を生きようとする若者にとって、とても示唆に富む作品だろう。

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