Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

新左翼とロスジェネ

2009-05-16 09:38:14 | æ›¸è©•
新左翼とロスジェネ (集英社新書 488C)鈴木 英生集英社このアイテムの詳細を見る


若手記者の手による新左翼とロスジェネ運動の解説。
全共闘や安保闘争など、新左翼運動の歴史が8割を占める。
それは一言でいえば、迷走と凋落の歴史だ。
戦後民主主義という枠組も、現状維持を望む中産階級も、そして革命を忘れた既存左翼も
否定した彼らは、いろいろなスローガンや地場の運動と結びついて拡散していく。

三里塚に篭るグループがいる一方で、三菱重工を爆破したり、テルアビブ空港で機関銃乱射
したりするグループも出現。そのどれもが、今となってはひどく虚しい。
いや、冷戦真っ只中では何がしかの意味があったのかもしれないが、今となっては
もう歴史である。

さて、こういう思想的な流れとロスジェネにいかなるつながりがあるのだろうか。
著者が提示するキーワードは“自分探し”だ。
家族やムラと言った共同体が崩れる中、居場所の無い個人を受け入れ、目的を与えて
くれる場所。それが新左翼であり、反貧困などのロスジェネ運動だとする。

確かにそれはある。正社員だとなんのかんのいっても職場という名のコミュニティに
強制加入させられ、飲みニュケーションとか言って酒飲まされるわ盆暮れ正月の付き合いは
あるわで、今でも共同体は存在する。
だが非正規雇用労働者は、通常そういった共同体には入れない。
そういうワーカーに属し、実家という溜めもない人間にとって、フリーター系の労組は
一種のヤドリギだ。

読みやすく、良く構成も練っている。
惜しい点は、そういう疎外論的な類似性だけでなく、直接的なつながりにも切り込んで
欲しかったことか。
フリーター系の労組や非正規雇用問題を扱う団体は、たいていどこかしらの政治団体が
バックについている。そして共産党系と新左翼系は、今でもあまり仲がよろしくない。
たとえば、共産系はいわゆる普通の組合的な主張をするが、新左翼系の中には
日本型雇用自体に否定的な組織も少なくない。
(昨年、『世界』で日本型雇用を見直せと提言したグループがこれだと思われる)
もし続編が出るのなら、彼らの方向性や理論について、掘り下げた論を期待したい。

それにしても。
居場所を求めて連帯するのは悪い話ではないが、果たして、従来のままの“左翼”
というフィールドに、それを求めることは正しいのだろうか?
以前、面識のあったフリーター青年の一人に数年ぶりに再会した時のこと。
「最終的に、大企業は解体されるべきだと思います」
と言われて目が点になったことをおぼえている。

以前はごく普通のフリーターの兄ちゃんだったのだが、どこかのユニオンに入って活動
するうちに、革命的気概に満ちた革命戦士に育成されてしまったらしい。
いくら目的を見つけられたといっても、
果たしてこれは、本人にとっていいことなんだろうか?

20年くらい経ってから、今の幼稚園児くらいの世代に「虚しいよね」と言われそうな
気がするのだが。