「ふざけているのか…カタカナ英語乱用の県を批判 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)」という面白い記事を読んだ。確かに「視察」をわざわざ「エクスカーション (excursion の音訳?) と呼ぶのはひどいと思う。でもこの記事に対するはてなブックマークなどの反応を見て少し違和感を覚えた。「シェイクアウト石川」という呼び名は皆さんが思っているほどにはバカバカしくないよ。shake は「地震」、out は「脱出する」という意味だってことがわかれば「シェイクアウト石川」は腑に落ちるでしょ?
「県はカタカナ英語を使いすぎ」――5日の石川県議会一般質問で、新谷博範議員(改新)が苦言を呈し、県は改善を約束した。
新谷議員は2月定例会での「知事議案説明要旨」や、当初予算案などの「主要施策の概要」について、「カタカナ英語を乱用している」と指摘。「『エクスカーション』は『短期旅行』か『現地視察』で十分。『ハイレベルセッション』『デスティネーションキャンペーン』『シェイクアウト石川』などは、英語ではない」と述べた。
このうち「ハイレベルセッション ("high level session" の音訳?) 」について失笑していた人がいた。確かに日本語の「ハイレベル」は若干嫌味というか皮肉っぽい感じがある。でも英語の "high level" はそういう嫌味な感触はあまりないと思う。
たとえば中国と韓国の外務省の官僚同士が交渉しても埒があかないので外相に準ずる地位の人たちが会談する場面を想起されたい。そういうとき "high level" と言うわけだ。このへんは英語の国際ニュースをよく聞いたり読んだりしている人たちには常識だと思う。
それから「シェイクアウト石川」。"shakeout" という名詞は小学館のプログレッシブ英和中辞典によると、
(企業・製品の)淘汰(とうた);(組織の)合理化,大整理.
暴落;(景気の)落ち込み.
そして "shake out" という句動詞は、
(自)〈物事が〉(ある状態に)落ち着く,収まる.
━━(他)
(1)〈ちりなどを〉振って出す[落とす].
(2)…を振り広げる.
(3)〈服などを〉振ってごみ[ちり]を落とす.
(4)〈カヌーを〉揺すって中の水を出す.
これでは何のことやらわからない人が大半だろう。shake out Ishikawa? 石川県の合理化? 石川県を振って落とす?
実を言うとオイラも最初は意味が全くわからなかった。だけど shakeout がアメリカのカリフォルニア州で行われている地震に備えた避難訓練の呼び名であることを知って納得した。以下にWikipediaから引用しとく。
The Great Southern California ShakeOut is an annual earthquake preparedness drill in California.
【Great Southern California ShakeOut - Wikipedia, the free encyclopedia】
英語の小説をよく読んでいる人ならご存じだろう。英語には「震え」「揺れ」を表す語が驚くほど多い。本当に嫌になるほど多い。そしてそれらの大半が「1音節」または「母音1個と子音の組み合わせ」であり、古ドイツ語または北欧語由来である。
swing, rock, roll, shiver, tremble...
オイラが思いつくだけでもこんなにある。そして shake もそうだ。揺れる、揺れ。転じて地震を意味する。
out については言うまでもないだろう。「外に出る」「脱出する」の感覚がある副詞であり、 in の対意語だ。
つまり shakeout は「地震という危機から逃れる」という意味。プログレッシブ英和中辞典にこの語義が掲載されていないということは、この意味で shakeout という語が使われるようになったのは近年のことだと思われる。
実を言うと、shakeout の意味をこのように理解するのにオイラも5分ぐらい要した。 shake を使った英語表現なんて "shake hands" ぐらいしか思いつかなかったよ。ちょっと恥ずかしいですね、語学クラスタとして←え?w
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