have to と must の違いなんて検索してみれば誰でもわかると思う。私が興味あるのは「では、なぜそのような違いが生まれるか」という問題。
have には「持つ」とか「所有」なんて意味はない。根源的な意味は「存在」「ある」。下記例文はその意味をまったく失っていない。
(私は「完了形」「使役動詞」「仮定法」「過去時制」「過去形」などの不適切な用語は廃止したほうがいいと思っているのだけれど、ここでは便宜上使う)
have は be, live などと同じく状態を示す動詞(または助動詞)であり、相 (aspect) に着目した場合、「状態動詞」と呼ばれるらしい。have は be に負けないぐらい力強い動詞なので、完了や使役や受動の文章で好んで使われてきた。
(ただし、その文法が現在のものに決まるまでに紆余曲折があったことは英語史の本を読めばわかる)
上記例文#5の "You have to leave here." を理解するにはto不定詞の持つある種の力を知っておく必要がある。ある種の力というのは「客観性」。to不定詞に客観的な雰囲気を感じる理由を理解するのは難しくて、私自身もまだ整理できていないんだけど、かつてiKnow!の日記にこんなことを書いたことがある。
"TO PREVENT" or "PREVENTING"?
Why do the sentences all have "TO PREVENT" not "PREVENTING"? Why should you use full infinitive instead of gerund in those cases? Why does the full infinitive tend to appear in regulations, laws, standards, a kind of duty or like that?
【Why full infinitive? by ArtSalt - Journal - iKnow!】
Full infinitive sounds static, not active and often indicates solemn and general things. You should select not a full infinitive but a gerund when you want to send a kinda lively, clear and active image to the listener.
要約すると、こういうこと。
"You have to leave here." に「ここを離れないといけないという客観的な状況がある」という意味が感じられるのにはそういうわけがあると言ってよい。
「shallという助動詞は100年後には消滅しているかもしれない」で書いたように、must は古英語 motan という動詞の過去形であり、今日でも過去形としての性質が完全には失われてはいないはず。ゆえに「もってまわった表現」「まわりくどい表現」「婉曲な物言い」になりうる。must で語られる義務だとか必要性だとか必然性は客観的な正当性を持っているのではなく、あくまでも話者の判断にもとづくものにすぎない。
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